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NEWSな科学 衛星コンステレーション

2024年8月21日、防衛省が2025(令和7)年度予算の概算要求で、8兆4989億円を計上する方針であるというニュースが報道された。

この額は過去最大で、長射程ミサイルの保有を推進するために国産ミサイルの量産に使われるようだ。このニュースの中では、2027年度までに航空自衛隊が「航空宇宙自衛隊」に改称することを念頭に、「宇宙作戦団(仮称)」を新設することも報じられた。

近年の戦争では人工衛星が存在感を増している。光学衛星や合成開口レーダー(SAR)衛星などによる詳細な衛星画像は、戦闘前の軍隊のようすやミサイル攻撃を受けた後の被害状況などを瞬く間に世界中に伝えた。さらに、インターネットでの積極的な情報発信も戦争の行方を左右する大きな要素となっている。自衛隊が宇宙にまで意識を向けるのは当然の流れといえる。

記事を読み進めると概算要求のもう少し細かい中身が記されていた。その記述の中で目についたのが次の文だ。

ミサイルの探知や追尾能力を向上させるため、複数の小型衛星で目標を捕捉する「衛星コンステレーション」の整備費3232億円を初めて盛り込む。

産経新聞

衛星コンステレーション」というちょっと変わった名称に何だろうと思った人もいるだろう。これは複数の衛星を1つの目的のために協調させて使用する衛星群のことを指している。記事では小型衛星に限っているが、衛星の大きさは関係ない。アメリカの全地球測位システム(GPS)は30ほどの衛星が協調して地球上にあるGPS受信機の位置を正確に計測する。

最近では、アメリカのスペースXがおびただしい数の小型衛星を協調させて高速衛星インターネット通信網スターリンクを構築している。ウクライナの戦争でも、通信網が破壊されたウクライナでスターリンクは活躍した。

コンピュータ技術などが発達したことにより、小型衛星の開発が安価に、しかもすばやくできるようになったことで、近年、小型衛星による衛星コンステレーションが実現し、様々な用途で使われようとしている。

日本では、陸域を観測する次世代光学衛星システムや、先進レーダー「だいち4号」の後継となる次世代SAR衛星も、衛星コンステレーションが検討されている。

防衛省が検討している衛星コンステレーションがどういうものか、今ひとつわからないが、「ミサイルの探知や追尾能力を向上させるため、複数の小型衛星で目標を捕捉する」とあるところから、米国防総省(DoD)の宇宙開発局(SDA:Space Development Agency)が計画している軍事用低軌道衛星コンステレーション「Proliferated Warfighter Space Architecture(PWSA)」と似たようなものになるように思える。もしかしたら、アメリカからPWSAを買う可能性もある。防衛的な観点からすれば、国産技術を使う方が安全ではあるが。

ロケットは技術的には弾道ミサイルと同じものであるし、国防や軍事とも親和性のあるものだが、より宇宙技術を軍事面で活用しようという動きが進んでいる。


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荒舩良孝
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