ゼロ・ウェイスト ~わたしが捨てたゴミのその後って?~
目に見えなくなったら、無関心になる。
ゴミ箱にゴミを捨てて、回収車がゴミを収集してくれたら、
その後なんて考えないし、
自分が捨てたモノが何かなんて覚えていない。
ゼロ・ウェイストアカデミーの言葉です。
私たちが買うモノの99%は6ヶ月以内に捨てられています。
ゴミが出るのはしょうがない。
ゴミを出さない生活なんて無理だ。
はじめから諦めずに、一度ゴミについて考えてみませんか?
ゴミの発生ゼロを目指してリサイクル率が80%まで達している、世界から注目されている地域があるんです。
それは、四国の徳島県にある自然が豊かなある町。
徳島県 勝浦郡 上勝町(かみかつちょう)
先日、上勝町を訪ねてきました。
滞在を経て、私なりにゴミについて考え、調べました。
HOTEL WHY の滞在記やゼロ・ウェイスト、上勝町についてなど、少し長い文章になっています。
そのため、目次をつけています。
全文読んでもらえたら、もちろん嬉しいですが、、
気になったところだけ読むのもよし!
みなさんがゴミのその後に関心をもつ、きっかけにつながれば嬉しいです。
そもそも、ゼロ・ウェイストって何?
ゼロ・ウェイストとは、
ゴミをどう処理するかではなく、ゴミ自体を出さない社会のこと。
年間、世界で約21億24万トンのゴミが捨てられているそうです。
それらのほとんどは、焼却・埋め立てにより処理されています。
私たちが捨てたゴミはやがて、ゴミ山となり有害物質による健康被害や水質汚染を引き起こし
環境へ悪影響を及ぼしています。
「でも、リサイクルしてるし大丈夫!!」
そんなことは無いんです。
リサイクルにも多くのエネルギーがかかっていることを知っていましたか?
確かにリサイクルは資源を再利用することで、ゴミを削減することができます。
しかし、リサイクルは文字通り「再利用」
リサイクルすればするほど、素材の質は落ちていきます。
リサイクルしたからといって、再び同じ品質の資源・材料に戻るわけではありません。
リサイクル可能な製品をつくる際には、新たな資源を投入しており、有限の資源を消費しているのです。
リサイクルにもエネルギーや有限な資源を使っている。
覚えておきたいですね。
ゴミ問題、奥深いです、、、
では、どうすればいいのか?
まずは、
わたしたちが捨てたモノ、ゴミとしたモノ、ゴミのその後について関心を持つこと
が大切だと思います。
しかし、ゼロ・ウェイストへの取り組みは、ひとりでは出来ません。
いくら、私たちがゴミを無くすために行動しても
企業がゴミが発生してしまう商品やサービスを提供してては意味が無いですよね。
いくら、私たちがゴミを分別して処理をしていても
行政が制度を設けていなければ、せっかく分別したゴミもまとめて回収され、
焼却・埋め立て処理されるかもしれません。
ゼロ・ウェイストな社会を目指すためには
消費者であるわたしたち、企業、行政の協力が不可欠です。
世界からも注目を集めている、四国一ちいさな町の取り組み
では、上勝町は何がすごいのか?
徳島県勝浦郡上勝町
人口1,500人ほど、高齢化比率52.16%の四国で一番小さな町です。(2019年10月)
徳島中心部より車で約1時間、山沿いの1本道をドライブしていくと突如現れるのが
上勝町ゼロ・ウェイストセンター、通称ごみステーション。
空き家の廃材のガラス窓を使った壁がとっても素敵な建物です。
林業が盛んなこの地域では、伐採の際に出る枝などを地面を掘って野焼きを行っていたことから
元々、ゴミの廃棄処理方法としても野焼きが行われていたそう。
その後、ダイオキシンの問題も発生し、小型焼却炉も閉鎖。
高齢化が進んでいた上勝町では、新たな焼却炉を設置することも財政的に難しかったそうです。
上勝町民は今後のゴミの処理方法についてどうするべきか、問われました。
そんな時、ピンチはチャンス。
「ゴミ自体を出さないゼロ・ウェイストな社会を
目指しませんか?」
国際環境NGOグリンピースジャパンからの提案でした。
ゴミを出さないために分別を徹底して、ゴミを資源として回収する。
もちろん、反対する町民もいたそうです。
何度も説明を行い、2003年に国内初の「ゼロ・ウェイスト宣言」を発表します。
2020年までの目標として掲げられたこの宣言。
リサイクル率は80%を達成し、日本国内だけでなく海外からも注目を集めました。
しかし、残りの20%は未達成。
どうしても焼却・埋め立て処理をおこなわなければならないもの、がありました。
具体的には使い捨てカイロや紙おむつ、生理用品、ティッシュペーパー
製造段階で使い捨てを前提に作られているモノや、ティッシュなどの衛生的にリサイクルが難しいモノが課題の20%ととして残ったそうです。
しかし、最近、布ナプキンや布おむつの重要性も話題になっていますよね。
自分が出すゴミについて考える消費者も増えてきています。
そして、2020年12月に2030年に向けた「新ゼロ・ウェイスト宣言」が発表されたそうです。
上勝町には多くの研究者も訪れています。
私が訪れたときも研究者の方によって、使い捨てカイロを使った水質汚染の解決への研究が進められていると伺いました。
近い将来、上勝町のリサイクル率が100%になり、上勝町が先頭に立ち、ゼロ・ウェイストな町のモデルとなって
他の地域も続いていけたらいいですね。
(ゼロ・ウェイスト宣言の詳しい内容は上勝町のHPをご覧ください。)
ゼロ・ウェイストのモデルタウン 上勝町 分別数は〇〇!
