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論文まとめ566回目 Nature 睡眠中の瞳孔サイズの変化が、新しい記憶と古い記憶の整理を分けて行っていることを発見!?など

科学・社会論文を雑多/大量に調査する為、定期的に、さっくり表面がわかる形で網羅的に配信します。今回もマニアックなNatureです。

さらっと眺めると、事業・研究のヒントにつながるかも。世界の先端はこんな研究してるのかと認識するだけでも、ついつい狭くなる視野を広げてくれます。


 一口コメント

Diversity and biogeography of the bacterial microbiome in glacier-fed streams
氷河由来河川における細菌マイクロバイオームの多様性と生物地理学
「世界の主要な山脈の氷河から流れ出る152の河川の細菌を調べた結果、各山脈に固有の細菌が存在し、その割合は62.2%にも及ぶことが分かりました。さらに、山脈間で共通して見られる細菌は全体のわずか0.42%しかありませんでした。この研究により、氷河河川の細菌は地理的に独自の進化を遂げてきたことが明らかになり、地球温暖化による氷河の消失は、これらの貴重な細菌の喪失にもつながる可能性があることが示唆されました。」

Formation of individual stripes in a mixed-dimensional cold-atom Fermi–Hubbard system
混合次元冷却原子フェルミ・ハバード系における個別ストライプの形成
「銅酸化物高温超伝導体では、電子が縞状に並ぶ「ストライプ秩序」という状態が超伝導と密接に関係していると考えられています。しかし、その形成過程は未だ謎に包まれています。本研究では、冷却原子を使って人工的に作った量子系で、ストライプが形成される様子を初めて直接観察することに成功。これは将来の高温超伝導のメカニズム解明に向けた重要な一歩となります。」

Dysregulation of mTOR signalling is a converging mechanism in lissencephaly
滑脳症におけるmTORシグナル伝達の制御異常は収束メカニズムである
「脳の表面にあるしわ(脳回)の形成不全を特徴とする「滑脳症」。この研究では、遺伝子の異なる2種類の滑脳症患者から作製したミニ脳(脳オルガノイド)を詳しく調べることで、どちらもmTORという細胞内のタンパク質合成を制御する仕組みの活性が低下していることを発見しました。さらに、mTORの活性を高める薬剤を投与すると、異常が改善されることも判明。これは滑脳症の治療法開発につながる重要な発見です。」

Upconverting microgauges reveal intraluminal force dynamics in vivo
生体内の管腔内力学をアップコンバージョンマイクロゲージで解明する
「私たちの体の中では、食べ物や血液を送り出すために様々な筋肉が動いています。でも、体の中でどれくらいの力が働いているのかを測るのは難しいものでした。この研究では、特殊な蛍光を発する微細なセンサーを開発し、それを線虫に食べさせることで、消化管の中で実際に働く力を測定することに成功しました。この技術により、加齢や病気による消化管の機能低下を詳しく調べられるようになることが期待されます。」

Sleep microstructure organizes memory replay
睡眠の微細構造が記憶の再生を制御する
「私たちが眠っているとき、瞳孔は収縮と拡大を繰り返しています。この研究では、マウスの実験で瞳孔が縮んでいるときと広がっているときで、脳が異なる種類の記憶を整理していることを発見しました。瞳孔が縮んでいるときは新しい記憶を、広がっているときは古い記憶を優先的に処理します。この仕組みによって、脳は睡眠中に新旧の記憶を混ぜることなく、効率的に整理できることが分かりました。」

Learning the fitness dynamics of pathogens from phylogenies
系統樹から病原体の適応度動態を学習する
「病原体の遺伝情報から作られる系統樹を使って、より感染力の強い新しい株の出現とその広がりを自動的に見つけ出す手法を開発しました。新型コロナやインフルエンザなど4つの病原体で検証したところ、既知の重要な変異株を高精度で検出できただけでなく、これまで見過ごされていた新しい株も発見。この手法を使えば、危険な新株の早期発見と対策に役立てることができます。」


