設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#001:参加資格を決める(名簿制度をやめる)
初回から少し日が経ちましたが、話を始めていきましょう。ちなみにこのコーナーは主に自治体関係者を読者と想定して書いています。もちろん、設計・建築を生業にする方々に読んでいただいてもありがたいです。お気づきの点があれば、ぜひコメントやメールでお知らせください(メールは、 mokamoto@arg-corp.jp まで。内々のご相談の場合、秘密は厳守します)。
さて、設計(者)プロポーザルを実施・公告する際に最初に決めたいのが参加の敷居をどうするかです。よくあるのが当該自治体の「一般競争入札有資格者名簿」に登録されている者のみの参加を認めるというものです。
いきなり結論ですが、まずこの条件をキッパリ・スッパリとやめましょう。端的に言って、既得権を保護しているだけですし、それ以上にイノベーションの阻害要因です。自治体側からすれば、新しい知見がもたらされる可能性を自ら摘んでいるようなものです。
実際、想像してみてください。いや、一度あなたが働く自治体の「一般競争入札有資格者名簿」に登録する手続きをご自身でしてみませんか。
弊社(アカデミック・リソース・ガイド株式会社(arg))でも、やむなくこの手続きをしていますが、1自治体について作業に数時間を要します。役員・社員各4名計8名の弊社の場合、1名が事務局的な業務を総括しているので、なんとかこなせているのが実情です。このような体制になったのは、創業後5、6年が過ぎ、一定のスタッフ数を確保できるようになった頃です。新進の設計事務所の場合、ごく少数の設計者・建築士で構成されている実情を考えれば、この手続きに手を割けるわけがありません。
いかがでしょう。おかしなことではないでしょうか。現行の名簿制度はまさに規制制度そのものです。地方自治体も含めて、イノベーション創出に取り組んでいる政策動向と相反する流れです。設計(者)プロポーザルから変化を生み出すのであれば、まずここを変えましょう。
ちなみに一般競争入札において名簿制度の法的根拠は、地方自治法施行令の第167条の5第1項(指名競争入札の場合は第167条の11第2項も参照)です。
この条文からは登録制度は十分条件に過ぎず、必要条件であることが読み取れます。ここまでの話に衝撃を受ける方もいれば、それはわかっているが、現実的に変えていくのは難しいと思う方もいるでしょう。わかります。担当者としては変化を起こしたくても、周囲の環境がそれを許さないのですよね。そこで次回以降では、変える意思はあるが変える環境がないという場合、どのような手を打てるかを探っていきましょう。