漫画『どんぐりの家』
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「先生、読んでみますか?」
そう言われ、知り合いのお母さんにお借りしたのは、耳の聞こえない、そして発達の面でも障害のある子どもたち(ろう重複障害児と言います)とその家族の、実話をもとにした漫画です。
『どんぐりの家(漫画・山本おさむ)』
読んだことある方もいらっしゃるかもしれません。読み始めてすぐ、かなりの衝撃で気持ちが折れそうになります。読みすすめるのが辛くなります。それでもしっかり読まなければ。私は曲がりなりにも療育を生業(なりわい)にしているのですから。
補聴器をつけているお子さんには今まで会ったことも担任をしたこともあります。でも私の出会った子ども達は補聴器をいわゆる「補助」として使っていて、こちらの話していることが聞こえないというレベルではありませんでした。
けれど、世の中にはこちらの「声」がほとんど届かない子どもたちもいます。その上で障害を持っていると意思の疎通は非常に難しくなる。
三重苦のヘレン・ケラーは耳と眼とどちらか治るとしたら、迷うことなく耳が聞こえるようになりたいと言ったそうです。私達は「百聞は一見にしかず」という言葉からもわかるように、「見える」事を重視しがちですが、聞こえない世界は私達の想像以上に困難な世界なのです。
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漫画「どんぐりの家」の冒頭、排泄の訓練もままならない、全く意思の疎通の出来ない子どもたちが登場します。両親も担任も途方に暮れる場面からのスタートです。そこから、少しずつ 少しずつ信頼関係を築き、手話を教え、なんとかコミュニケーションをとろうと奮闘する姿が描かれます。
その後、子どもたちは様々なことを学び、成長していきますが、その歩みはとてもゆっくり。無情にも年月の流れは早く、彼らの成長を待ってはくれません。親も支援者たちも子どもたちの将来が不安で仕方ない。けれど、国は全く当てにならない、、、。
そこで今度は障害児の親や先生だけでなく、いろんな立場の人や団体、世間をも巻き込んで、障害者のための施設の建設に向けて突き進んでいきます。建設に向けての資金を募金やバザー、寄付等で集めていくのですが、到底集めるのは難しいと思われた金額を最後の最後で集めきる、その奇跡のような過程は圧巻です。
現在はだいぶ状況が違ってきているとはいえ、障害を持つ人たち、その家族の抱えている困難や不安は明らかに存在します。それをどう乗り越えていくか、支援していくのか、未だ問題は山積みです。
そして私が1番身につまされた言葉。
「あなた達はいつもそうよ、、、。手話を趣味のように考えて、手話だけを楽しもうとする。手話を必要とする、聴こえない人たちの事は見ようとしない。
ボランティアをやりたいって言いながら、何か気に入らなければ、かんたんにサークルをやめていく。自分の安全なラインを引いて決してそこから出ようとはしない。手話をやめても“どんぐり”の支援をやめても、何一つ困らない!」(漫画「どんぐりの家」第7巻より抜粋)
、、、そうなのです。私は支援者として働いてはいるけれど、当事者ではない。辛くなったらすぐにやめる事が出来ます。金銭的に困窮する危険があるなら、そこから抜け出す事が出来ます。この言葉は、気づかないふりをして、また気付かれないようにしていた私の認識の甘さをもろについてくる言葉。
果たして、目を背けない事、やめない事をしっかり自分の中で覚悟していただろうかと自問。
この漫画で初めて知った詩があります。綺麗事なのでは?と感じる方も、神様なんていない!といきどおる方もいらっしゃると思います。神様は乗り越えられる試練しか与えない、なんて言葉は、信仰のある人だけがつぶやける言葉だと思うし、本当に辛いときにこの言葉は当事者を苦しめる事もあるでしょう。
それでも、このとてつもない偉業を成し遂げた親御さんたち、支援者の方々の努力を知ると、この詩が綺麗事ではないような気がしてきます。
エドナ・マシミラ 詩
大江裕子 訳
『なぜこの子らはこの世の光なりか』
会議が開かれました
地球からはるか遠くで
“また次の赤ちゃん誕生の時間ですよ”
天においでになる
神様に向かって
天使たちはいいました
この子は特別の赤ちゃんで
たくさんの愛情が必要でしょう
この子の成長は
とてもゆっくり見える
かもしれません
もしかして一人前に
なれないかもしれません
だからこの子は
外界で出会う人々に
特に気をつけて
もらわなければならないのです
もしかして
この子の思うことは
なかなかわかってもらえないかもしれません
何をやってもうまく
いかないかもしれません
ですから私達は
この子がどこに生まれるか
注意深く選ばなければならないのです
この子の生涯が
しあわせなものとなるように
どうぞ神様
この子のために
素晴らしい両親を探してあげてください
神様のために特別な任務を
ひきうけてくれるような両親を
その二人は
すぐには気付かないかもしれません
彼ら二人が自分たちに求められている
特別な役割を
けれども
天から授けられたこの子によって
ますます強い信仰と
豊かな愛を抱くようになるでしょう
やがて二人は
自分たちに与えられた
特別の
神の思し召しを悟るようになるでしょう
神からおくられた
この子を育てる事によって
柔和でおだやかな
この貴い授かりものこそ
天から授かった
特別の子どもなのです
アマゾンのリンクを貼っておきます。壮絶ですが、勇気をもらえる漫画です。
まだまだ紹介したい本が沢山。小出しにしないと、私自身が熱くなりすぎてしまいそう。
そんな話もまた今度。
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