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キャプテンウルトラ第17話「合成怪獣バクトンあらわる!」

 怪獣図鑑で存在は知っていた。丸っこくユニークさすらある姿だが、設定には結構なSF要素が詰まってて侮れない。

 「バクトンセンター」。火星都市ニューキャナルシティに開設されたこの施設は、堤博士が産み出した「バイオニクス機構」により第七重水から人工電子細胞を生み出せる。研究途上ではあるが、現時点でも既に食用可能な細胞、すなわちありとあらゆる食品を製造出来る夢のようなシステムだ。
 その施設の開所式にロボット・ハックと、パイオニアスクールを代表して堤博士の息子・シンイチも招待された。披露されたその技術に驚嘆する一同。一方で、第七重水は水爆にも転用可能な物質だから万が一のことがあったら大変だとシンイチは語る。だが博士は、戦争のない現代ならそんな心配はない、と胸を張るのだった。
 しかしシンイチの不安は当たってしまう。その夜、彼はバクトンセンターが蠢く姿を目撃する。両親に話すも信じてもらえず、シンイチは事の真相を確かめるべく密かにセンターへと侵入を試みた。そこで彼が目撃したのは、まるで意思を持ったかのように暴れ出すシステム回路だった! シンイチはキャプテンにSOSのサインを放つ。急行するキャプテン。
 キャプテンは、もしも高度な科学ゆえに特殊な異変が起きてしまったら、と仮説を立てる。まさかそんなことは、と語る博士の元にセンターで異変発生の報が入った。駆けつけた彼らが見たものは……!

 人工的に細胞を生み出せるなら、あらゆる食料だって「作れる」のでは? というアイデアが面白い。食物も工業製品のようにオートメーション化されれば、家事全般が今までとは全く違うものになるだろう……そんな空想未来があったわけだ。「女性を台所から開放した」の台詞からもそれを感じる。
 そんな「食糧生産の機械化」を表現するのが、卵がベルトコンベアー式に進んだかと思えばニワトリになり、最後はローストチキンへと変化するマシン。随分と工程が飛んでるが、まあそれだけ凄い機械だというのは分かった。本編では肉どころか果物まで作り出している。こんな未来だったら、をぎっしり詰まったマシンといえる。

 しかしマシンは「怪獣化」という形で暴走してしまう。電子頭脳を含めてコンピューターが制御不能の怪物と化すのもSFでは王道の展開だが、建物全体が怪獣になるパターンはどれほどあるのだろう? 
 その原因は明確に描かれていない。人工電子細胞から生命が誕生したのか、はたまたコンピューターに異変が生じたか。キャプテンは前者とみていたが、自分はバクトンをこの複合体ではないかとみた。機械がケーブルを触手のごとく操り人々を襲うあたりはそれっぽい。ベタな表現だが俺は好き。

 物語中盤で出現したバクトンは、そこから後半までとにかく暴れる。キャナルシティで大暴れする。それだけなく、原料の第七重水を求めて生産工場を襲おうとしている。姿はユーモラスだがやっていることはエグい。原因が分からずとも「全て私の責任だ」と悔いる博士。演ずるは室田日出男さん。ディスコグラフィーだと科学者役はほとんど無いものの、結構なハマり具合。こんな室田さんをもっと観てみたかった。

 最後のサスペンス描写にやや間延び感があったものの、決死の作戦でバクトンは倒された。なかなかの強敵。今度こそ完璧な人工電子細胞を産み出して見せる、という博士の決意で締め。「二度とこのような研究は~」でなく希望を持たせる結末。やはり宇宙の青さの前にすると、前向きな表現の方が似合うのかな。

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