エキゾチックショートヘアみたいな顔してからに
からに、ってどういう意味だろね。本当に。
ちまたで起こるコロナの第何次かすらわからん流行のさなか、我が家に猫熱がやってきた。
ネコ熱。不必要に英語にするとキャットフィーバー。(注1)キャットきっと飼いたい。きっとキャット飼いたい。今までに経験したことはないけど、何ならキャッツ(複数形)きっと飼いたいでも良いくらい。というわけで、猫が飼いたい気持ちに「いや、やめとけ」がずるずる引きづられてる。
キッカケはサンシャイン池崎さん(注2)である。
ある日、仕事から帰ってくると、池崎さんの保護猫の活動をテレビで見た家族が目を輝かせて待っていた。一匹のお気に入りの猫まで見つけだし、「猫と暮らしたいのだ」という。
私は、当初、「おやおや」と「わくわく」の間で反復横跳びしてるような状態で、ときめき100%ではなかったのだが、私以外の赤福さん、ふわさん、シロさんも俄然乗り気であった。(注3)
「もしかしてみんな、本気?」と私。
貴様のネコへの気持ちはそんなものか。
という視線を向けるシロさん(猫の本を読み漁る)
で、次の日には、お気に入りのエキゾチックショートヘアのオンラインでの面会が予定されることとなった。クリーム色と、きなこの色が混ざったような、我が家で言う「ふわ色」の猫だった。
説明しよう、ふわ色とはこのような色である。
保護猫さんもすこし検討したけれど、初めてで、どうやって出逢ったら良いのか、とくに他の家庭で過ごされたネコさんと、ネコ初心者の私たちはうまくやれるのかわからないこともあり、このオンライン面会が決まった一日目は、情報収集とオンライン面会の申し込みのみに留まった。
ネコ熱二日目。
夜にブリーダーさんとのオンライン面会があった。
ブリーダーさんはとても優しそうな猫好きのおばさんといった感じで、お尻をふくことの大切をくりかえし説いておられた。お尻の発音は、「Hey siri」と呼ぶときと同じイントネーションで、「oh-siri」と発音されておられるのが印象的であった。猫さんは、幸い、健康なようでホッとした。インターネットの情報によると、エキゾチックショートヘアはPKD 多発性嚢胞腎(たはつせいのうほうじん)という遺伝性の病気が心配らしいけれど、親猫さんたちの遺伝子検査自体もしているらしい。
我が家の発音(おしり)
ブリーダーさんの発音(ohsiri)
残念ながら、その週末はお仕事があり、8/11 に予約金を握りしめて向かうことになった。猫と暮らす原資として、これまでこつこつ貯めてきた「ハワイ貯金」に手をつけることに決めた。どんなに思い出深いとしてもハワイは一時、猫は一生である。背に腹は変えられない。
ちなみに週末の調査で近くに保護猫カフェもあり、月齢の小さなネコさんたちも何匹かいることもわかった。念のため、品種ごとのかかりやすい病気、近くの動物病院の評判を見て、アニコムやアイペットなどの保険のことも目を通す。窓口支払いの際に、保険証の提示で負担が減らせるものもあるみたいだ
エキゾチックショートヘアは、お鼻が低い品種で、流涙症なども心配らしい。そういえばブリーダーさんも、おしりのことだけでなく、顔についても、目やになども出やすいため、朝と夜など、こまめにふくと良いと言っていた。
8/8の月曜日のお昼。気になっていた保護猫カフェの猫さんはすでにトライアル状態に入っていることが判明した。残念である。が、しかし、わたしたちには、山の日に運命の出会いがあるのだ。横恋慕はもうやめよう。
ちなみにその月曜日は、30分の休憩時間が2回もある素敵なイベントに参加していたため、私は小一時間もひまであった。だもんで、「猫 スピリチュアル」で検索し、「飼い主が猫を選ぶのではない。猫が飼い主を選ぶのだ」的説明を「ふーん」と見やりつつ、猫さんとの暮らしに思いを馳せていた。こういうスピリチュアルな言説には大抵、潔いくらい根拠がない。でも、こういう思い込みにも存在理由はある。しかも、この場合、この思い込みはお金と交換可能だから作られるわけじゃなくて、必要だから作られる。たぶん、心の不安を取り除くまじないみたいなもんなのだ。
しかし、同日月曜日の夜、選ばれるつもりまんまんだった私たちにブリーダーさんから不意に連絡があった。LINEの通知欄のメッセージは「大変申」の文字で途切れている。大人のみなさんなら知っているだろう。この三文字を含むメッセージが良い報せであるはずがない。大抵、「大変申し訳ありません」か「大変申し上げにくいのですが」が待ち構えている。
そして案の定、勇気を出してメッセージを確認すると、他の方に予約された状態になったとの連絡であった。「ほら美代子、あれは猫身売買だ、豆腐を投げなさい。」(注4)ってな感じで、身請け、猫身売買とののしられ、豆腐を投げられるのを覚悟で一緒にいたかった私たち(石は無理です)は、軽い失恋のような状態であった。ずしーん。
「会うことのなかった猫さんとのテーマソング」
その後は、他の猫さんたちも見て、なんとか一緒に暮らしたいと思える猫さんはいないかインターネットで写真を見続けたが、やはりそう簡単には見つからなかった。
で、スマホを見るのにもつかれて「はーぁ」と思い、ふと顔をあげると、家族がきゃっきゃと騒いでいた。聞くと、「みんなの顔が猫に見える」という。改めて見ると、赤福さんも、シロさんもふわさんも、エキゾチックショートヘアみたいな顔に見えた。というか、「ホントだね」と言いつつ、みんな、猫みたいな顔をつくっていた。もちろん私も。
私たちもいつか猫に選ばれる日が来るんだろうか。思ったのだけど、もしかしたら、まじないみたいな言葉があるのは不安のためだけじゃなく、なぐさめのためでもあるのかもしれない。
全然関係ないけど、ユミの細胞たちシーズン1(注5)を見ました。おもしろかったです。それにしても、シーズン2があるとは!ぎゃふん。
注1
造語です。fever in catsは、猫の風邪かな?
注2
最近はNHKのラジオ第二放送で小学生の基礎英語も教えている池崎さんだが、保護猫活動についても発信されていて、2019年には保護猫との暮らしについて本まで出している。(空前絶後の保護猫ライフ 池崎の家編)
注3
私は4人家族なのだ。
注4
元ネタは「美代子、石を投げなさい」
『坑夫トッチルは電気をつけた』(荒川洋治 著 彼方社 1994)所収
この詩には「ぼくなら投げるな ぼくは俗のかたまりだからな」とある。でも投げる側は、本当に俗物だろうか。
注5
『トッケビ』のキム・ゴウンさんと、『梨泰院クラス』でボンボンの息子を熱演したアン・ボヒョンさんのドラマ。恋する2人の細胞たちの右往左往が、アニメで楽しめます。
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