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古民家の花
誰も住んでいない古民家が、町のなかには、時々ある。
草が生い茂り、手入れのされなくなった庭木の伸びっぱなしの枝葉に覆われている。
街路樹や道脇に花が咲き揃うのと同じように、その庭にも花が咲いている。
古い木の塀を越えて、コデマリの白い花がたわわに咲きだしている。
人気のない家で、植物は時を刻み春の暦を進めている。
家屋のなかの古びた時計は、静かな呼吸をしているのだろうなと思う。
誰もいない家に咲く花の写真は、だがなかなか撮れない。
時にも動と静があるとしたら、私たちの雑踏の眩しい日の下に簡単に写真に切り取ってしまってはいけないような気がしてくる。
時を刻む花たちの凛とした静寂な空気をそっと見守っているだけの、風景がある。