演劇「オイディプス王」を全員観に行け!!!!
お前らはパルテノン多摩で絶賛公演中の「オイディプス王」を観たか。
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なにーっ、観てない!?
バカモン!今すぐチケットとれ!!
というわけで、本日「オイディプス王」の初演を観てきた私がその素晴らしさ、語りたいと思います。
⚠️今回の記事は多分に公演のネタバレを含みます
まず最初の感想として一言。
すごく良かった。
難しかったけど舞台ならではの迫力があって、
刺激的だった。
私の一番好きなシーンは出生の真実を知って絶望したオイディプス王が自身の目を刺して血まみれになって出てくるところ。
ショッキングで悲しくて、すごく好きだと思った。
彼はそのあとはずっと血まみれのまま演技を続けるんだが、観るも無惨な姿に胸がえぐられるようだった。
ほんとうに悲しいシーンだ。
ただ、その悲しさが安っぽいメロドラマ的にはならないというか、どこか高潔で美しいのが印象に残っている。
演じられている三浦涼介さんの整った容姿もあいまってどこかになんともいえない興趣があった。
私の好きな小説『ドリアン・グレイの肖像』で
主人公のドリアンくんが自身のせいで起こった元恋人の自殺について「ギリシア悲劇のよう」と例える場面がある。
初めて読んだ時は「そんなわけあるかい」と思った。だが、今日ギリシア悲劇を実際に観てその意味がわかった気がした。
美しさとは悲しく、悲しさとは美しい。
極限まで高められた悲劇とは、むしろ美しいものなのだ。私はそう感じた。
最後の最後、群衆が消えて、一人舞台に残された
血まみれのオイディプス王がバッと手を広げた
途端に照明が消える演出にも痺れた。
突然の暗転。その緩急の付け方に気迫があって、観客の緊張感を巧みにコントロールしていたように思う。
全体的に言葉遣いも難しく舞台設定も非日常的なので、入り込めてない部分も多少はあった気がしていたのだが、舞台が終わってカーテンコールで役者のみなさんが出てきたところで急に「いい公演だった!!!」とマジで突然猛烈にビシバシ感じた。
なんというか、理屈じゃなく、あの瞬間に魂で感じた。
私はマジで人生でもトップクラスに本気で必死の拍手をしまくった。
会場のみなさんも同じ気持ちだったようで拍手をずっとしていて、そのせいなのか、役者のみなさんがもう一回出てきてくれた。
ふつう2回くらい出てくるものなのかもしれないが、なにぶん私は舞台らしい舞台を見るのが今回が初めてなので人のやり切った顔を2回見るのは、ちょっと面白かった。
ただ、そんな爽やかなカーテンコールではあったのだが、1回目のカーテンコールから去る時にオイディプス王が妻のイオカステの手をとって二人で去っていたのが、なんだか大変切なくて胸に迫るものがあった。
ここの場面を見た直後の私の乱心のメモが残っているので、ぜひ見てほしい。
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今回の演劇では、オイディプス王が自身の秘密を探っていく中で不安定になる場面でイオカステに縋るような場面が多かったように思う。
オイディプス王は彼女をすごく頼りにして心底から愛しているのだ。
そんな人が自身の母で、しかも、自身の出生と
父殺しを知ったせいで自殺してしまって、彼は
一体どんな気持ちだったのだろう。
最後のカーテンコールは役者さんとして出ているものなのか、その段階まで役を意識していたのかは私にはわからないが、彼がもしあの時もまだ「オイディプス王」だったのなら、どんな気持ちで妻の手をとっていたのだろう。
私はそれを思うと涙が出てくる。
生まれた時点で逃れられなかった運命に翻弄されながらも、彼は確かに妻を愛していたのだ。
まだ秘密を知る前のオイディプス王が妻の手にキスをする場面ばかりが思い出されて、それが私には悲しくてならない。
(そして、先ほど述べたようにこの悲しさもまた美しいのだ!)
そんなこんなで私が半泣きで爆裂拍手をしたところで公演は終わった。
そのあとのアフタートークも良かった。
みんな役のイメージと大違いでふわふわしてて可愛かったし、舞台が終わっていきなり放り出されるのもそれはそれで非現実的な風情があるけど、アフタートークあると現実世界に軟着陸できる感じがあって、良い。
なによりさっきまで首吊って死んだって言われてた人と同じ衣装に同じ顔に同じ声の人がニコニコ喋ってるのは普通に絵面として面白い。
いろいろと楽しい話や真面目な話がありつつ、アフタートークも和やかに終わり、そうして今度こそ本当に舞台「オイディプス王」は終演を迎えたのだった。
♢♢♢
舞台を観終えたあと、私は近くの本屋さんに寄って「オイディプス王」の原作を買った。
そのくらい良かった。
もちろん古典すぎるほど古典なので、個人的にいくらか退屈だったり、ほぼ会話だけで話が進んだりするのもしんどくはあって文句のつけようがないような作品ではなかったのだが、だが、だが、とにかく良かった。
私の今の気持ちを正直にいうなら「退屈だったけど良かった」である。
マジで謎だ。でも本当にそう思ってるんだから仕方ない。
紀元前の大昔に書かれた作品が今もこうして上演されてたくさんの人に読まれ、演じられ、観られ、愛されているのは、そういう瑕疵がありつつもそれ以上に人間を惹きつける魅力があるからなのだろう。
私はソフォクレスにも、この公演に関わった全ての人にも感謝したい。
素晴らしいものを見せてくれてありがとう。
すっごく良かった。
なんとなんと最高演劇ことオイディプス王、この三連休にもどうもまだまだ公演はするし三月には大阪でも上演されるらしい!!のでみなさんもぜひ観に行ってほしい。
今すぐチケット買え!(ネットで買える)
パルテノン多摩に走れ!(京王線で行ける)
まだ間に合う。見届けろ。
オイディプス王の悲劇的な命運と、その顛末を。
本当に、本当に、本当に、それは素晴らしい。
追記 : 良すぎて久々に絵まで描いた。
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