長野市「秋山食堂」something in 秋山食堂
店名 秋山食堂
場所 長野県長野市小柴見375
電話 026-228-8431
ジャンル 食堂
バリアフリー ◯
駐車場 あり
まだ若い頃のことだが、ほんの一時ではあるがジャズにハマっていたことがある。高校の友人がジョン・コルトレーンがよいよいと「至上の愛」や「アフリカ・ブラス」を貸してくれたり聴かせてくれたりしたので、すでにメタル小僧であった私も、いつまでも無茶はしてらんねぁな少し聴いてみるかと考えたのが発端である。
だからといって、現在と違ってサブスクやYouTubeなどあるわけもない。聴くとなれば買わなければならない。CD化された時代ではあったが、お金のない若僧にはこれがキツい。視聴という方法もあったが、すべては聴かせてもらえないし面倒でもある。メタルやハードロックならだいたい予測はつくからジャケ買いしてもほぼ間違う事はなかったが、ジャズはまるっきりなのだ。とっかかりなしに買う勇気はない。
となれば重要となるのは情報収集だ。
先輩から聞いたり雑誌を買い込んだり。スイングジャーナルなんて雑誌は定期購読とまではいかなかったが、3ヶ月に一度ほどのペースでチェックしていた。ウィントン、ブランフォードのマルサリス兄弟や、ミシェル・ペトルチアーニなんて名前を覚えたのはこの時だ。もっとも覚えただけでほとんど忘れてしまったが。
あの雑誌はインタビューがよかった。とにかくフレーズがかっこいい。ジャズミュージシャンはずいぶん知的なんだな、と思い込んでいたが、今にしてみればものすごく気取った訳文だっただけなのだがそんなことは当時は知るよしもない。
ある時のインタビューでこんな件があった。誰のかは忘れてしまったが、その中で
「ジョー・ザヴィヌルから誘われたんだ。君の力でバンドにsomethingを与えてほしいって。ただ、彼のいうsomethingとはイメージが違っていて断ってしまった」
おいおい。ジャコ・パストリアス脱退後とはいえ、ウェイン・ショーターも健在な時期のウェザー・リポート入りを断った?くーーッ!かっこいい!おれも誰かから
「君にsomethingを与えてほしい」
なんて誘われてみたいーーーーーーーッ!なんて思いながらただの一度も言われた事がない。求められなければ求めるしかないではないか。よしsomethingを求めに行こうではないか。そして長野でsomethingとなればまずはこちらであろう。
「秋山食堂」
古さをぶるしい外観、内部は火を近づければ発火するのではないかと思われるほどペタペタ油染みている。衛生的という概念からは程遠い有り様ではあるが伊達に長野のレジェンドとは言われていない。ここに来れば必ずsomethingと出会うことが出来る。そして平日のこの日もあった。あったのだ、somethingが。
なにが登場しても驚かない準備はあった。今まで伊達に「うな丼とラーメン」や「イカ煮その他」と出会ってはいない。だから少々のことがあっても問題はないし、動転することもないはずだが、今回は驚いた。
「イナダと甘エビ刺身定食」650円
いやはや、まさか刺身が出てくるとは思わなかった。それも秋山食堂らしくボリュームたっぷりだ。
イナダは分厚くころころと切り分けられている。脂たっぷりでひと口が食べ応え充分。甘エビは蒼い玉子をたくさん抱いている。そしてイカ。ねっとりとした舌ざわりと濃厚な味わいが素晴らしい。
…と、ごく普通にレポートしているがここは山国 長野の地。しかも海鮮を扱う店でもなんでもない食堂でのこと。これは驚いた。やはり秋山食堂には常にsomethingがある。これだから秋山食堂チェックはやめられない止まらない。