 要約

 氷河由来の河川に生息する細菌の多様性と分布を世界規模で初めて解明した画期的研究

世界の主要な山脈における152の氷河由来河川の細菌群集を網羅的に調査した研究。メタバーコーディングとメタゲノム解析により、氷河河川特有の細菌マイクロバイオームの存在を明らかにし、その多様性と分布パターンを解明した。多くの細菌が山脈固有であり、地理的な隔離と環境選択が細菌の分布を決定する重要な要因であることを示した。

事前情報

  • 氷河河川は地球温暖化の影響を受けやすい生態系である

  • 氷河河川の生態系における微生物の役割は十分に理解されていない

  • これまでの研究は局所的なものに限られていた

行ったこと

  • 世界の主要な山脈から152の氷河河川のサンプルを収集

  • メタバーコーディングとメタゲノム解析を実施

  • 細菌の多様性と分布パターンを分析

  • 環境要因と細菌群集の関係を解析

検証方法

  • 16S rRNA遺伝子の解析による細菌の同定

  • 全ゲノムショットガンシーケンシング

  • 統計的手法による群集構造の解析

  • 環境データとの相関分析

分かったこと

  • 氷河河川の細菌は他の寒冷環境とは異なる独自の群集を形成

  • 全体の62.2%が山脈固有の細菌種で、コア種はわずか0.42%

  • 地理的な隔離と環境選択が細菌の分布を決定する主要因

  • 山脈間で機能的な冗長性が存在する

研究の面白く独創的なところ

  • 世界規模での氷河河川の細菌調査は初めて

  • 山脈固有の細菌が予想以上に多いことを発見

  • 微生物の生物地理学的パターンを詳細に解明

  • 機能的な冗長性と分類学的な多様性の関係を示した

この研究のアプリケーション

  • 氷河消失による生物多様性への影響評価

  • 微生物の進化と分散メカニズムの理解

  • 気候変動が微生物群集に与える影響の予測

  • 氷河河川の生態系保全への活用

著者と所属

  • Leïla Ezzat Ecole Polytechnique Fédérale de Lausanne

  • Hannes Peter - Ecole Polytechnique Fédérale de Lausanne

  • Tom J. Battin - Ecole Polytechnique Fédérale de Lausanne

詳しい解説

本研究は、世界の主要な山脈における氷河由来河川の細菌群集を包括的に調査した初めての研究です。調査の結果、氷河河川には独自の細菌群集が存在し、その多くが山脈固有であることが明らかになりました。特に重要な発見は、全体の62.2%もの細菌が特定の山脈にのみ存在する固有種であり、複数の山脈で共通して見られるコア種はわずか0.42%に過ぎないということです。
この分布パターンは、地理的な隔離と環境選択という2つの要因によって形成されていることが示されました。一方で、機能的な観点からは山脈間で類似性が高く、異なる分類群が同様の機能を果たしていることも判明しました。
この研究は、氷河河川の細菌が独自の進化を遂げてきたことを示すと同時に、気候変動による氷河の消失がこれらの固有な細菌群集の喪失につながる可能性を示唆しています。


 混合次元系の冷却原子を用いてストライプ状の電荷秩序の形成過程を初めて直接観察することに成功

混合次元系の冷却原子を用いて、ストライプ秩序形成の前駆状態を観察した研究。磁気的な相互作用により電荷が局所的にストライプ状に整列する様子を、実空間での相関関数測定により明らかにした。

