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あなたも想像に引き込まれてみませんか? ──「心と暮らしをよくするために──道具・素材から考えるアートと発達」事前レポート

 楽しくて、豊かな生活のためになる心理学を考え、実践していく。
 その一環として、ほんのちょっとかもしれないけど、とっても大事な変化のきっかけになるようなイベントを企画する。
 2024年第3回目のイベントは12月8日(日)14時から「心と暮らしをよくするために──道具・素材から考えるアートと発達」と題して開催します。
 本noteでは、荒川出版会メンバーがイベントの事前レポートを公開します。レポーターは、同イベントで司会を務める北本遼太です。


もし家が転がっていけるのだとしたら?

いま、皆さんがどこでこの記事を読んでいるのかは分かりませんが、たぶん家全体がゴロゴロと転がる中で読んでいる方はいないと思います(ゴロゴロと寝ながら読んでいる方は多いかもしれません 笑)。

「もし家が、球体で転がるものだとしたらなにをしてみたいですか?」

この突飛なアンケートは、とある展覧会に参加した時に、とある人から投げかけられました。
その人物こそ、今回のイベントにご登壇いただく永岡大輔さんです。

私はこのアンケートをしどもどろになりながら「身支度と通勤が一緒にできるようになって、出勤時間のギリギリまで寝ていられる。」とか「飲み会で夜遅くなっても、家が飲み屋まで迎えに来てくれる。」と答えました。

でも、よくよく考えてみれば、家が転がっていけるなら、そもそも「通勤」という概念がなくなるかもしれません。あるいは、「飲み屋」という場や「飲み会」というイベントの持つ意味合いも大きく違ったものになるかもしれません。そして、家が球体だとしたら「通勤」や「飲み屋」や「飲み会」は一体全体どうなるのか、私には見当もつきません。

先ほどのアンケートとは、国分寺にあるSecond 2. にて開催されている展覧会 球体の家「回転と痕跡」で出会いました(残念ながら、永岡さんご本人とは会えず…)。この展覧会のステートメントにはこんなことが書かれています。

 球体の家に住むことは、すなわち生活に合わせて家を転がすことになります。夜寝た場所は朝には天井になり、天井だった場所は食事をする場所になります。こうして、少しずつ転がり移動しながら生活をすることになります。その為、箱型の家で暮らす今の我々のライフスタイルや価値観はほとんどすべて球体型の家用に変えていかなければなりません。
 この家での生活は、転がり移動することによる環境の変化に対応するもので、そのたびに新しく生まれ変わる身体との出会いの連続になります。

永岡大輔 球体の家「回転と痕跡」より

球体型の家にあわせて、ライフスタイルや価値観を変えたらどうなるのか? 彼のプロジェクトでは、その問いをもとに想像を膨らませて、様々な観点から作品として形にしていきます。食べ物や飲み水をどう確保しようか? 寝床はどうなるのだろうか? ゴロゴロ回転できるような壁って? 家具は? 食器は? などなど。

歩いたり移動しながら、雨水をためる装置 
                            球体の家「回転と痕跡」にて撮影
 球体の家の壁を作ってみると?                        
                            球体の家「回転と痕跡」にて撮影                                                                      
球体の家では、どんな器がよいのだろう?
                           球体の家「回転と痕跡」にて撮影

さまざまな人を引き込む想像の力

イベント「心と暮らしをよくするために──道具・素材から考えるアートと発達」では、球体の家プロジェクトについて永岡さんにお伺いしていきたいと思っています。ただ、プロジェクトの内容をお話ししていくだけでも面白いと思いますが、発達心理学というアートとは他の分野とぶつかることで「球体の家」の面白さをさらに引き出していければいいなと思っています。

では、アート × 発達心理学ではどのような交差点があるのでしょう。

私は、2つとも想像が人間に不可欠なものだという点で交差していると考えています。

発達心理学では想像が様々な活動として発揮されるものだと考えられています。例えば、子どものごっこ遊びを考えてみましょう。実際には、子どもは仮面ライダーでもプリキュアでもないけれど、想像した場面をみんなで作りながら、ヒーローやヒロインになっています。そして、子どもたちは社会性を身につけたり、新しい感情を作り上げていきます。もちろん、大人になってからも想像は私たちの生活を豊かにしてくれます。日々の仕事の中で「こうなったらいいな」という想像をすることが、新しいアイディアが生まれたり、困難な状況を突破するきっかけになったりします。

大事なのは、この想像という営みが仕事や遊びという活動として発揮されることです。ひとりで頭の中で様々な想像を膨らませることももちろんできます。しかしながら、想像が暮らしを豊かにするには、想像したことを他の人々と共有し、人々がそれに引き込まれていくこと(=活動)が不可欠だと、私は発達心理学者として考えています。

多種多様な人々が「球体の家」という想像に引き込まれ、それぞれがまた想像を膨らませることで新たな作品が生まれていく。永岡さんの展覧会を見に行って改めて強く感じたことは、こうした想像の波及的な広がりでした。いうなれば、私もまた発達心理学者として彼のプロジェクトに引き込まれているのでしょう。

この記事を読まれたそこのアナタ! 
今回のイベントに参加して「球体の家」プロジェクトに引き込まれてみませんか? 引き込まれて、想像的な時間を過ごし、暮らしを豊かにするヒントを持って帰ってもらえれば嬉しいです。

ところで、発達心理学者の北本って?

最後に、「球体の家」プロジェクトに引き込まれた私自身(北本)について簡単に紹介してレポートを終えたいと思います。私は人々が集まり、関係を作ったり、その関係を組み替えたりすること(≒コミュニティを作ること)が発達において最も重要な営みだと考えています。特に、福祉や保育といったケアに関わる人々に関心を持っています。誰かをケアするためのコミュニティを作り、維持する中で、人々はどのように変わっていったのか。またその中に一人の研究者として身を置くことで私自身も変わっていく。そんな様子を研究としてまとめています。

もう少し詳細な研究の紹介はこちらのエッセイをお読みいただければと思います。また、イベントの紹介動画では、具体的な研究についてもお話ししています。良ければご覧ください。

会場でもオンラインでも、皆さんのご参加をお待ちしています! 当日、皆さんとお会いできるのを楽しみにしています。

申込:Peatix

永岡大輔×北本遼太「心と暮らしをよくするために──道具・素材から考えるアートと発達」
#荒川出版会241208

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