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プーシキン『大尉の娘』 立場上、友とは呼べない
おはようございます。
毎日編み物をしながら暮らしているアランアミです。
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昨日の編み物🧶
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最初の作り目が長すぎたかもしれない。
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今日もプーシキンの『大尉の娘』についての記事です。
前回の記事はこちら。
今回のサムネは主人公が任務に当たることになるペロゴールスク要塞の皆さんをまとめました。
表題の「大尉の娘」はこの要塞のミローノフ大尉の娘マリヤ・イヴァーノヴナを指します。
主人公グリニョーフはマリヤと恋に落ちますがその話よりも私はプガチョーフとグリニョーフの奇妙な関係の方に興味が湧きました。
プガチョーフって誰?
主人公グリニョーフとプガチョーフは大吹雪の中で出合います。
「ねえ、おじさん」僕は彼に言った。「このあたりはよく知っているかい?どこか泊まれる場所まで連れていってくれないか?」
(中略)
男の冷静さが僕を元気づけた。僕はもう決心していた。神の意志に身をゆだねて、ステップの真ん中で一夜を明かそう。すると、道の男は御者台に飛び乗って、御者に言った。「おい、ありがてえぞ、近くに家がある。右へ回って行ってくれ」
グリニョーフにとってこの案内人は命の恩人。
一晩泊まった宿屋を後にするときにお礼として兎皮の長外套を渡しています。
じいやのサヴェーリイチがそんな高価なものをこんな奴に渡すなんて!と憤慨している横で案内人はこの贈り物にいたく満足します。
まさかこの案内人が亡き皇帝ピョートル三世の名を騙り反乱を起こした首謀者であるとはグリニョーフは知りません。
再会は絞首台で
二人が再び出会ったのはプガチョーフがグリニョーフが勤務する要塞を占領したときでした。
プガチョーフによって司令官、中尉と首を吊られ、いよいよ次はグリニョーフの番になります。
ここでなんとじいやのサヴェーリイチが割って入ってきてグリニョーフのために命乞いをします。
その様子を見てプガチョーフはグリニョーフを処刑するのを止めるのです。
グリニョーフがプガチョーフの正体を知るのは自分の部屋に戻ってから。
僕はびっくりした。たしかにプガチョーフとあの案内人は、えっと思うほど似ている。プガチョーフとあの男が同一人物だと思えば、僕が赦された理由も理解できた。状況の奇妙なつながりに驚かざるをえなかった。流れ者にやった子ども用の長外套が、僕を絞首台の輪っかから救ってくれたんだ、それに、宿屋をはしごしていた飲んだくれが、いくつもの要塞を包囲し、国家を揺るがしているなんて!
プガチョーフにとっては逃亡中の身を隠すのにグリニョーフは一役買ってくれたことになります。そこにプガチョーフは恩を感じているためにグリニョーフを処刑しなかったのです。
仲間になるか、ならないか
プガチョーフはグリニョーフと二人で話す場面で仲間にならないかと持ちかけます。そしてお前は自分のことを偉大な君主だと信じないかのかと問います。
このシーンは読んでいてハラハラするしグリニョーフの答えがプガチョーフと同じくらい気になります。
ぜひここのやり取りは読んでほしい。
結果としてグリニョーフの率直さがプガチョーフの心を動かし、彼は自由になります。
そしてこの後も大尉の娘であるマリヤを救う場面でも二人の奇妙なつながりは影響してくるのです。
仲間じゃない、でも他人じゃない、しかし友とも呼べない
グリニョーフは一貫して女王陛下に忠誠を誓っていてプガチョーフには与していません。
しかし、周りから見たらどうして彼だけプガチョーフに許されたのか、宴に参加していたのか、え?仲良しなの?と思われても仕方がない様子が散見されます。
グリニョーフ自身もプガチョーフに対して親しみを感じている。
しかし反乱者としての彼を肯定する気持ちは微塵もない。
でも多分、人としては好感や信頼を持っていたりする。
物語終盤でグリニョーフはプガチョーフ一味に加担した疑いで捕虜になります。
彼の中では親交はあったけれど、仲間に加わってはいない。
でも周りはそうは見てくれません。
少しでもプガチョーフを肯定するような発言をすればグリニョーフの罪は確定してしまうでしょう。
仲間じゃない、でも他人じゃない。
相手の人柄に触れちゃったんだ、という葛藤が読んでいて胸がギューっとする場面でした。
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ああ、長くなった。
では、今日も良い1日を〜