事前情報

  • 銅酸化物高温超伝導体では、ストライプ秩序と超伝導の関係が重要な研究課題となっている

  • ニッケル酸化物でも最近同様の現象が発見され、次元性の制御が重要な役割を果たすことが示唆されている

  • 冷却原子系は量子シミュレータとして、このような現象を調べるのに適している

行ったこと

  • 光格子中の6Li原子を用いて混合次元フェルミ・ハバード模型を実現

  • 単一サイト分解能での実空間観測により、電荷・スピン相関を詳細に測定

  • ホール間の実効的な引力相互作用を導入し、ストライプ形成を促進

検証方法

  • 二点・三点相関関数を用いた電荷秩序の解析

  • スピン相関におけるドメインウォール形成の観測

  • ストライプ長の統計的解析と理論モデルとの比較

分かったこと

  • 電荷間に実効的な引力が働き、局所的なストライプ構造が形成される

  • スピン相関にドメインウォールの特徴が現れる

  • ドーピング量に依存してストライプの長さが変化する

研究の面白く独創的なところ

  • 混合次元性を導入することで、これまで観測が困難だった温度領域でストライプ形成を実現

  • 単一サイト分解能での実空間観測により、ストライプ形成の微視的な過程を直接観察

この研究のアプリケーション

  • 高温超伝導体におけるストライプ秩序の形成機構の理解

  • 新しい超伝導材料設計への指針の提供

  • 量子多体系における電荷秩序の普遍的な性質の解明

著者と所属

  • Dominik Bourgund Max-Planck量子光学研究所

  • Thomas Chalopin - Max-Planck量子光学研究所

  • Henning Schlömer - ミュンヘン大学理論物理学センター

詳しい解説

本研究は、冷却原子系を用いて高温超伝導体で見られるストライプ秩序の形成過程を研究したものです。特に、混合次元性という新しい概念を導入することで、これまで観測が困難だった温度領域でのストライプ形成を可能にしました。実験では、光格子中の6Li原子を用いて、y方向の運動を制限した混合次元フェルミ・ハバード模型を実現。単一サイト分解能での観測により、電荷とスピンの相関を詳細に調べました。その結果、電荷間に実効的な引力が働き、局所的なストライプ構造が形成されることを発見。また、スピン相関の測定から、ストライプに特徴的なドメインウォール構造の存在も確認されました。これらの結果は、高温超伝導体におけるストライプ秩序の形成機構を理解する上で重要な知見を提供します。


 mTORシグナル伝達の異常が滑脳症の共通メカニズムであることを解明

遺伝的原因の異なる2種類の滑脳症において、mTORシグナル伝達経路の活性低下が共通のメカニズムであることを発見。患者由来のiPS細胞から作製した脳オルガノイドを用いた解析により、この異常がニューロン分化の制御異常を引き起こすことを示した。さらに、mTOR活性化剤による治療効果も実証した。

事前情報

  • 滑脳症は脳の表面のしわ(脳回)が形成不全となる先天性疾患

  • てんかんや知的障害を伴う

  • 発症メカニズムは不明

  • 治療法は確立されていない

行ったこと

  • PIDD1遺伝子変異を持つ滑脳症患者とMiller-Dieker症候群患者からiPS細胞を樹立

  • 脳オルガノイドを作製して詳細な解析を実施

  • mTOR活性化剤の効果を検証

検証方法

  • 単一細胞RNA解析による遺伝子発現解析

  • プロテオミクス解析によるタンパク質発現解析

  • 免疫染色による細胞の種類や状態の観察

  • mTOR活性化剤による治療実験

分かったこと

  • 両タイプの滑脳症でmTORシグナル伝達の活性が低下

  • mTOR活性低下が神経前駆細胞の異常な分化を引き起こす

  • mTOR活性化剤NV-5138が異常を改善できる

  • mTORシグナル伝達の制御が脳の正常な発達に重要

研究の面白く独創的なところ

  • 遺伝的原因の異なる滑脳症に共通のメカニズムを発見

  • 患者由来の脳オルガノイドを用いた詳細な解析

  • 治療法開発につながる重要な知見を提供

  • mTOR経路の新しい役割の解明

この研究のアプリケーション

  • 滑脳症の治療薬開発

  • 脳の発達障害の治療法開発

  • 脳の発達メカニズムの理解

  • mTOR経路を標的とした治療戦略の開発

著者と所属

  • Ce Zhang Yale University

  • Dan Liang - Yale School of Medicine

  • A. Gulhan Ercan-Sencicek - Yale School of Medicine

  • その他多数の共著者 - Yale University、Acibadem University等

詳しい解説

本研究は、遺伝的原因の異なる2種類の滑脳症において、mTORシグナル伝達経路の活性低下が共通のメカニズムであることを明らかにした画期的な研究です。患者由来のiPS細胞から作製した脳オルガノイドを用いた詳細な解析により、mTOR活性の低下が神経前駆細胞の異常な分化を引き起こし、これが滑脳症の原因となることを示しました。さらに、mTOR活性化剤NV-5138による治療が有効であることも実証し、治療法開発への道を開きました。この発見は、滑脳症だけでなく、他の脳の発達障害の理解や治療法開発にも重要な示唆を与えるものです。


