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言葉の海に溺れたい
ごきげんよう、あるすです。
去る4月23日のサン・ジョルディの日に、
奥様より本を頂きました。
それがこちら。
『消えたことば辞典』
●歴代の『三省堂国語辞典』から削除された
1,000項目を当時の紙面のまま拡大して収録。
●全項目に脚注を付し、「コギャル」「メーンエベント」
など15項目には時代背景を大活字で解説。
●巻末に版数別の削除項目2,000。
過去の国語辞典に載っていた、
けれども諸事情あり削除された見出し語を集めた本です。
「昔はこういう言葉が必要だったんだな」
「こんな言葉あったんだ」
「この言葉今でも使えるじゃん」
と感じる言葉も多く、めちゃくちゃ楽しめる本でした。
今回は収録されている1000語の中でも、
私が特に面白いと感じた語を紹介していきます。
1 使ってみたい悪口集
『教養悪口本』にも収録されかねない、
かつて存在した悪口たち。
1. 赤大根
②うわべだけが左翼的なもの。
芥川龍之介の随筆にあるらしい。
赤大根がかわいそう。
2. アメしょん
ちょっと用をたしてきただけの、
無益なアメリカ旅行。
「イギしょん」「フラしょん」もあるらしい。
無駄に攻撃力が高い。
3. 嫌持て(いやもて)
心ではきらわれながら、
うわべはよくもてなされること。
いそu、、いややめとこう。
4. かす
こごと。「─を食う」
どっちにしろ悪口なのやめて。
「うざいがき(有財餓鬼)」のパターンやめて。
5. 握り金玉
何もしないで手持ちぶさたでいること。
単語自体のパワーが良い。正直一番使いたい。
2 こんな言葉あるんだ集
本書で初めて知った、使ってみたくなる言葉たち。
1. 即実
事実に即すること。
「エビデンスベース」とか「ファクトフルネス」とか言わなくていいやん!
2. 二十五時
②(一日は二十四時間しかないので)永久にありえない理想的時間。
ゲオルギウがそういう名の作品を書いたらしい。
いい感じに衒学さが出ないので使ってみたい。
3. 羊の歩み
①(殺されに行くヒツジのように)力のない歩き方。
②死期が近づいていることのたとえ。
羊が伝来するより先にこの言葉が入ってきたらしい。んなことあるんか。
4. ビブリオマニヤ
熱心のあまり狂人のように書物を集める人。書狂。
ちょっとなりかけてるかも。
5. 藁婚式
結婚して二年めに祝う式。
ささやかでいいからやりたい。
こういうの調べたら大量にあった。
何かしら祝いの名目作れていいね。
6. エアシュート
書類をパイプの中に入れ、
圧縮空気の力で送る装置。
![](https://assets.st-note.com/img/1684677842256-kmwrRf4wV8.png)
見た目がSFチックでかっこいい。
今でも田舎のラブホテルでは現役だそうで、
好き者の皆さんはご存知かも。
役所なんかの現物が必要な場所とこれをつないでほしい。
3 時代の変化を感じる集
時代に合わず消えていった言葉たちだが、
今でも使えそうなものも…。
1. ながら族
テレビ・ラジオなどを見たり聞いたりしながら、ほかの仕事をする人たち。
今の時代こそ使われそうな言葉。
説明はないけど書内では「社用族」「団地族」「カミナリ族」「みゆき族」「アンノン族」「窓際族」「竹の子族」「ヒルズ族」「ネオヒルズ族」「タワマン族」「ぼっち族」「寝そべり族」といった族たちが例示されている。
2. 三S時代(さんえすじだい)
スピイド・スポオツ・スクリイン〔またはセックス〕の三つが社会的に一番優勢な時代。現代。
スクリインは映画のこと。
スピードだけレイヤーが揃っていない気もする。
「タイパ」が重視され、PC・スマホに時間を支配される今に必要そうな古き良き言葉。
3. 頑張りズム
一生懸命に努力する主義。
〔その性質の人は「頑張りスト」〕
4. ゆっくりズム
急がずゆっくりやる主義。
間の抜けた命名がいい。復活させたい。
5. 海仁草(かいにんそう)
黒むらさき色の海藻。茎はまるい。
回虫をくだすときに使う。
戦後6割を超えていた回虫卵を持つ人の割合は、
1974年頃には1%未満まで改善され、
それに伴なって項目も消えたらしい。
この語がなくていい時代に感謝。
4 辞書編集者さんありがとう集
普段は見えない編集者さんのこだわりがチラ見える言葉たち。
1. 言葉の海
①〔さまざまなことばをふくむ〕広い、ことばの世界。「─を行く」
②ことばをたくさん集めた本。辞書。
2. 言葉の林
ことばの海。
これらは辞書界隈の人しか使わなそうだけど、
『大言海』とか『大辞林』とか、いいセンスだよね。
「言葉の宇宙」とかありそうと思って調べたら、もちろんあった。
3. レクシコグラファー
辞書編集者。「─は弁明せず」
用例は辞書界のスーパースター、見坊豪紀氏の遺言らしい。かっこいい。
4. ワードハンティング
ことばさがし。ことば集め。用例採集。
第三版の用例は見坊豪紀氏に関わる「ワードハンティング二十年」、第四版の用例は「ワードハンティング五十年」という用例らしい。
編集者のエゴと言えなくもないけど、普段は裏方に徹して世間の最大公約数を書こうとする辞書編集者の誇りが垣間見えてめっちゃいい項目たち。
総括:言葉は面白い
今までも『国語辞典の遊び方』とか『新解さんの謎』とか辞書関連のおもしろ本は読んできましたが、本書もまた辞書を通読する奇人になりたくなる本でした。
本書に興味を持たれた方は、以下の記事も参考にしてください。長いけど面白いです。
また、文字媒体に抵抗があるけど音声コンテンツなら楽しめる、という方には「ゆる言語学ラジオ」がオススメです。私も大ファンです。
彼らは最近、『言語沼』という書籍も出しました。
私も良き沼にハマれるよう、
この三S時代に握り金玉に陥らないビブリオマニヤでありたいと思います。
二十五時を追い求める頑張りストにならず、ゆっくりズムで。
皆さんも言葉の海でワードハンティングを嗜んでみてはいかが?