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【小さな循環をつくる】自然栽培米農家『禾 / kokumono』/近藤亮一さん

アジア学院の2015年度長期ボランティアの近藤亮一さん。現在は家族で岡山県に暮らし、自然栽培米農家を営んでいらっしゃいます。そんな近藤さんに、アジア学院で長期ボランティアとして過ごした経験が現在にどう繋がっているのか、その想いを聞かせていただきました。(この記事は2020年に書かれました)

2015年度ボランティアの近藤亮一と申します。アジア学院で1年間を過ごしてから、同年度の日本人学生だった温子さんと一緒に広島の小さな農村に移住しました。在学中に出会った講師のスティーブン・リーパー氏に誘われて、広島でNPO法人ピースカルチャービレッジの立ち上げに参画するためでした。スティーブと彼の仲間たちと、古民家を改修して、小さな耕作放棄地を開墾して田畑を始めて、鶏も少しずつ飼い始めて…。たくさんの人が訪れて自然と農に触れることができるミニアジア学院のような場づくりをしました。2年間その立ち上げに関わり、退職し、温子さんと結婚し、岡山で自然栽培を営む農家さんの元で私はひとり研修を受け、2019年からそのままその地で独立・新規就農をし、今は農家をしています。

近藤亮一さん・温子さんご家族

「禾 / kokumono」という屋号で、農薬や肥料を使わずに、お米・大豆・小麦などの穀物を栽培しています。同年6月には子どもも生まれて、私と妻にとって新米農家に新米パパ・ママという慌ただしい1年がようやく終わり、2020年はもう少し落ち着いた年になるといいなと思っています。

アジア学院から広島に行くとき、私は生業としての農業ではなく、”農的な暮らし”に惹かれていました。共同体としてお互いを支え合いながら暮らすこと、田畑を耕して自給自足をすること、自然に沿った生活をして、薪で暖をとって木の家に暮らすこと...。どれもが理想的で、その暮らしを追い求めている時間は本当に豊かでした。その一方で、現実的にいまの日本ではお金も必要で、アルバイトを掛け持ちして日々の生活をやりくりすることには疑問がありました。百姓を目指しながらも、「自分だけがいいものを食べて、いい暮らしが出来ればそれでいいんだっけ?」そんな、疑問でした。「まずは自分でその暮らしを実現して、それを示していくんだ」と言えばもっともに聞こえるけれど。昔の暮らしに憧れながらも、今の豊かさは享受したいし、子どもたちが生きる未来も、より良くなってほしい。自分たちだけでなくその価値観の中で豊かさを享受するのではなく、より多くの人と共有したい。そんなワガママをどうしたら叶えられるかを考えたときに、自分たちが生きるこの社会の枠組みの中で、まずは生業として成り立たせることが重要なのではないかと考え、農家になることを決心しました。

田植え前の小さなお米の稲
穀物も農薬や肥料を使わずに栽培している

今は自分にできる限りで、農薬や肥料を使わずに穀物を育てること。それらを個人個人や小さなお店に届けて、弱い立場の人にしわ寄せがいくことの少ない、小さな循環のシステムをつくっていくことに気持ちを込めています。ここまで発展が進んだ社会では、貨幣を通じた社会システムの中でしか生きていけないけれど、その中でも、どんな循環の中にいるかはまだ選ぶことができます。そして、小さな循環の中にいることを選ぶ人が少しでも増えていけば、一人ひとりが生きやすく、命の豊かさをもっと感じられる世の中になっていくのではないでしょうか。今の日本で、一般的ではない農法をもって農業を生業とすることそのものが大きな挑戦ではあるけれど、その先にあるもっともっと大きな夢や理想を抱きながら日々を生きています。

米の収穫をする亮一さん

(2020年3月 文・写真/近藤亮一)

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