 微小な力センサーを生体内に入れることで、生きた線虫の消化管内の力学的な動きを可視化することに成功した

生体内の管腔構造における力学的な動きを測定するため、アップコンバージョンナノ粒子を埋め込んだポリスチレン製のマイクロセンサーを開発。線虫C.elegansに摂取させ、咽頭内の噛む力を測定することに成功した。

事前情報

  • 生体内の管腔構造における力学測定は、非侵襲的な手法が限られていた

  • アップコンバージョンナノ粒子は、低エネルギーの光を高エネルギーの光に変換できる

  • 線虫は透明で観察が容易な実験モデル生物である

行ったこと

  • アップコンバージョンナノ粒子をポリスチレン微小球に埋め込んだセンサーを作製

  • センサーの力学応答性を原子間力顕微鏡で較正

  • 線虫に摂取させて咽頭内での力学測定を実施

検証方法

  • 蛍光スペクトル測定による力学応答の定量化

  • 電気生理学的測定との同時計測による検証

  • 複数の個体での再現性確認

分かったこと

  • 開発したセンサーは線形的な力学応答を示す

  • 線虫の咽頭は約10μNの咬合力を発生する

  • この力は餌となる細菌を破壊するのに十分な大きさである

研究の面白く独創的なところ

  • 生体適合性のある力学センサーの開発に成功

  • 生きた動物の体内で非侵襲的に力学測定が可能

  • 筋肉の活動と力学応答を同時に測定できる

この研究のアプリケーション

  • 消化管疾患の診断・治療効果の評価

  • 加齢による消化管機能低下の研究

  • 薬剤の効果を力学的に評価する手法として

著者と所属

  • Jason R. Casar スタンフォード大学材料科学工学部

  • Claire A. McLellan - スタンフォード大学材料科学工学部

  • Jennifer A. Dionne - スタンフォード大学材料科学工学部

詳しい解説

本研究は、生体内の管腔構造における力学測定という課題に対して、革新的なアプローチを提示しています。アップコンバージョンナノ粒子という特殊な蛍光材料を利用することで、力を受けると蛍光特性が変化するセンサーの開発に成功しました。このセンサーは生体適合性が高く、モデル生物である線虫に安全に投与できます。実験では、線虫が餌を食べる際の咽頭の動きを詳細に測定し、約10μNという具体的な力の測定に成功しました。この技術は、様々な生体内での力学測定への応用が期待されます。


 睡眠中の瞳孔サイズの変化が、新しい記憶と古い記憶の整理を分けて行っていることを発見

睡眠中のノンレム睡眠時に、瞳孔サイズの変化によって異なる種類の記憶が処理されることを発見した研究。瞳孔が収縮している状態では新しい記憶の再生が、拡大している状態では以前の記憶の再生が優先されることを示した。

