栗の渋皮煮
下茹でした栗の鬼皮を剥き、
重曹を入れた水で3度茹でこぼす。
1回目の濃い赤色をした茹で汁は、染色用の鍋によけた。
これを使って後日、
白の毛糸を、美しい薄紅色に染めるのだ。
茹でた栗の渋皮から、綺麗に繊維を洗い落とし、
砂糖を加えてゆっくりと煮含める。
数日がかりでつくる栗の渋皮煮は、
来年一年かけて味わうための、大切な一品。
刻んだ栗を、たっぷりのシロップと焼き込んだパウンドケーキは、旦那様の大好物なのだ。
…美味しくできそう。
くつくつと音をたてる鍋を眺めながら、私はひとり、にんまりと笑う。
--『花かんむりの魔女』、果樹園のアンナの手記より