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ポールウインナーの○○さんだよ~
我が家に恐ろしいアレが現れたのは、3月某日。
ある晴れた日の昼下がりのことだった。
ポールウインナーは関西圏の人にはおなじみのアレ。関東圏ではあまり見かけない伊藤ハムのソーセージ。
伊藤ハムの公式HPで「ポールウインナーみーつけた!」というページがあり、そこではポールウインナーの目撃情報を募集しているので、関西圏以外の人も、もし近くでの目撃情報があれば是非とも購入して食べてみて欲しい。
↓ 伊藤ハム公式HP「ポールウインナーみーつけた!」
https://www.itoham.co.jp/product/brand/pole/location.html
あの日も台所にオヤツを取りに行った子は、クリーチャーのように微妙にクネクネと関節を動かしながら、ご機嫌な様子で台所へと繰り出してきた。
視界の端で確認してみると、たまにぴょんぴょんと飛び跳ねている。これは、かなりなご機嫌度合いであることは間違いない。
まぁ、これはいつものことなので(←
そこまで気にすることでも無いのだけど(←
その時、掲げた両手に何か食べ物を持ち、蛇行しながら器用に(気持ち悪い動きで)ダイニングテーブルを避けた我が子が、なぜかこちらに向かっているような気がした。
狭い家なので子の定位置に向かう途中、奇妙な軌道を描いているがゆえに、一瞬こちらに体を向けただけなのか、それともこちらに何かアピールするために向かってきていたのかは今となってはわからない。
そして、子がワタシに体の前面をしっかりと向けた瞬間、子は普段の会話よりも少し大きめの声で楽しそうにこう言った。
ポールウインナーの妖精さんだよぉ~
なんでやねん。
どっから妖精さん出てきてん。
誰がポールウインナーの妖精さんやねん。
妖精さんというより、妖怪さんや。
ワタシは飲んでいた珈琲を噴き出しそうになるのを必死にこらえたけど、こらえきれなかった分が口の端からまるで血のようにタラりと垂れていくのを感じた。
こんなことで…くやしい…
がっくりと膝をついたワタシの右手には、見えない刀が握られていたに違いない。負けた…。
ポールウインナーは美味しい。浮かれる気持ちもわかる。オヤツにも最適だ。マヨネーズを付けて食べたらさらにサイコーだ。だから掲げた両手の右にポールウインナー、左にマヨネーズを持っているのは大正解だと思う。
でも妖精さんは違うとおもう。
しかも、自分自身が妖精さんになってるし。
いつの間にポールウインナーに魂を売ってしまったのだ、子よ。
むしろ、魂を売るならもうちょっと売り先を考えてもいいんじゃなかろうか…?
そんなことをぐるぐると考えているワタシの鼻の奥が少しだけツンとしたのは珈琲が逆流したからであり、それ以上でもそれ以下でもないはず。
そんなワタシにはお構いなしに、動きを止めることなくクネクネと(やっぱりクリーチャーのように)去っていく子の、その背中はもう半分以上大人になっていて。小学生のようなあどけなさはどこを探しても見つからない。
ポールウインナーの妖精さん。
ワタシの頭の中では、オレンジ色のぴちぴち全身タイツに身をまとい、背中に立派な天使の羽根を背負った物体が存在感を強め始めた。弱そうでもあり、ある意味強そうでもあるその姿。ちょっとHENTAIさんのようなその立ち姿。
出来ることなら、今生では頭の中でも出会いたくなかった。
ポールウインナーの妖精になってしまった子は今、十代半ば。三十路を越える頃には落ち着いていて欲しい。
そして「それまでは何が何でも生きていたい」と、ワタシの生きる力の源になっていることは、ここだけの秘密にしておこうと思う。
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