事前情報

  • 睡眠中に海馬で記憶の再活性化が起こることは知られていた

  • 新しい記憶と古い記憶が同時に再活性化されることも分かっていた

  • 異なる記憶がどのように干渉を避けて処理されるのかは不明だった

行ったこと

  • マウスの海馬の神経活動と瞳孔サイズを同時に計測

  • 睡眠中の瞳孔サイズと記憶再生の関係を分析

  • 瞳孔サイズに応じた記憶再生の阻害実験を実施

検証方法

  • 高密度電極による海馬神経活動の記録

  • リアルタイム瞳孔計測システムの開発

  • 光遺伝学による特定タイミングでの記憶再生の阻害

  • T字迷路と円形プラットフォームでの空間記憶課題

分かったこと

  • 瞳孔サイズの周期的な変動が睡眠の微細構造を反映している

  • 瞳孔収縮時は新しい記憶の再生が優位

  • 瞳孔拡大時は古い記憶の再生が優位

  • 瞳孔収縮時の記憶再生阻害は新しい記憶の定着を妨げる

研究の面白く独創的なところ

  • 睡眠中の瞳孔サイズという新しい指標で記憶処理を理解した

  • 異なる種類の記憶が時間的に分離して処理されることを発見

  • 記憶の干渉を防ぐ脳の巧妙な仕組みを解明

この研究のアプリケーション

  • 睡眠障害と記憶障害の関係の理解

  • より効果的な学習方法の開発

  • 記憶力改善のための介入方法の開発

著者と所属

  • Hongyu Chang コーネル大学神経生物学・行動学部

  • Wenbo Tang - コーネル大学神経生物学・行動学部

  • Antonio Fernandez-Ruiz - コーネル大学神経生物学・行動学部

詳しい解説

この研究は、睡眠中の記憶の整理・定着プロセスについて重要な発見をしました。マウスの実験により、ノンレム睡眠中の瞳孔サイズの変動が、異なる種類の記憶処理を制御していることが明らかになりました。瞳孔が収縮している状態では、その日に経験した新しい記憶の再生が優先され、拡大している状態では以前からある記憶の再生が優先されます。この時間的な分離により、脳は新旧の記憶を混ぜることなく効率的に処理できることが示されました。また、瞳孔収縮時の記憶再生を阻害すると新しい記憶の定着が妨げられることから、この仕組みが記憶の定着に重要であることも分かりました。


 病原体の系統樹から進化の適応度変化を自動的に検出・定量化する新手法を開発

病原体の系統樹データから適応度の変化を自動的に検出・定量化する手法「phylowave」を開発。新型コロナウイルス、インフルエンザH3N2、百日咳菌、結核菌の4種類の病原体で検証し、既知の重要な変異株を高精度で検出できることを実証。さらに、これまで見過ごされていた新しい株も発見した。

事前情報

  • 病原体の遺伝的多様性の変化は公衆衛生上重要

  • 従来の手法では新株の検出と適応度評価が困難

  • 特に、サンプル数の少ない病原体での評価が課題

行ったこと

  • 系統樹上の遺伝的距離を基にした指標を開発

  • 指標の時間変化から株を自動検出するアルゴリズムを構築

  • 4種類の病原体で手法の有効性を検証

  • 検出された株の適応度を定量的に評価

検証方法

  • シミュレーションによる手法の性能評価

  • 4種の病原体の実データへの適用

  • 既知の重要変異株との比較検証

  • サンプリングバイアスへの頑健性評価

分かったこと

  • 既知の重要変異株を高精度で検出可能

  • 新しい重要な変異株も発見

  • サンプル数が少なくても有効

  • 株の出現から平均2.2ヶ月で検出可能

研究の面白く独創的なところ

  • 系統樹のみから新株を自動検出できる

  • 適応度の定量的評価が可能

  • サンプル数に依存しない手法

  • 様々な病原体に適用可能

この研究のアプリケーション

  • 危険な新株の早期検出システム

  • ワクチン株の選定支援

  • 病原体の進化メカニズムの解明

  • 公衆衛生対策の最適化

著者と所属

  • Noémie Lefrancq ケンブリッジ大学遺伝学部

  • Julian Parkhill - ケンブリッジ大学獣医学部

  • Henrik Salje - ケンブリッジ大学遺伝学部

詳しい解説

本研究では、病原体の系統樹データから適応度の変化を自動的に検出・定量化する「phylowave」という新しい手法を開発しました。この手法は、系統樹上の遺伝的距離を基にした指標を用いて、より感染力の強い新しい株の出現とその広がりを自動的に検出します。新型コロナウイルス、インフルエンザH3N2、百日咳菌、結核菌の4種類の病原体で検証を行い、既知の重要な変異株を高精度で検出できることを実証しました。さらに、これまで見過ごされていた新しい株も発見することができました。
特筆すべき点は、この手法がサンプル数の多寡に依存せず、約2.2ヶ月という比較的早期に新株を検出できることです。また、検出された株の適応度を定量的に評価できることから、その株の重要性を客観的に判断することが可能です。
この研究の成果は、危険な新株の早期発見や効果的な公衆衛生対策の立案に直接的に貢献することが期待されます。さらに、病原体の進化メカニズムの理解にも新しい知見をもたらす可能性があります。


最後に
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