ミナシゴノシゴトの仕事│③炎上と悪い炎上
▶炎上と悪い炎上
本題からは全力で反れるし、やや規模が広がるが、ネットの、商業における炎上には2種類あると思う。
解決できる炎上と、マイナスに働く炎上だ。
この境目は何か、クリエイターとして知っておく必要がある。
解決できる炎上は、事後も同じ業界で同じ名義で仕事が続けられる人のことを言う。むしろ商業ではここを『バズり』として狙っている人も多いかもしれない。
マイナスの炎上は、少なくても同じ名前で同じ業界では仕事が続けられなくなるケース。
もちろん、作品表現上の炎上など細分化すればキリがないし、ネットで炎上すること自体、何かを提供するクリエイターとして、また血の通った人間として、かなりのダメージがあるのは前提だ。
そういた意味で、ここでは「悪い炎上」と「炎上」とし、良い炎上は存在しないと考える。
ここではこの2つの大きな違いを主軸として、個人的に考えた末に出した、境目という意味での結論を述べる。
それは「責任を果たし、信頼を保つかどうか」にある。
▶対岸の火事を見て思うこと
責任は法人的な責任と、お客さんに対する責任で、どちらかというと後者のほうが大事だ。
やることはシンプルだしこれはどこの業界でも同じだが、原則「お客さまとの信頼を守り続けられるかどうか」に死活問題がある。
繰り返すが、これはホントに飲食店でもクリエイターでも全く同じだと思う。
大小でも失敗から信頼に繋がるのは同じで、素直で迅速な謝罪とその後の振舞いが大切な時もあれば、有終の美を飾り、ある種満足を誘って次のステップに進むなど、過去の連載作品やネットにもヒントはいくらでもある。
一番まずいのは、この信頼を損ねる振舞い。
それは単純にいい加減な謝罪をしたり、似たような失敗を繰り返すこと、またある種の忍耐ができず、愚痴や不満を平然と公で話すことだと強く感じる。
令和の今は事情が違うように見えるが、先にも伝えた通り、原理は同じで、仮に筆名を変えるなど、皮を変えても、人として変わらなければ似たようなことは必ず繰り返す。
何より普通のメンタルだったら持たないし、執筆する上で邪魔になる。
▶トラブルが起きた時の振舞い
話題を若干戻す。だからと言って、現場において「言いたいことを我慢しろ」が美徳だというわけでもない。
根気強く協議して答えを模索したほうが良い時もあれば、周囲の年長者によく相談して振舞いを決めるのも良い。
実際僕は後者のパターンが多い。何かあった時は周囲の知り合いの編集者や書き手はもちろん、奥さんにもめちゃくちゃ相談する。
忍耐が大事な時もあれば、電光石火で企画から離れたほうが良い時もあった。
どちらが大切というより、「それからどうするか」が大事で、僕は家庭や仕事も含めて、重大なY字路に立たされた時は、
「どちらを選んでも、『よかった!』と思えるようにする」と着地点まで決める。
なので後悔したことはないし、大体うまくいった。当然たくさんの人に迷惑をかけてきたと思うし、さらにその先の失敗もある。
けど僕が折れると大切な既存の作品の死に繋がる。
だから事態を最大限小さな段階で消火し、前向きに生きることと、作品を生み出し続けることが今ままで関わってくれてきた方への恩返しだと考え、心がけている。
大事なのは先回りして事故を防ぐことだ。
個人的に思うことの一つは、自分だけのことを考えたり、独断で決裁したりする人は大体空回りする。
僕の場合はそんなに頭が良くないので、独断で決裁しないようにしてきた。とにかく奥さんや周囲にめちゃくちゃ相談する。
ただ一生懸命やっていたらトラブルは必ず起きる。どちらかというと、売れない作品の時よりも、売れてからのほうがトラブルが起きる確率が跳ね上がる。
けれどどんな時でも答えは必ずある。そしてこういう問題に向き合うほど、体験として、人として成長できる。
証拠として僕は二作目以降のヒットに恵まれたし、これから先何があっても今の仕事を続けられる自信に繋がった。
クリエイターとしては人気商売なので、お客さんに不安な思いをさせないで、安心してもらうのが第一だ。
何より個人の人生として、その場をしっかり乗り切って、次のチャンスに向かえばいいと思う。
全力で話が反れたので、次回からじょじょに戻します。
つづく