【映画】Kキム・ギドク
あれ?またK?
すみません。K、と考えた時に大好きな俳優さんと監督さんが浮かんでどちらも譲れませんでしたのでどちらも書いてみることにしました。
よろしければお付き合いくださいませ。
キム・ギドク氏は韓国の映画監督さんです。
昨年末コロナウイルス感染を経て亡くなってしまいました。
私にとっては永久保存されていくはずの世界遺産が消失したような喪失感。。
鬼才の愛すべき作品を3作ご紹介。
1
「魚と寝る女」
私がキム・ギドク監督作で一番に挙げるならこの作品かなと思います。何が一番ってシュールさNo. 1です。
そこに表現される熱量もNo. 1の作品です。
釣り堀で釣り船への橋渡しや食料の提供に加えて身を売ることで生計を立てる女。ある日、警察に追われる男が逃げ込んできます。女は男を匿います。男は追い詰められ自殺を試みますが女は助け、男と関係を持ちます。女は男に惚れ込み、男に尽くしますがある日他の売春婦が男に近づき女は嫉妬の炎を燃やします。
その嫉妬の炎がすごいのです。
ことあるごとに痛みが伴う映画です。釣り針を飲み込み死のうとする男、女の激しさに逃げ出した男に向け、体内に釣り針を埋め込んで血を流す女。釣って釣られてなんなのこれはと目を見張る惨状です。
エロティックという言葉だけでは表現し尽くせないぶつけ合う性愛です。
キム・ギドク作の中で非常に(観ることへの)難易度の高い作品だと思います。近年では「メビウス」が挙げられます。
2
「悪い女」
そしてこちらはキム・ギドク作品で爽やかさNo. 1の作品だと思います。
「サマリア」と並んで女の友情を描いた作品です。
エゴン・シーレの絵を一枚抱えて歩く女がある海のそばの町を訪れます。ソウルの売春街から流れてきたジナ。海沿いの宿屋に身を寄せます。そこは売春込みの宿泊を商売としていました。一家で経営しているその宿には父母弟と暮らす女子大生のヘミがいました。ヘミは売春宿に育ったことに嫌悪を抱いており、生活のためと理解しながらも我慢してきました。同じ年頃のジナにも嫌悪しながらも美しく物静かなジナに興味も抱きつつありました。
大切な恋人がいながらも自分の家のことを話すことができないヘミ。性行為に対しても素直に応じることもできません。夜な夜な客を取るジナに対する憎悪の気持ちは育ちゆくばかり。しかしながら昼は学生として美術学校に通い自分の生活を淡々と過ごしていくジナにいつしかその家族の一員のような空気が漂い始めます。ヘミもジナに姉妹のような気持ちを抱きはじめますが事件は起きます。
ヘミのジナへの複雑な想いが行動に表現されるラストシーン。とても美しく、キム・ギドク作品の中でもとても爽やかな作品だと思います。
3
「春夏秋冬、そして春」
そしてキム・ギドクを失ってしまった今、この作品を最後に掲げたいと思います。
春夏秋冬、一年は巡り、そして春になります。輪廻。キム・ギドク氏自身も出演している本作。人の一生は巡り何かに宿る。そして生まれ変わります。
幼な子は老いた僧に育てられ成長し青年となる。青年は恋を知り止める手を振り切り寺を出る。愛を主張し愛にこだわり女を知り喜びを得る。
しかし女に裏切られた青年は女を手にかけ追われる身となって寺を再び訪れる。老僧の姿はなく、待っていたのはひとり立つ鍛錬。中年になり老齢に向けて孤独な修行。
そしてある日彼の元に女が訪ねひとりの幼な子を残す。
幼な子は小さないたずらをしては無邪気に笑う。あの日そこにいた幼な子とおなじに。
人の一生を四季になぞらえて描きます。
キム・ギドク監督が残したもの。映画界に産みつけたもの。影響を受けた後世の人たちに宿り、違う花になるのでしょう。
善しか悪しか。双極を描く稀有な監督さんでした。これから彼が産み出す作品が楽しみでした。残念です。