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「ありがひとし」が「ぜんぶひらがな」になったワケ


自分のペンネームを考える

 高校時代、イラストのアルバイトをしてた事は様々な場所で度々お話していますが、高校を卒業する前には家庭の事情で苗字が変わることが確定してたのもあり本名ではなくペンネームを作ってそれで仕事をしていくことにしました。
 人から「ありがとう」と言われても恥ずかしくない仕事をしていきたい、と思い「有賀等」としたこと、「等」はベラボーマン主人公「中村等」からいただいたことはベラボーマンのnoteにも書いています。

漢字カタカナにする

 最初の頃は「有賀等」で仕事をさせてもらっており、初期の仕事はそれでクレジットされています。ですが、印刷物やゲームのスタッフロールで見ると画数的にも漢字のカタマリが重たいと思い考えた末に「等」を「ヒトシ」に開きました。読みは変わらないので良いか、と。
 「ヒトシ」はシンプルになりつつも直線が多くカクカクしてるのがかっこよくてスマートな感じで、苗字2文字で名前3文字という5文字バランスもいい感じだったのでその後しばらく「有賀」+「ヒトシ」で仕事をしました。初期代表作もだいたいこの頃のペンネームで発表したものが多く、私のことを漢字カタカナで認知してくれてる方々はそのころの私の仕事をよく知っている人だと思います。

ジンクス

 そんなこんなで仕事をしてたのですが、どうも漢字カタカナ名義で仕事していると、雑誌が廃刊(休刊)したり、レーベルやブランドが無くなったり、更に酷い時は仕事先の会社も無くなったりするケースが多かったのです(全てではないのですが、かなり多い)
 …関わって一緒に仕事してくれた方々に申し訳ない気もするんですが、ざっと挙げると

・メサイヤ(2000年にゲーム業界撤退)※その後(株)エクストリームが版権管理
・クインテット(長らく沈黙、2012年頃に倒産という情報)
・コミックボンボン(2007年休刊)
・コミックゲーメスト(1997年休刊)
・マガジンZ(2009年休刊)

 …が、漢字カタカナ名義で仕事したあとに無くなった雑誌、会社です。
 しかも実は他にもまだあって、これが全てではありません。

 こんな事は全て偶然でたまたまそういう巡り合わせだったのかもしれないとも思うのですが、なんとも言えない無力感というか、どうして…って思ってしまうのです。

 勿論、漢字カタカナで仕事したあとも健在な雑誌、会社は普通にあります。
 が、比率で考えるとあまりにも…怖くなります。

全部ひらがな

 実はコミックボンボンで描くようになった初期の頃から「ありがひとし」も「漢字カタカナ」名も併用、気分で使い分けていました。
 自分の中で、漢字カタカナペンネームは「版権モノ」「企画モノ」「原作付き」、全部ひらがなペンネームは「オリジナル」「原作付きであってもオリジナル要素強め」みたいな感じで区分けしており、あまり厳密ではなくちょっと気分的な使い分けでした。

 そして思いかえせば全部ひらがなの仕事は良縁に恵まれていました。

「漢字カタカナ」に切り替えたら右腕が壊れた

 オリジナル仕事の比率を増やし「ありがひとし」名義にシフトしてた中、ロックマンに関しては読者の方に見つけてもらう為にも雑誌掲載時に合わせて「漢字カタカナ」名にしていました。

 ですが…復刊しても念願の追加エピソード描きおろし前にレーベル(ブロスコミックス)がなくなりました。
 更にその後、もう一度出版社がウェッジホールディングスさんに変わってブレナビKCとして復刊までこぎつけたのですが、追加エピソードを描いてる最中に右腕が壊れました。
 そんな中、なんとか鍼灸治療&テーピングしつつアシさんや友人たちの協力で最後まで描き上げたのですが、その後にブレナビKCのレーベルがなくなったことで絶版になりました…

読みはそのままで

 そんな感じでロックマン復刊がダメになったり他にも色々重なり困り果ててた時に、どうせならと占いで見てもらったところ
 「あなたの漢字カタカナのペンネームは運勢が良くないです。
読みはそのまま、漢字カタカナを全部ひらがなに変えれば開運できますよ」と言われました。
 本当かいな…と半信半疑だった部分と、読みがそのままなのはありがたいというのと実際にこれまでも全部ひらがなの仕事はいい感じだったし、占いが本当だったら…という期待で全ての仕事のペンネームを「ありがひとし」で統一することにしました。

2015年刊 復刊ドットコム「新装版ロックマンメガミックス」あとがきより

全部ひらがな統一後のはずなんですが

鉄板少女アカネ‼

 メガミックスあとがき漫画でちょっと書いてるドラマ化した連載というのはTBSドラマ「鉄板少女アカネ‼」(原作・青木健生 漫画・ありがひとし)なのですが、番組本編のスタッフロールと番組公式サイトでは「漢字カタカナ」名で記載されてたんですよね。

 私の昔の仕事を知ってる人が気を利かせて「漢字カタカナ」としたのか、或いはちょっと検索したらwikiに「漢字カタカナ」で項目が作られてたのでそれに合わせたのかは不明ですが、雑誌でも単行本でも「ありがひとし」として心機一転で描いていた仕事だったのでドラマ版アカネの原作者欄を見たときに
「これ(漢字カタカナ)って大丈夫かな…?」とか思いながら不安な目で見ていました。(時代的なものだと思いますが掲載前に連絡とかチェックは一切なし)

