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キャプテンウルトラ第18話「ゆうれい怪獣キュドラあらわる」

 ゆうれい怪獣だけにホラー回だったが、この18話に関しては宇宙の青さにも一切気にならないほどの恐怖と絶望を描いていた。

 タシロ博士の設計した宇宙旅客船・オリオン号の試験飛行が始まった。操縦手のキャプテンや博士を始め、アカネ隊員やハック、シルバースター・ムナトモ所長の孫であるジュン、そして新聞記者らも登場する夢と希望にあふれる宇宙旅行になる……はずだった。
 オリオン号は突如発生した黄色い霧に巻き込まれ制御不能となり、未知の惑星に不時着。全員脱出に成功したものの、断崖絶壁にあった機体は転落してしまい帰る手段を失ってしまう。
 惑星は宇宙船の残骸だらけであたかも宇宙の墓場の様相を呈していたが、一行は過去に不時着したと思われる一隻の宇宙船を発見。内部を調査するも元の乗組員は誰も見つからない。だがそこへ、謎の女が不気味な姿で現れたと報告が入る。アカネ隊員が発見した日記から、その女性は遭難後に最後まで生き残るも、絶望のまま死んだ人物だと判明する。そんな彼らの前に一体の怪獣が出現した。その名はキュドラ。宇宙の墓場の主とされ、その姿を見たものは生きて帰れないという。
 一同が恐怖と絶望に襲われる中、キャプテンは生還する唯一の方法として、タシロ博士の力をもとにこの宇宙船を修復することを考えつく。その言葉を信じて作業にかかる中、一人絶望し憔悴しきった新聞記者にキュドラの魔の手が迫る! 彼らは無事に宇宙の墓場から脱出できるのか?

 今まではピンチの時にキャプテンがシュピーゲル号で駆けつける展開だったが、前回17話でシュピーゲルはバクトンに対し捨て身の特攻を行ったため喪失。脚本でその設定を引き継いだのか偶然なのかはともかく、今回はSOSを呼べないという状況で登場人物たちを恐怖と絶望に追いやっていく。そしてホラー界で描かれたのは怪物の怖さよりもその恐怖と絶望であり、これこそが今回の肝だったうえに鏡や小窓、ドアの隙間を活かした演出も上手い。

 一方で怪獣キュドラは死んだ人間の魂を餌にしているというが、ならば単に遭難者を自ら襲えばいいはずだ。なのにそうしないのはおそらくキュドラの意図的な行為で、どうせ彼らはいずれ野垂れ死んで自分の懐に入るのだから、その前に恐怖と絶望で弄んでからにしようと違いない。何とも性格が悪い怪獣である。

 そんな状況下においてもなお希望というか、最後まで諦めないのがキャプテンの凄さだった。単に明るい言葉で励ますのでなしに
「こんな子供をこんなところで死なせられるか! 俺はこの子供を連れて必ず宇宙へ帰る!」
と自らの決意を叫ぶ。護るべきものがあるから戦う、だからいかなる時でも勇気を失ってはならないことを訴えて、皆を絶望の淵から救わんとするキャプテン。本当に頼もしい。

 ところでキュドラの名前は「ドラキュラ」に由来してるとの話もあるが、物語ではそこに引っ掛けた倒され方なのも実に「ゆうれい怪獣」っぽさがありましたな。

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