Poem)連詩です!…①〜⑪
このたび、Arimと、山梨詩人会こまつかんさんと連詩を繋げました。
俳諧の世界に連句があるように、連詩も、相手の詩作品と微妙に関連性を保ちながら、詩的イマジネーションの飛躍を楽しめる方法だと思います。どうぞご高覧下さい。
【連詩】
①
美しい記憶が蘇るような、
花一輪から流れだす物語がある…
今日の日はどこへ続いていくのか、
心に堆積されていく風景を、
地中深く岩石に眠れる宝石を
作るような
時間に変えていく。
ぼうぼうと吹く風や
横殴りの雨の音、
暗いうちに鳴き出す鳥の一声、
光呼ぶ微かな訪れ、
を重ねていく。(Arim)
②
時間の軸を引きのばし
まるをつくり
ため息を吹きかけると
まわるまわる
めぐる 時
濃淡が諧調する 花びら
ぼくは
遠い記憶に迷い込んだり
未来に目覚めたりしている (こまつ かん)
③
丸い輪っこに息を吹きかけるのは
子供の頃から得意だった
虹色の透明な球体を
誰もがこの世に生み出せる方法さ
きっと あなたも知っていて
猫が わかっていたとは
疑問だけれど
確かに生まれた虹のボールと
戯れていた
猫が哲学者だと言うことは
半分あっていて、
半分は未知数だが…
詩人も、半分は直感で
半分は風のような
未知数で生きている
猫のような
哲学的一日が
今日も半分傾いた (Arim)
④
朝
草の葉っぱを噛みに出て
振り向くと
障子の破れ穴が呼んでいた
閨から ここの主の足音がして
覗いて、視線を合せ、甘え聲
と
同時に今を始め…
ぼくの前世はタマという名の猫だった
(こまつかん)
⑤
足もとに咲く花の名前を知らない
野良猫の名前を知らない
道行く人の名前を知らないまま
今日も 通り過ぎていくのだが
でも 私の知らない場所で
たくさんの名前は呼吸をして
日を浴びて、雨に打たれている
真っ暗闇に光りだす新星を
知っている?
新しい夜空の星を見つけては、
第1発見者が名付け親になれるのだ
そうだけれど
空に煌めくどんな星にも
名前がついている
ひとつの名前が
あるということは
ここに生きたという証。
タマという猫が
ずっと座っていた日、
ほのぼのと
名前を呼ぶ人の胸を
温めていたと聞く ( Arim)
⑥
ひとは赤子に名をつけ
その名を繰り返し呼ぶ
嗚呼、
首が据わり 人見知りが過去に
ぼくも 人間のふところと
大地と風雨と晴れ間とのかかわりで
幾星霜 ひとになってきたのだろう が…
きみの後ろ姿にぼくと同じ波動をみたとき
新たなひとになってグルーミングを始めた
(こまつかん)
⑦
人になるのは
月日がいるね
誰かをたくさん傷つけて
自分も痛みを重ねて
涙が、そのうち池になる
地球の海のような塩辛い青い池
悲しいことがあると
明日は晴れるかな、と
舟を浮かべて
夢の中に進んでいく
波が静かな弧を描き
次の朝が始まるための
夜
(Arim)
⑧
あの波のあたりに浮かぶビジョンを
手繰り寄せたくて手繰り寄せてみた。
夜半過ぎから明晰な時間に埋もれる。
静寂な波がまだ名のない花を抱えて
紅い満月に語りかけようとするのを、
ぼくは離れた場所から見つめている。
小首を傾げて花一輪が微笑んでいる。
隠れていたが、ぼくは見つけられて、
花に相応しい名を考えて波に浮かす。
(こまつかん)
⑨
シンパシーというのは
宇宙の音色のように
心の深部に打ち寄せる
花の隠された孤独
に気づかぬふりをして
色香に惹かれる
どのいのちにも
真実の種が
眠っていて
その音を
聞いてみたくなるから
静寂に
名前をつけてくれる人に
鈴を鳴らすように
花が揺れる
(Arim)
⑩
閑静な花畑が風にそよいで
温かな波がうまれました それは
中空の球体から降る
ひとすじの音色と混じりあい…
そこへ 早熟な天童がふわりと降りてきて
花たちの奥深い場所の
流動するわずかな物質にふれながら
遊び呆けています ぼくも
その時空の世界にてのひらでそっとさわり…
(こまつ かん)
⑪
触れるとあるもの
と、
触れると消えてしまうもの
のあいだに
私たちは生きているのですね
生まれてきて、柔らかな人の胸に
抱かれました
本当は空気や音や光というものが
まっさきに私を包んだのですが
本当は本当は
眼差しという、もっと大きな優しい光に
私の体は受け止められたのですが
その遠い記憶に触れる夢を見ながら
時間という階段を遡ってみたくなるのです
今日咲きだす花を見つけては
(Arim)