映画『そばかす』をみて

ところで予告にはこの映画の私的に感じた『映画の良さ』が全く入ってないんだが・・・なんでだろ。
見せなくてもいいところを見せて、私が感じた肝心の良さがないというか。
そんな風に感じる。なんかあってるけどそうじゃないよ感が私的に強い。

話は恋愛感情を抱きにくい主人公が、そんな生き方に共感する人に出逢う物語。誰の価値観にも収まらない、それぞれが独立して自由で居ることに共感できる人に出逢えた喜びを得るまでの話。

結婚しない娘を想い、躍起になった主人公の母が主人公を騙してお見合いをセッティングする。そんなお見合いで出逢った人が「結婚する気なくて別にいまでも幸せだから」と話してくれる。
安心して仲良くなり友達として交流を重ねていくと、相手が異性として意識しはじめてしまい、やがて好きだと伝えて来てしまう。

男女の友情が成立するとかしないとか、そういうシロクロでもない気がした。

性別を考える前に人として出逢ってて心地よさみたいなのを異性に感じたらダメなんだろうか。その先に恋愛がなくてもいいとしたらダメなんだろうか。

そんな主人公の気持ちを想った。
恋愛至上主義を否定するわけじゃないけれど、出口が一つしかないのは息苦しさもある。映画の内容に共感することはわりとあるけれど、ここまで共感する映画も珍しい。

物語の中盤で、主人公の友達が叫ぶんだ。
「弱者は主張しちゃダメなんですか」「人と違うことはおかしいんですか」って。

紙芝居を一緒に作りながら物語の内容にこう言うんだ。
「女にとって恋愛が全てで結婚が人生のゴールなの?そのあとの人生もめちゃめちゃ続くんだけど!?」って。

メジャーな意見、マイナーな意見、別にどっちがどうとかでもないし、どっちを守るとかでもないんだけど、どちらかをどうにしようとする世界になってしまった今。それは『感じたことを素直に表現できない世界』で苦しみがある。

よわい方を守るのは過保護で気持ち悪さがあり、大多数の強い方を普通とするのも排他的。どっちがどうとかどうでもよくて、それを判断すること自体『無意味』と思う。
どっちも大事で、どっちもどうでもいい。

『結婚が幸せ』とか、男女で出逢うと『恋愛を意識する』とか、異性に声を掛けたら『狙ってる』とか、なんかそういう恋愛観点だけの価値観が、もう檻みたいに感じてしまってる。もっと自由でいいと思えた。

大好きな人と一緒に居られたら幸せだし、男女で出逢ってそのうち異性として好きになってもいい、けど『それだけじゃない』と思うから『そこだけがゴールになってるもの』が私の価値観に合わなくなってしまっただけなんだと判る。

以前親しくなった人に「結婚する気がないのかと思った」と言われたことがあった。「そうじゃない」と説明したら「安心した」と言われた。

主人公はこんな時直ぐに距離を取れてた。それだけ沢山経験したんだろうとわかる。

私は理解してもらえるだろうと「そうじゃない」を続けた。けれど全然伝わらなくて、どうやっても『男女の仲』って枠にはめられる。出口が一つしかないことが嫌で仕方なくて結局そっと疎遠にした。友達を作ろうと思ってたけれど、どうでもよくなった。

連絡する=自分に好意がある
やさしくしてくれる=自分に好意がある
好意がある=結婚する
結婚する=子供をつくる
子供をつくる=何人ほしい
何人ほしい=名前きめてある

この思考のレールが私にはどうにもダメで、恋愛するとかしないとか、男女であるとか男女でないとか、もうそういうところじゃないんだけど、言葉にならなくて。男女で出逢ったら必ず恋愛ってなるのがどうにもこうにも嫌で、私に選択肢はないのかと言いたくなる。

もちろん好きになる人もいるけれど、妙齢の男女が出逢えば全て恋愛になるように思われるのも、私が独り身であまりものみたいに扱われるが嫌で、恋愛や結婚が女の全てのような呪いを感じる。出来事そのものをみたら、たまたま独身同志で出逢っただけ、それだけだ。

歳をとれば結婚してる人も増えてフリーの人は珍しくなる。その中から選り好みするように、好きになりたくないし、好きになって欲しくない。あなたがフリーだから惹かれたのではなく、あなただから惹かれたのだと言われたい。妙齢の男女で結婚する圧力に押し負けて好きになどなりたくないし、なってほしくない。

そんな私の想いと逆のベクトルの話ではあったけれど、それに対する答えが映画『そばかす』にあった。

そう、そもそもの価値観が違いすぎるのだ。

そういう思考だけの角度でみる前に、その人そのものを理解し尊重し合う。判らないことなら、判ることが出来ない価値観なんだなと、自分を尊重し相手も尊重する。
そんなもんなんだと受け入れる。

映画のなかで友人を大事に想う主人公がとても心地よかった。

自分らしく生きて幸せにありながら、それに共感しあえる人と出逢い、そして一緒に居たいと想える人好きな人がいて、たとえそれが恋愛感情じゃなくてもいいじゃないか。                                                                      主人公が清らかに友人を想う気持ち。ここに深く共感出来た。

それを「おねぇちゃんはレズ」って妹が言っちゃうところ、不愉快だった。自分の価値観でしか見ていない。説明しても伝わらない。

自分には理解できない価値観があったって別に良いじゃないか。そもそも全て理解出来たとしたら、それはもう人ではない。

最後映画を一緒にみにいくシーン。
「悪くないな」と思えた。
最後、走り出す気持ちがよくわかる。

『そばかす』よかったな。

結婚することが幸せに縛られない人生
それは結婚を諦めるとか、好きな人を諦めるとかそういう観点ではなく、もっと広く自分の世界を自由に生きていく観点。そのなかに出逢いや愛が含まれてるだけなんだ。

公開時観にいこうと思ってたのにいかなくて「やっぱ劇場で観たかったな」と思ったけれど、今観る映画だったんだろう。
良い映画を観られて良かった。

2024年2月4日
2024年10月1日 加筆訂正






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