では、実際に上勝町のゴミ収集の仕組みはどうなっているのか?
まず、大前提に上勝町にはゴミ収集車は走っていません。
そのため、町民はゼロ・ウェイストセンターに
自分の都合のいい時に生ゴミ以外のゴミを持ち込みます。
高齢で持ち込むことが困難と判断された世帯には
2ヶ月に一度、ゴミの回収支援が行われています。
1,45分別
ここでは、「ゴミを資源として回収すること」を目的に
13種類、45分別が行われています。
そして、ある程度量がたまったら、リサイクル業者が引き取りにきます。
ゴミを分別するためのコンテナには「出」と「入」の文字が。
これは、費用を使ってリサイクルする、処理費用(出)
買い取りにより、町にお金が入ってくる、買取費用(入)
ゴミの処理、買取りのコストを可視化したものです。
実際に2017年度の上勝町のゴミ処理費用は
全て焼却処理した場合と比べて、1,090万円も削減に!
ゴミの量 286トン
資源化80%、焼却・埋め立て20% 593万円
(金属や紙は有価で引き取ってもらえるため、213万円の売上金収入)
全て焼却・埋め立てした場合 1,470万円
さらに、コンテナには分別したモノがどこに行くのか?
何にリサイクルされるのか?
が表示されています。
たとえば、ペットボトルなどのプラスチック製のキャップは
処理費用として0.49円/1kgかかり
大分県で製鉄時の還元剤やプラスチック製品に生まれ変わります。
ちなみに、ペットボトルは広島県で繊維製品やシート製品に生まれ変わります。
ペットボトルってキャップとラベルを分別することを忘れがち。
それぞれ、違う場所で違うモノに生まれ変わる。
これを知ると、しっかり分別しないといけないなと実感します。
ゴミの行方や費用を可視化することで
分別する大切さや、ゴミを出さないための行動が、町の豊かさにつながることを実感することが出来ます。
「ゴミのその後に関心を持つ。」
まさにこの考えが体現されています。
2,ゴミがサスティナブルな商品に交換できる!?
さらに、目に見える還元システムとして「ちりつもポイントサービス」があります。
これは、焼却ゴミに混ぜて捨ててしまいがちな、紙資源の分別をより進めるためのサービス。
対象商品は8種類。
確かに、紙カップや雑紙は焼却ゴミとしてまとめてしまいそうです。
資源化に協力してくれる町民に「ちりつもポイント」を提供する。
たまったポイントはサスティナブルな商品と交換することができます。
商品は雑誌類をまとめるときに必要な紙ひもから、電球など電化製品までさまざま。
もちろん、電球は使用期間が長いLED電球。
抜け目ないな~と思いました。
分別した手間や成果がサスティナブルな商品として戻ってくる。
商品と交換できるポイントとして還元されるから、また分別を頑張る。楽しんで分別する。
このサイクル、とても良い循環ですよね。
3,生ゴミはゴミではありません。
さて、この45の分別のなかに1つ含まれていないモノがあります。
それは、生ゴミ。
先ほどもお話ししましたが、上勝町ではゴミ収集車は走っていません。
では、上勝町では生ゴミの廃棄はどうなっているのでしょうか?
上勝町では各家庭、飲食業者で生ゴミの堆肥化を行っています。
今、話題になっているコンポストですね。
(宿泊者が滞在中に出した、生ゴミは施設内のコンポストに入れます。)
上勝町では電動生ゴミ処理機の購入を町が補助しています。
町民は自己負担1万円で手に入れることができます。
飲食業者には業務用生ゴミ処理機を設置。
町が電気料金の一部を補助しています。
堆肥になった生ゴミはそのまま畑につかう。
生ゴミからの堆肥は栄養価も高く、強い野菜の栽培に貢献。
私も自宅でコンポストをしていますが、
コンポストってゴミの量も減るし、生ゴミの嫌な匂いからも解放されるし
本当にいいことづくしですよね!
4,ゴミ? いいえ、おもちゃです。
このブロック、ゴミとして捨ててしまうあるモノからできています。
何か分かりますか?
