上下水道不要の家、戸建の太陽光パネル義務化、の話(コンワダさん35週目)
こんにちは、株式会社アーキロイドの津久井です。
先週はGWでお休みしました。今週も社内で話題になった事例(コンワダさん)からいくつかをご紹介します。バックナンバーはこちら。
事例1:東京都、新築一戸建てに太陽光発電パネルの設置義務化へ
―――東京都、戸建にも太陽光パネルの設置義務化
東京都は、戸建住宅を含む新建築物に太陽光パネル、ZEVの充電設備の設置を義務化する方針で検討しています。パブコメなどを経て改正案をまとめ、2022年中の成立を目指します。「一戸建てへの太陽パネル設置やZEVの充電設備を義務付ける条例」が成立すれば全国初の事例となるそうです。
―――設置義務は消費者ではなくハウスメーカーに(小規模)
住宅価格の値上がりへの懸念から、群馬県や京都府の同種条例では戸建を対象外とし、政府も見送っています。都の答申案によると、一戸建てを含む延床2000㎡未満の建物は、購入者ではなく大手住宅メーカーに設置義務を課す事になっていますが、設備費の上昇により住宅価格上昇の可能性は排除しきれません。
―――22年予算108億円、補助金注入
初期費用だけでなく維持費も必要になるため、やはり行政に拠る補助は不可欠です。都は22年度予算において、新築住宅への省エネ・断熱性能の整備や太陽光パネルの設置を進めるために108億円を計上しています。一般家庭の太陽光パネル設置費の1/3相当にあたる36万円を補助します。
―――補助金に頼らず屋根貸しという手も
初期は補助金によって普及を目指しますが、継続性を考慮すれば設置代を建物購入者ではなく発電事業者が負担する、いわゆる屋根貸しを活用することで補助に頼らない制度設計も提案しています。
―――この事例について
政府は「太陽光パネル設置は義務づけず市町村が促進区域を設定、ZEVの導入促進には言及なし」という姿勢に対し、東京都はどちらも義務化する方針です。
東京都は30年までに00年比で温室効果ガスの排出量を50%削減する「ハーフカーボン」の実現を掲げています。住宅・建設産業の需要の冷え込みにつながるという懸念はありますが、それでも排出量の1/4を占める家庭部門の引き締めは避けて通れないと考えているようです。世界的に脱炭素化や温室効果ガス削減に取り組むことは、官民公私の別なく求められています。初手から全国足並みをそろえて強気の改革と言うのは現実的に難しいので、都が実施面で先導し改革を推し進めることの価値は高いと考えられます。また、都内に向けて供給される太陽光パネルによる発電量は、送電線容量に対して飽和しているとも言われており、電気の地産地消と言う観点からも注目を集めているようです。
設計・施工の観点では、これまで経験の少ない業者も必ず取り組むことになるので、耐荷重や止水、施工性などを考慮した手法の標準化、普及が不可欠となりそうです。
事例2:WOTA 軽井沢オフグリッド住宅プロジェクト
―――水問題に取り組む会社の住宅プロジェクト
「水問題を構造からとらえ、解決に挑む。WOTA」です。WOTAは「小規模分散型水循環システム」を開発しており、その技術を用いたプロジェクトの一環として軽井沢の住宅で実証実験を行いました。
この建物の新築時に、WOTAのシステムを導入しました。検証されたのは大きく2点。
1点目は「日本の一般住宅における様々な室・量の生活排水を処理できる」ことです。今回の実験で、一般的な4人家族が日常的な水利用をした場合にその水を処理、循環可能かを検証しました。結果、上下水道のような大規模インフラに頼ることなく、各建物単位で排水の再生・循環利用可能だそうです。
2点目は「亜寒帯でのパフォーマンスが確認できた」ことです。地球人口の約69.5%は温帯から亜寒帯に居住しているので、冬の気温がマイナス10度程度になる軽井沢(亜寒帯)で実証実験を成功したことにも大きな意味があります。WOTAのシステムでは水中の汚れの分解に生物処理を用いますが、一般に水温が低くなると微生物の活性や濃度、処理効率の維持に不利になるため、これまでは温帯での実験にとどまっていました。今回の実験により亜寒帯でも良いパフォーマンスが示せたことは、世界の水問題解決への可能性を示せたことになります。
―――この事例について
かつて、国土を網のように駆け巡り、面的に展開した大規模インフラは、全国の国民の生活レベルを一気に引き上げました。しかし今後、少子高齢化が進み、限界集落、消滅可能性都市と呼ばれる場所が増えていきます。そうした場所では大規模インフラを維持管理するコストを賄えなくなりはじめています。インフラの維持管理の合理性というファクターでは人口を都市部に集中することで、管理コストを下げることが考えられます。「このあたりの水道は3年後には使えなくなるので街なかに引っ越してください」と言うことが、ありえない、と言い切れるでしょうか。
このWOTAのシステムや、以前取り上げた風力発電壁で建物ごとに独立して水道や電力を賄うことができれば、オフグリッド、大規模インフラから開放され、好きなところに好きなだけ住み続ける未来もありうるかもしれません。中央集権から自律分散という潮流は徐々に大きな渦になっています。最も大きなムーブメントは、世界的に金融という巨大インフラが変動していることでしょう。仮想通貨の流通以降、分散化が加速、通貨や銀行のあり方も徐々に変わりつつあります。金融は物理インフラではありませんが、その山の大きさは上下水道や電力に負けないほど大きなものです。「〇〇業界は100年に1度の大変革期」という言葉は今やアチラコチラで聞かれますが、物理インフラも100年に1度の大変革を遂げるでしょうか。
まとめ
先週の住宅業界回にひきつづき、今回も住宅関連回になりました。
環境絡みの事例が多いですが、それは筆者がそういうのばかりを拾っているのではなく、世の中がそういうニュースであふれているから。つまりそれだけ色んな人が環境について真正面から取り組んでいる証拠なのだと思っています。環境、とりわけオフグリッドはこれからの私達に広い選択肢を示してくれる期待があります。災害に対しても強みを発揮できるかもしれません。
最後に「スキ♡」をしてくださると励みになります。それでは皆さんよい週末を。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?