千曲市「蕎麦料理處 萱」老舗の力
店名 蕎麦料理處 萱
場所 長野県千曲市大字戸倉1855-1
電話 050-5890-2225
ジャンル そば店、カフェ
バリアフリー ◯
駐車場 あり
創業◯百年も続く老舗と言われると、伝統を頑固に守り続けるなどという事は、さぞや凄いこと、偉業だよなぁ。と単純にイメージしがちだが、じつは反対に、変わり身が早かったからこそ続けられることができた。という見方もできる。ひと口に◯百年といったところで、時代も人も変わる、次から次へと事件もおこる。そもそも自分の生まれた時代と50年後の現在とではずいぶんと様変わりしてしまっているではないか。
機を見るに敏、時にも知にも聡くうまく立ち回っていってこそ家名を残すことができる。造り酒屋から両替商へと転じた鴻池、日本史上初の定価販売を行い呉服屋から総合商社、百貨店に発展した三越をみよ。そう、名家・よい家柄はよほどの努力を積み重ねて出来上がるもの。昔からお金持ちだからなんとなくいればよい、というものではない。
子どものころ、こんな貧乏な印刷屋ではなく、もっとお金持ちの家にうまれたかった。と夢想した時期があったが、私など生来の落ちこぼれはよほどの家に生まれついたところで、うまい立ち回りなど出来るわけもなく、片隅で冷や飯食わされるか放擲されるのが関の山だ。やはり現在がちょうどよいところなのかもしれない。
「蕎麦料理處 萱」
国道18号線、戸倉駅にほど近い道沿いにある萱葺の由緒正しそうにみえる建物がある。こちらは坂井銘醸という酒造会社、慶長元年というから1596年、関ヶ原の戦いの少し前から続く造り酒屋だそうだ。現在も同所で経営されているが、道路側の建屋を改装して料理店、カフェ、イベントスペース、販売コーナーなどに使用されている。こちらにあるそばのスイーツが美味いと聞いてやってきた。
「萱のそばクレープセット」920円
折り畳まれたクレープは色味からして蕎麦粉を用いたものとわかる。かかっているのは特製の杏ソースとのことで、アプリコット特有のピシッとした酸味が美味い。干した杏が添えられているのもよし。杏好きにはたまらない味わいだが、さほどでもない者にとってはややキツめでもあるかもしれない。
そのために生クリームおよびバニラがよき中和役として鎮座する。なかなか考えられた構成であると思う。
築250年といわれるこの建物は、外観こそそのままだが内部は美しく使い勝手よく改装されている。うまく転身したというか、そこに老舗の力強さ、したたかさをみたような気がした。
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