さらっと西洋建築史9〜光を求め続けたゴシック建築〜
12世紀の中頃、パリを中心とするフランスでは、ゴシック様式の宗教施設、大聖堂が次々と建てられていきました。
それらはそれまでのロマネスク建築とは全く異なった、光に満ちた、軽やかな建築の様式でした。
建築物の大きな進化を遂げたゴシック建築、その構造、事例について見ていきます。
↓ロマネスク建築について↓
光の空間、骨組みについて
ゴシック建築の特徴は光に満ちた空間にあります。
光を多く取り込むために高窓を高く大きくし、壁を取り去ることによってそれを実現していきます。
そのためゴシックの大聖堂は鳥かごのような構造を持つことになります。
ゴシック建築の構造 イラスト:コンバンク
ゴシック建築では、尖頭アーチ、交差リブヴォールト、飛梁の三要素をロマネスクから選び取り、より多くの光を取り入れる建築という目的のために合理的に統合することで実現していきます。
建物に加わる力は全て線に伝えられ、この力の流れを線状要素として視覚的に造形していきます。また、線状要素以外の部分は開口部となり、ステンドグラスがはめられていき軽やかな建築を実現していきました。
ゴシック建築のお手本 アミアンのノートルダム大聖堂
アミアンのノートルダム大聖堂 写真:wikipedia
身廊の天井高さは42.5m、全長145mでフランスのゴシック建築としては最大のものになります。ロマネスク建築と比べると明らかに開口部が多く形成されているのが見受けられます。厚みを感じない壁の意匠、視覚的合理性を持つ線状要素、均整のとれた美しい姿が印象的です。
ステンドグラスによる光の建築 サントシャペル
サントシャペル 写真:wikipedia
サント・シャペル (Sainte chapelle)とは「聖なる礼拝堂」という意味で、パリ中心部、シテ島にあるゴシック建築の教会堂です。
堂全体を包み込むステンドグラスのスクリーンと極限にまで推し進められた線状化は、ゴシックが推し進めた光の空間の理想形であると考えられます。
天にそびえる尖塔 ミラノ大聖堂
フランスにて生まれたゴシック建築様式も13世紀期以降はヨーロッパ中に地域ごとの特性を持ちながら広まっていくことになります。
イタリアミラノでは世界最大級のゴシック建築が建てられました。それがミラノのドゥオーモです。全長158m、幅92m、高さ108mの威容を誇り、5世紀もの歳月をかけて多くの芸術家によって完成されました。
ミラノ大聖堂 写真:wikipedia
天高くそびえる135本の尖塔は圧巻の一言であり、全ての尖塔は異なる彫像で飾られています。
ミラノ大聖堂 写真:wikipedia
彫刻芸術もさることながら、圧倒的な数を誇る絵画も展示され、芸術の街を支えた、一大建築がミラノ大聖堂になります。