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涙には屈しない

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 隣の部屋から
「やだー!!」
大泣きの声。
『おっと、始まった。今日は隣は誰が来てるんだっけ?』


 私たちセラピストは楽しいセッションを心掛けています。でもやっぱり「回避」されてしまうことも。「回避」とはいわゆる「逃げる」行為。椅子から立ち上がってどこかに行こうとしたり、急に歌を歌いだしたり、おしゃべりが止まらなくなったり、机に突っ伏してこちらの言うことをとことん無視しようとしたり、子どもによってやり方はそれぞれです。そして「泣く」ことも「回避」行動の1つ。

 理由の大抵は、休憩が終わってもセッションに戻りたくない、とか、まだ遊んでいたい、から。
 回避行動が出た時、そのまま「逃げ続けられる」状況を作るのが一番良くないことです。冷静にしずかにその回避行動には注目せず、子どもをセッションに戻します。おしゃべりや歌を歌いだしたならその行動は無視、立ち歩いたならしずかに椅子に戻す、泣いても基本「無視」です。

 もちろんすぐに収まるわけもないですが、おもちゃその他で気を引いたり、あえて赤ちゃんでも出来るような課題をやらせて
「すごい!」
と褒めたり、、、。

 例えば、幼稚園で自分の思いどおりに過ごしている子がいます。
「手を洗いたくない!」
と言うと
「じゃあ、(アルコール消毒液で)シュッシュしようか」
「嫌!」
「じゃあ、濡れたタオルでお手々ふこうか」
「嫌!」
 、、、延々と、ご機嫌をとってもらっている。なぜか。理由は、その子がすぐに大泣きして、一回泣くと要求が通るまで泣き続けるから。困りきった先生たちは言うことを聞くしかない状況になっている。

 その場合、幼稚園は方針もあるでしょうから仕方ないにしても(実際泣かせっぱなしで虐待を疑われることもあるらしいです)、お母さんには泣いても要求は飲まないようにとお伝えします。
 泣いて要求を通すことを覚えてしまった子は、願いが叶わなかったときにもっと大きな声で激しく泣きます(これをバーストと言います)。それでもダメならもっともっと大きな声で泣こうとするでしょう。暴れるかもしれない。それでも放っておきましょう(怪我だけには注意)。やらせたいことがあるなら(手を洗う、とか)、抱っこしてでも出来る範囲でやらせちゃいましょう。『泣いても無駄』を教えるためです。小さいうちなら抱っこで事足りることも、大きくなれば出来なくなります。くれぐれも小さいうちに、、、。

 さて、隣の部屋はどうなった?しばらく泣いて、そのうち静かになりました。多分セッションが再開されたのでしょう。時間にして3分も泣いてません。
『ここでは泣きは通用しない』
と薄々わかっているので、一応泣いて抵抗してはみるものの切り替えも早いのです。

 スクールでは大声で泣き叫ぶ姿なんて見たことがない子でも、家ではひっくり返って泣き叫び、お父さんお母さんが辟易している話はたまに聞きます。要求を飲んであげなかったときの『さらなる泣き』に我慢できなくて、結局言いなりになってしまうとその行動は止まりません。
やってくれないならもっと大きな声で、それでもダメならもっともっと、、、と子どもは学んでしまいます。毅然とした態度、大切ですよ。

 ただ、どこまで許すかはとっても難しい問題。こちらの考えとご家庭の方針とが異なっても厄介です。あれれ、おかあさんはそう思っていたのですね!?と焦ったりびっくりしたりしたこともありますもの。
 そんな話もまた今度。


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