設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#003:実績をどう評価するか
前回から少し時間が経ってしまいましたが、続きます。今回から何回か、設計者に求める実績について考えます。はたして設計者の実績をどう評価するのがよいのでしょうか。
一般的に公共建築の設計(者)プロポーザルでは、参加資格要件の1つとしてこれまでの建築・設計実績を求めます。しかし、満たす実績の要求が高くなればなるほど、そのプロポーザルは排他的なものとなってしまいます。実際、日々プロポーザルをチェックしていると、こんな高度な実績要件を設けるなら、最初から指名でのプロポーザルにすべきと思うものもあります。
開かれたプロポーザルを実現するのであれば、求める要件は現実的なものであることが大事です。まず過去の実績について、その業務がどこまで終わっているかという判断があります。基本設計や実施設計が終わっていれば実績としてカウントするのか、施工が済み竣工した状態に至って初めて実績としてカウントするのかという点です。プロポーザルを開かれたものにリ・デザインするのであれば、一律に実績すべてが竣工済みであるとするのは好ましくありません。たとえば、3点の実績を求めるのであれば、1点は竣工済み、2点は竣工前でも可とするのが落とし所ではないでしょうか。
そして実績評価においてさらに重要なのが、設計や施工が完了した物件の延床面積を何平米まで求めるかです。図書館分野のプロポーザルを見ていると、延床面積が2000平米や3000平米の実績を求めることが多いと感じます。3000平米の図書館実績となると、実は相当ハイレベルな要求になります。公共図書館の場合、市クラスの自治体であれば3000平米の延床面積が望ましいとされてきた歴史があり、その影響で3000平米が基準化していると感じます。ですが、図書館で、かつ3000平米と設定した時点で大多数の設計者には縁遠いプロポーザルになってしまいます。そんな実績をもっている設計者や設計事務所はごく少数です。少なくとも過去10年程度で一級建築士になった設計者でこの条件を満たせる方は20名もいないでしょう。
公共建築の設計(者)プロポーザルを実施する自治体の担当者の方は、こういった現状をどれくらい把握し意識しているでしょうか。もし、いまプロポーザルの要項を書いている方がいれば、いったん手を止めてその条件を満たせる一級建築士が何名いるか、弾き出してみませんか。そんなことできないと思うかもしれません。ですが、ある程度はできます。実際に私はあるプロポーザルで設定した各種条件を満たす物件数を洗い出し、そこからそのプロポーザルに理論上は参加できる設計事務所数を弾き出したことがあります。
こうした試算を勧める理由は明確です。現実をみてほしいのです。
いたずらに実績要件を高めれば公募型のプロポーザルは絵に描いた餅になり、事実上指名プロポーザルに近づきます。開かれたプロポーザルをしたいのであれば、そんな事態は不本意ではないでしょうか。まずはその気づきを得るために、一度その条件を満たせる参加者数を理論値として出してみましょう。