最新戦法の事情【振り飛車編】(2020年7・8月合併号 豪華版)
どうも、あらきっぺです。
タイトルに記載されている通り、振り飛車の将棋を見ていきましょう。
なお、当記事の注意事項については、こちらをご覧くださいませ。
前回の内容は、こちらからどうぞ。
最新戦法の事情 振り飛車編
(2020.6/1~7/31)
調査対象局は124局。二ヶ月分の対局があるということもありますし、順位戦も始まったので対局数は盛りだくさんです。
それでは、戦型ごとに掘り下げて行きましょう。
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◆先手中飛車◆
~救世主登場か?~
15局出現。出現率は約12%。少数派ではありますが、4・5月よりも出現率が上昇しており、支持者がぽつぽつと集まっています。
先手中飛車が復活傾向にある要因としては、後手超速への対抗策を見出したことにあります。その工夫をさっそく解説していきましょう。(第1図)
2020.6.8 第79期順位戦A級1回戦 ▲菅井竜也八段VS△羽生善治九段戦から抜粋。(棋譜はこちら)
この▲3八銀が振り飛車の新たなアイデアです。中飛車は▲3八玉と寄る囲い方が多いので、ちょっと珍しい指し方に感じられますね。
とりあえず、居飛車は通常通り銀を6四に繰り出します。対して、振り飛車も▲6六銀型で対抗して相手の攻めを受け止めに行きます。(第2図)
さて。このような銀対抗の形になると、居飛車は△7五歩と突けないので直ぐに仕掛けることが出来ません。よって、攻め駒を増員する必要があります。
なので本譜は△4四銀と上がりましたが、▲4七銀△7三桂▲5六銀が先手の描いていた構想でした。(第3図)
囲いの銀を繰り出すので抵抗感があるかもしれませんが、この形を作ってしまえば、もう仕掛けはありません。△6五桂と跳ねる手を封じられると、居飛車は手出しすることが出来ないのです。
この局面を見ると、先手が▲2八玉を保留している工夫が光っていることが分かります。つまり、この一手を省略することで、浮いた一手を銀の進出に分配することが出来たという仕組みなのですね。
なお、このように銀を二枚並べて居飛車の仕掛けを封じる作戦は、以前から浸透していた組み方ではあります。ただ、従来はそれを実現するために、仮想図のような組み方をしていました。
ただ、この組み方だと、居飛車に持久戦へシフトチェンジされたときに囲いの進展性が乏しいというデメリットがあります。ゆえに、振り飛車は芳しくないと見られていたところがありました。詳しい解説は、以下の記事をご参照ください。
しかしながら、この組み方であれば振り飛車は美濃囲いなので、持久戦になっても大歓迎です。こういったところに、▲3九玉型の利点があるのですね。
さて。居飛車はここから単純に銀と桂を繰り出すようでは、上手くいかないことが分かりました。しかし、持久戦にシフトするのも面白くありません。
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