実は、洗剤のつめかえパック。
花王が行っているRecycreationというプロジェクト。
つめかえパックを回収し溶かして固めて、おもちゃのブロックに生まれ変わらせているそうです。
実際にほのかに洗剤の香りがしました。
ゴミとして捨てているつめかえパックが、カラフルでかわいいおもちゃのブロックになる。
さらに、こどもたちへのゴミへの教育にもつながる。
素敵なアップサイクルの例ですよね。
5,モノに新たなストーリーを生み出す場所
ゴミって定義がないですよね。
あなたが「いらない。」と判断した段階から
モノはゴミに変わります。
そんな、ゴミの中にはまだまだ使えるモノがたくさんあります。
「わたしはいらない。」
けれど、誰かにとっては必要なモノかもしれない。
ここには、不要だけどまだまだ使える、
モノに新たなストーリーを生み出す場所があるんです。
通称、くるくるショップ
名前だけでどんな場所か想像できますよね。
当時の小学生によって考えられたアイデアです。
町民は不要になったものを持ち込み、ノートに名前、重さや使用年数、モノとの思い出を記入する。
持ち帰りは町民以外のかたでも無料で持ち帰ることができます。
持ち帰った際は持ち込みと同じくノートに記入するだけ。
今日現在、どれだけのモノが持ち帰れたのか受付のところに数字で表されています。
数字で示すことで、モノの循環を可視化することができます。
流行が終わった服、こども服、いらなくなった食器など、、、
まだまだ使えるけど、自分にとっては不要なモノ。
モノは持ち主が不要と判断した瞬間に、モノとしての役目を終えます。
ゴミとして処分してしまうもの。
そのゴミに新しい持ち主のもとで、モノとしての役目を果たす場所を生み出す
そんな素敵な場所でした。
これぞ映え!? エコでユニークな施設
空き家のガラス窓を使用した窓。
しいたけ栽培の時につかうカゴを再利用した本棚。
空き瓶をつかったシャンデリア。
陶器の破片を埋め込んだ床。
気づきましたか?
これら全部ゴミです。
ゼロ・ウェイストセンターでは思わずカメラのシャッターを押してしまいたくなる
そんなユニークな施設のつくりがあふれています。
エコはアイデアで解決できることを改めて実感しました。
ゴミ問題をわたしごとで考える 体験型宿泊施設 HOTEL WHY
では、HOTEL WHYについて。
HOTEL WHYはゼロ・ウェイストセンターに隣接した宿泊施設。
宿泊者はチェックイン時に
上勝町のゼロ・ウェイストの取り組みついて知ることが出来る
スタディーツアー(15~20分)に無料で参加できます。
このスタディーツアーだけを受けることもできます(有料)。
わたしが滞在していたときも近隣のかたがこのツアーだけを受けにきていました。
徳島県民、サステイナブルについての関心が高い人が多いんだなと、うらやましく思いました。
客室は木のぬくもりを感じるメゾネットタイプのつくり。
大きな窓からは上勝町の自然を一望することができます。
客室のアメニティの石けんやウェルカムドリンクは必要な分だけ持ち帰るスタイル。
滞在中、一番の魅力は45の分別体験ができること。
わたしはこの滞在中に自分の出すゴミについて考える素敵な時間を過ごせました。
上勝町を存分に楽しんだ、
HOTEL WHY滞在記はこちら👇
上勝町に滞在してみて感じたこと
机の上にティッシュがある。
ゴミ箱にいれる。
ゴミ箱があふれる。
ゴミ捨て場に持って行く。
収集車が回収する。
燃やすか埋め立てて、ゴミを無かったことにする。
わたしたちは見える場所にゴミがあると
一刻も早く見えないところにゴミをうつしたくなる。
見える場所にゴミがあふれていると気になるのに
どうして、見えなくなると気にならないのでしょうか?
外の世界にはゴミがあふれかえっているのに。
ゴミの問題って目を伏せがちですよね。
生活しているとゴミは自然にでてしまう。
上勝町はゴミを資源と考え、ゴミと向き合いました。
上勝町がリサイクル率80%以上で成功したのは、
町民が協力し、みんなでゴミと向き合う覚悟を決めたからだと思います。
このごみステーション(ゴミ置き場)は、見渡すとゴミでできています。
これらのゴミを
ゴミと見なすか資源とみなすか。
その違いだけなのだなと思いました
モノのストーリーをゴミとして終わらせるんじゃなくて、
モノに新たなストーリーを吹き込む。
だから、ここにいると不思議とゴミから
人のぬくもりやストーリーを感じることができる。
今、あなたがゴミとしてゴミ箱に捨てたモノ。
本当にゴミですか?
そのゴミがどうなるのか?
ゴミのその後に関心を持つこと。
それが、ゼロ・ウェイストな社会をつくる
きっかけになります。
参照
・特定非営利活動法人ゼロ・ウェイストアカデミー HP
https://zwa.jp/about/
・ゼロ・ウェイストタウン上勝
https://zwtk.jp/
・花王 Recycreation
https://www.kao.com/jp/corporate/sustainability/topics/sustainability-20171207-001/
・FRAU OCEAN 海に願いを