マネーフォワード×家の話、Unityが世界のデジタルツインをつくる話(コンワダさん32週目)
こんにちは、株式会社アーキロイドの津久井です。今週も社内で話題になった事例(コンワダさん)からいくつかを紹介します。バックナンバーはこちら。
ピックアップ事例:ツクルバとマネーフォワード「マネーフォワード 住まい」サービス提供開始
―――ツールの概要
ツクルバとマネーフォワードが協同で「マネーフォワード 住まい」をリリースしました。持ち家を資産として管理し、必要なときにスムーズに売却・住み替えができるように支援するサービスです。現在提供中のベータ版ではアパート・マンションのみで、戸建て住宅は未対応です。
名前や電話番号が不要、精度の高い査定がオンライン完結で受けられる、といった特徴があり、マンション情報からAIが部屋の相場価格を即座に提示します。写真などを登録してプロによる独自査定を受けるとより精度の高い価格が確認できます。また、査定額とローン情報を組み合わせて将来に渡っての売却シミュレーションが可能です。
―――背景:住み替えを前提に家を買う時代
ツクルバが提供する中古住宅流通プラットフォーム「カウカモ」では、持ち家の売却を依頼するユーザーの6割は、購入後5年以内の売却です。売却者の3割が20~40代で、若い世代でもマンションを売却します。家が一生に一度の買い物で、転勤・転職・離婚・相続などやむを得ない事情によって売却するという時代から、持ち家であってもライフスタイルの変化に合わせて住み替える、住み替えを前提に家を買うという価値観に移行しつつあります。
不動産は株などと違って流動性も低く、持ち家の価値を把握するためには、仲介業者へ問い合わせ、その都度訪問査定や売却の営業を受けるなど、価格を知りたいだけのニーズに対してユーザーの負担が大きいというペインがありました。このサービスによって、持ち家の資産価値を把握し続ける状態を作り、ユーザーが持ち家を資産として管理し、必要なときにスムーズな売却に繋げられるようになります。
―――この事例について
筆者の記憶が正しければ、コンワダさんでツクルバを取り上げるのは2度目です。23週目コンワダさんで、住宅を売る人と買う人をつなぐ従来の売買仲介ではなく、売るかもしれない人と買うかもしれない人、つまり売買意向のマッチングをするサービス「ウルカモ」を紹介しました。
ウルカモリリースの背景にも、住み替えを前提とする住宅に対する価値観の変化が挙げられていました。査定も本事例同様に、AIによる査定とプロによる内装査定を組み合わせる方法です。ウルカモのリリースが2/10で、マネーフォワード住まいのリリースが4/14であることをから、おそらく同時に進んでいたのでしょう。背景や仕組みは似ていますが、ウルカモがサービス名の通り「うるかも~」という気持ちで始めるのに対し、マネーフォワード住まいは「住宅取得時から常にその価格を把握できる状況をつくる」ということで、資産管理の観点からより広い層に届けようということのようです。資産の見える化を進めるマネーフォワード MEの利用者は、昨年4月の時点で1200万人を突破しています。1サービスでこれだけの利用者数ですので、現代日本人の資産・家計管理への興味の高さが伺えます。
日本では新築信仰や、欧米に比して耐用年数が少ないこと、中古住宅の極端な価値減少、減価償却のあり方など、中古市場に対するネガティブな要因は枚挙にいとまがありませんでした。ゆえになかなか中古住宅の活用は進んでいませんでした。しかしそれは過去の話で、現在は中古住宅は新築に対する妥協ではなく、フラットに検討される選択肢だと感じます。近年のリノベ流行やDIYブームもその現れだと言うこともできるでしょう。かつては核家族を前提とした画一的な住宅が供給されていましたが、1人世帯、2人世帯が世帯構成におけるマジョリティとなり核家族は崩壊しました。暮らし方の多様化、変化が速い現代では、中古市場の活況は目指すべき指針ではなく、必然の結果となりつつあります。「住宅取得時から常にその価格を把握できるツール」は、個人にとっては社会や暮らしの急速な変化に対応するために必須のツールになるかもしれません。(ナルカモ)
より正確な価値を測定するために、これから作られる家については、設計段階での正確な3Dモデルと諸データの作成、設計と施工の整合性を記録していくことが求められるようになるでしょう。既に国交省にかかわる中大規模建築についてはBIMでのプロジェクト遂行が義務付けられています。日本の大工仕事・現場仕事は優秀で、住宅レベルだと精密な設計図がなくても熟練の技術と勘所で収めてしまうこともできます。ゆえに詳細な図面を作らなかったなんてケースも耳にします。当社アーキロイドが提供するサービス「archiroid.com」は、誰もが住宅をWEB上で設計できます。一般ユーザーが考えた間取りを入力すると、構造材や構法が自動生成されVR閲覧できる他、数量表なども作成されます。これから日本に建つ家を正確に評価し、価値を保っていくことに貢献できると考えています。
その他の事例
「ゲームエンジンの巨人Unityは世界のすべてをデジタルツインで構築する」WIRED
―――この記事について
「この世界のデジタルツインを運営すること」を目標に掲げるUnityは、いまや物理環境のあらゆるものを(人間でさえも)デジタルツインで構築しています。物理環境では現実的に難しいシミュレーションの多くは、Unityのヴァーチャルな世界で実行可能で、機械学習、自動運転、機械設計、あらゆる分野あらゆる企業がこのUnityデジタルツインの恩恵を受けています。AI研究担当上級副社長のダニー・ラングは「われわれの目標はいつの日かUnity上でこの世界のデジタルツインを運営すること」「この世界をデジタルツインの世界を通して理解すること、それが究極の目標」だと述べています。
先週のコンワダさんで、都市のオープンデータについてさまざまな方面からその有用性や希望があるという話を取り上げましたが、筆者は今回この記事を読んで「デジタルツインを作っている人が一番デジタルツインを信じていて、一番デジタルツインを好いている」と感じて少し胸が熱くなりました。我々は間違いなく恩恵を受ける側にいるので、ユーザーとして、またいずれはもしかしたらアセットの提供者として、この世界のデジタルツイン運営に貢献していきたいと思います。
なお記事中では、Non Player Character(NPC)の話、デジタルツインは膨大なデータに支えられている、それはつまりとてつもない手間と労力の上に成り立っていること、監視とプライバシーの問題(ウイグル自治区問題)、空港まるごとデジタルツイン、実戦の代わりとなる軍事シミュレーション、など、多岐にわたる話題が取り上げられています。それらのトピックのいくつかは世論だけでなく社内からも、必ずしも称賛や賛同の声だけでないことにも触れています。本記事はすべて読むには有料の記事のため内容にまでは触れませんが、読み応えバッチリだったので興味のある方はぜひ。
まとめ
今回もお読みいただきありがとうございました。ゲーム回となった前回の余韻で、最後にまたもやゲームの話をしてしまいました。お時間の許す方はぜひ前回noteもご覧ください。
最後に「スキ♡」を押してくださると励みになります。それでは皆様よい週末を。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?