うちの猫が八歳になった

うちの猫A子が明日5月18日で八歳になる。といってもA子はとある河川敷の出身で、正確なお誕生日は分からない。残暑厳しい9月に保護され、その時点で獣医さんのお見立てでは推定生後4ヶ月。その後11月18日に保護主さんのお家から我々のお家に引っ越して来た。推定5月生まれで18日にうちにやって来たことから、お誕生日は5月18日ということに、こっちで決めた。すみませんねこっちの都合で。と言いつつお祝いさせてもろている次第だ。

A子を迎えた時のこと等を書く。

A子を保護していた方は、A子以外にも子猫から大人までたくさんの猫をご自宅で保護なさっていた。猫を迎えたいと言ってその方のお家にお邪魔した我々は、特にこういう猫がいいという具体的な希望は思い描いていなかったので、わぁたくさんおられますねーという感じで、順番に色々な子に会わせていただいていた。そんな中、保護主さんはA子とほか数名の猫を指して「この子達はないよね、ブスだもん^^」と爽やかにおっしゃった。保護主さんがブスに分類した猫数名を、我々は、え~!ブスじゃなくな~い?と思って、熱心に観察した。なるほど、どの子も確かに、ねこのきもちの表紙とか、モンプチのパッケージに印字されてそうなタイプの顔立ちではなかったので、保護主さんの言いたいことは何となく分かる気がした。でもどの子も可愛かったマジで。

その時A子は、一緒に保護されたらしい子猫の背中に乗って、うっとりと目をつむっていた。クッション扱いされた下の子猫は嫌がって必死で身をよじり、ポイッとA子を打ち捨てた。同じ体格の人が自分の背中で座り込んでたら、重たいのは当然だ、普通嫌だ。しかしその数秒後A子は、ポイッと捨てられた場所から落ち着き払った態度でスックと立ち上がった。クッション役にされた子が少し離れた場所で少しプリプリして、クッション役にされた不満を噛みしめているのが我々には見て取れた。しかしA子は落ち着き払った態度のまま再びその子に近づいていき、その背中をしっかりと確かめるように踏みしめてから、座り込んだ。もちろんまたすぐに振り落とされていた。
それを見てというわけでもないのだけど、我々はA子を迎えたいと申し出た。

その日はとりあえず会っただけで、後日引き渡しについて詳しい話をしましょうということを言い合って、お暇することになった。帰り際、だいぶ年を重ねているように見えるハチワレの子が保護主さんの足元に来てすりすりし始めた。保護主さんはその子を「ブーちゃん」と呼んでいて、聞けば「ブサイクばーさんの略でブーちゃん^^」とのことだった。
ブーちゃんは保護主さんの前で、例の、猫の最上の愛情表現のひとつの、デコを地面とか壁にゴンッとぶつけて、そこを起点に体をクネリクネリと色んな方向に曲げたり伸ばしたりするやつ、をやっていて、保護主さんがブサイクばーさんをはちゃめちゃに可愛がっているのが、短時間の訪問だけでもひしひしと伝わった。

後日、A子がうちにやって来た。土砂降りの雨の夜だったので、A子が入ったキャリーケースはビニール袋に覆われていた。先住猫が子猫の頃に使っていたケージに早速入ってもらった。完璧に四肢を折りたたんだキッチリした香箱座りで、全身をカチコチに強張らせているA子は、「香箱」とは言い得て妙だなぁとしみじみとこちらに思わせる、「リアル箱」だった。四角くて。眼だけランランとしていて、瞳孔が開ききっていて、でも焦点が合ってなくて、ワタシここイナイ何も見てイナイだからお前ラも私ヲ見てはイケナイ、と言っているようだった。

しばらくはケージを置いた部屋のドアを閉めて、時々様子をのぞきに行きながら過ごした。ケージに入れていたライオンのぬいぐるみとか、ススキを模した猫用のオモチャがイジられた形跡があって、我々がいない間はパーフェクト箱モードを解除して少しは楽しくしているのかもしれないことがうかがえて、面白かった。

あれから今日まで色々あった。
家に来た最初の頃はノミやら色々がついていて、お風呂に入れたら、シャワーの温かさが気持ちよかったのか初めてゴロゴロを聞かせてくれた。かと思ったらその直後のドライヤーでマジですごい嫌われた。ドライヤーを嫌がって逃げた洗面台の隅で丸まっていた時、歯ブラシのコップと同じぐらいの大きさだった。今は歯ブラシのコップサイズのものは残さず床に叩き落すことを生業としている。よく成長した。
ちょっと尋常じゃないぐらい先住猫のことが好きだった。その先住猫が亡くなった時A子はまだ子猫で、その晩うちに来て初めて、夜中大きな声を出して鳴いて、火葬場に連れていく前の亡骸に近づいて、ドキッとしたように離れた。A子は先住猫がいた頃は、我々とは一切仲良くしていなかった。うちに来た時点で生後六ヶ月だったし、性格的にも完全な野良キャラで、もう人には慣れることはないだろうと言われた上で引き取っていた。先住猫とのお別れの後、少しずつ我々に近づき始めた。いつしか朝起きたら枕を奪われるようになった。そういえばこの枕奪りは今はやらなくなった。
片方の腎臓がもう片方に比べてとても小さいと言われ、大変だとなり検査を重ねたが機能には異常がなく、その上その数年後になぜか左右の腎臓のサイズが同じになっていたりして、ビックリしたり安心したりした。太っているか医師に聞いたら「ギリです」と言われてダイエットしたり、40度台の熱が出て、これじゃ絶対にご飯は食べられないだろうと医師が言ったその直後に缶詰を完食したり、歯を抜いて可哀想だったり、でも抜歯した箇所を気にしてそれまでやったことのなかった口の形を度々披露し始めて、可哀想なんだけど、けど、なぜかすごくこちらに顔を向けながらその新しい口の形を見せつけるようにやってくるもんだから、つい笑っちゃうし、みたいな感じで、色々病気騒動もあった。
メロンパンを盗み食いして以来甘味に夢中になってしまった。猫は甘さを感じないと聞いていたので我々は首をひねっている。上等なクッキー缶の表面をすべて唾液で湿らせるという最悪な盗み食いの仕方をされた時は内心、××がっ!!と思った。

子供のころはフェネックに似ていたが、今は全体的にパンに似ている。得意のフックはパンパンチと呼ばれている。相変わらずどう見ても可愛いので、初対面時、まずブスとして紹介されたことは、我が家の爆笑エピソードとなっている。

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