 そしたら番組は予定よりも早く打ち切りになりました。

 他にも「ありがひとし」で仕事してたものを「漢字カタカナ」名でネット紹介された企画がとん挫してしまったこともあり、そういうことは全て偶然なのかもしれないのですが…当事者としては本当に怖く、このnoteにしても漢字カタカナ名をあつかって大丈夫かな…とちょっと思いながら書いています。

THEビッグオー

 あと…「THEビッグオー」というサンライズさんのロボットアニメのコミカライズを過去にマガジンZ(講談社刊)という雑誌で連載しておりまして、自分の代表作のひとつです。(いずれnoteに書くと思います)

 マガジンZの廃刊(休刊)でマガジンZKCレーベルが消滅したので絶版状態なのですが、講談社の連載当時の担当さんから電子書籍化の連絡がきて、講談社との電子書籍出版の契約書の記名の際に担当さんに
「これまでこんな事があって、漢字カタカナ名義は縁起が悪いので著者名を「ありがひとし」に変更したい」と伝えたところ
「その頃に描いた漫画なのだからその頃の名義にすべきだと思うよ」と説得されました。
 実際、名前を変更するとなると表紙周りや本文内の対談ページなどデザイン面から修正しなければならない箇所が増えすぎるんですよね。個人的にはロックマンと同じで表紙と著者名だけの変更に留めて本文そのままで良いのですが…

 さておき電書化作業も完了し、あとは現在のアニメ版版元であるバンダイナムコフィルムワークスさんの承認でリリースできるという段階まできました。
 …きましたが、これが一向にバンナムさんから承認が下りない。…というか自分だけではなく講談社から販売されていたボンボン系、マガジンZ系のサンライズ版権漫画が全体的に承認おりてない?(一部がリリースされながら途中で中断されてるようです)

 2017年サンライズのビッグオーのイベントで「電子書籍でもショウタイム!」ってウチワが配られたりもしてたのに、なんで…???
 ちょうどこの頃には電子書籍の契約も済んでいたので、遂に発表かー、とのんきに思ってたんですが…

2017年サンライズフェスティバルで配られたうちわ 
徳間書店小説版ビッグオーの電子書籍はリリース済
(画像引用元 : https://twitter.com/KOMA_RYU_/status/903963445262823424)

 因みに現在もまだTHEビッグオーは電書版がリリースされておりません。

 なんというか…やっぱり漢字カタカナ名義は縁起がよろしくないのでは…という思いが強くなってしまった一件でした。

そして現在

 今も「ありがひとし」名義で仕事を続け活動しておりますが、それまで「有賀」呼びが多かった中でポケモンという大きなタイトルとの巡り合いにも恵まれ「ありがひとし」名の露出が増えたことで「ありが」が板についてきたような、目に慣れるようになってきました。

 あんなに壊してしまった体調も現在はいい感じになり、漢字カタカナ時代に壊れた右腕も今はほとんど痛みません。(たまに疲れすぎると痺れてきますが、そんな時は休めばよい)
 むしろ、右腕を壊す以前はアナログ時代は原稿用紙に穴をあけ、液タブになってからもモニタ中央をペンで抉ってしまうくらい筆圧が強すぎたのですが、リハビリ後に無理ないように軽い筆圧に変わったことでむしろ伸びやかに描けるようになり絵を描く速度も速くなりました。

 右手の痺れでペンが持てなくなった時は軽く絶望もしたけど、今はちゃんとペンを持って描けるし悪いことだけじゃなかったです。

今まで描いてきた中で期間も巻数も最長になった「ようかいとりものちょう」

 振り返れば、全部ひらがなにしてから描いている「ようかいとりものちょう」は気が付いたら10周年、17巻まで続いています。(ようかいとりものちょうはいずれnoteでいろいろ書く予定)

 よくぞ飽きずに同じタイトルで10年も描き続けられてる…というのもありますが、これは大崎さんや編集さんの方針と自分の相性が良かったんでしょうね。こういう巡り合わせは本当に感謝です。

呼ばれかたについて

 私自身、石ノ森章太郎先生をついつい昔の名義の石森章太郎と書きたくなる時もありますし、名義が変わった漫画家や作家をあえて前の名義で呼んだり書きたくなる気持ちもすごく理解できます。
 ひらがな、漢字カタカナ、どちらでも仕事をしてきましたしそれら全て自分なので呼んでくれる時はどちらでもお好きな言いやすい(書きやすい)方で構いません。
 …ですが、ここまで書いてきた通り私自身は漢字カタカナはちょっと怖いと思ってるところもありまして、私の知らないところでの漢字カタカナ呼びは関知しないので良いのですが、自分に直接飛んでくるリプにはドキっとしてしまいます。何度もリプのやり取りをして付き合いが続く相手には「今はこの名前です」と伝えて改めてもらったりもします(すいません)

 それと自分の仕事に関わる方々がネットで私のことを調べるケースが多いのでそちらで調べて漢字カタカナで認知される方もおり、Twitterで
「現在ではもう使ってない名義なのでwikiとかニコニコ大百科とかpixiv辞典の項目名を漢字カタカナから全部ひらがなにしてほしい。ゲン担ぎでもある」
みたいにつぶやき、有志の方々に各項目の名義を改めていただいたこともありました…協力してくださった方々、その節は本当にありがとうございました。

 長々と書いてきましたが、「ありがひとしになったワケ」単なる思い込みやプラシーボもあるかもしれませんが、そんな感じです。今後も「ありがひとし」でよろしくお願いいたします。

おしまい。

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