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あなたはこのゲームの虜に…#14

ある日突然、泡のように浮かんで来たネタ。
気が付いた時には文章になってしまったもの。

ネタ回です。
まったくストーリーと関係ないネタ回です。

それでも良ければ、お付き合いのほどを。


◆ キノコ農家の平凡な一日


キノコ農家の朝は早い。
まだ夜が明ける前から、彼は動き出した。

彼の名は「あらびど」さん。

ノースティリスに滞在し、冒険者と農家、
二足のわらじを履いて生活する男性だ。

我々「パルミア・タイムス」取材班は今日、彼の1日に密着した。

「そうですね。やはりスタミナが大事です」

彼はそう語る。

農作業は体力勝負。
そのような話は確かに聞く。
キノコ栽培でも例に漏れずスタミナが重要らしい。

「それはやはり、冒険者業で培われたのですか?」

取材班の質問に対し、彼は何も答えない。
目を閉じ、何かを待っているように見える。

彼なりの精神統一なのだろうか?
日の出前の薄暗い中、静かに彼は待機し続ける。

目の前には畑が広がっている。
しかし、キノコの姿は見えない。

じきに夜明けだが、果たしてキノコはどこにあるのか。

いや、そもそもキノコ栽培は屋内が基本ではないのか?
日光に当たるこの場所で、本当に栽培が可能なのだろうか。

疑問が沸く中、ゆっくりと夜が明ける。
陽の光が畑に当たり、しばらくの時間が経過した。

その時、取材班の目の前で信じられない事が起こった!

取材班が目にしたものとは!?

【CM入り】


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【CM明け】

夜が明けたキノコ畑で、
取材班が目にしたものとは!?(再)

なんと畑一面に生育したキノコだった!

目を疑う取材班。

ほんの一瞬前には存在していなかったキノコが
確かに畑に生い茂っている!

混乱している取材班をわき目に、
彼は鎌を使用してキノコを刈り取り始めた。

キノコ農家としての本業を開始したということか。

しかし、ここで取材班は奇妙な点に気がつく。
鎌を振るった彼の手の中にはキノコがないのだ。

「半分程度はタネを取るんですよ、キノコの採取はそのあとですね」

そう言って慣れた様子で鎌を振り続ける彼。

キノコに、タネ?
はて、キノコは菌類なので、タネは存在しないはずだが。

だが、プロである彼が言い間違えるはずもない。
取材班は「タネ」をキノコ農家の間で伝わる隠語であると判断した。

畑の作業はすでに半分を過ぎたようだ。
彼は手持ちを斧に変えて、今度こそキノコを採取している。

手持ちに入るのは、色とりどりのキノコだ。
畑のキノコは単一品種ではないらしい。

淀みなくキノコを採取する彼だが、急に顔色を変化させた。
どうやら黒いキノコが取れたようだ。

その形状は明らかに他のキノコとは異なる。

「トリュフですよ」

そう言って取材班に見えるよう手を広げる彼。

「高級食材じゃないですか!この品種だけを栽培されないのですか?」

その疑問に対して彼は首を横に振った。

「選んで栽培することはできません。確率で採取できるんです。あ、でも運を上げるフィートで、確率は上がるのかもしれません」

取材班には彼の言葉の半分も理解できない。
分かる事と言えば、キノコ農家として全てが順風満帆ではない、という事くらいか。

会話を続けながらも彼の手は動き続け、
ついに畑のキノコを全て採取し終えた。

これで1日の作業が終わりか、と思ったところ、
彼は畑に併設された吊るし鍋にキノコを放り込み始めた。

キノコ単体よりも、料理をした方が出荷額が良いということだ。
大量のキノコを鍋に放り込み、料理を仕上げてゆく彼。

しばらくその様子を撮影していると、
なんと彼の体から、血が吹き出し始めたではないか!

「あの、大丈夫ですか!?」

慌てる取材班だが、彼の返答はいたって冷静だ。

「まだ軽度の過労ですから大丈夫です。
ここから体力ギリギリまで料理を続けますよ」

すでに彼の足元には、血溜まりができている。
一体何が彼をここまで追い込むのか。

「次は、死にますね」

そう言って、彼は手を止めた。

なんと、死の間際まで作業していたようだ。
ノースティリスの農家とは、これほど苛烈なのか。

「うっかり死ぬこともあるので、見極めが大事です」

死すらも恐れず、農作業+料理という過酷な労働を
毎日続けるその気概に、取材班は驚きを隠せなかった。

その後、彼は料理を冷蔵庫へと入れた。
ようやく一日の作業が終了したようだ。

冷蔵庫の中は、この土地を訪れた客が自由に買えるらしい。

せっかくなので、取材班は作り立ての「野菜スープ」を
購入して頂くことにした。

スープの種類はいくつかあるようだ。
取材班はその内の一種を手に取った。

見た目は一般的な「野菜スープ」と変わりない。
味の方はどうなのか?

ゆっくりとスープを口に含んだ。

"肌がつるつるになりそうだ"

素晴らしい甘みと共にコラーゲンを感じる。
品種改良によって、味も変化しているらしい。

舌鼓を打つ取材班だが、急に眼前が揺れ始めた……

「あ、白キノコのスープはダメですよ、幻覚作用が……」

そう彼の言葉が聞こえた気がした。

取材班が振り返ると、なんと先ほどまで彼が居た場所には、
恐ろし気なモンスターが存在するではないか!

いつ、どこから、なぜ侵入してきたのだろうか?
思考を進めようとするが、頭は霞が掛かったように働かない。

モンスターはこちらに対して何かを吠えている。
威嚇だろうか?

危険を感じた取材班はとっさに戦闘態勢を取る。

幸い好戦的なモンスターではないようだが、
このまま放置すれば、どのような被害が出るか分からない。

取材班は勇気を振り絞り、立ち向かおうとした。
しかし、モンスターの方が一歩早く動き出す!

何が起こったかを理解する間もなく、取材班は意識を失った。

・・・

パチパチと音が鳴っている。
焚火の音だろうか。

朦朧とする意識の中で目を開けた。

我々はどうやら気絶していた様だ。
既に夜なのだろう。焚火が薄暗い空間を仄かに赤らめていた。

体は動かない。
何かで縛られているようだ。

しかも足が地面につかない。吊るされているのか?

いやな汗が噴き出す。心臓の音がうるさい。
ふと、辺りに血と肉の焼ける匂いを感じた。

我々の身に果たして何が……
いやまて、私以外のメンバーの気配がない。

"べちゃり”

私の足元で、音が鳴った。
霞む視界には人影が映る。

あぁ、あの髪型は覚えがある。「あらびど」さんだ。

私は助けを求めるために、声をかけようとした。

だが、彼の手にあった ”物” を認識した瞬間、
声は悲鳴へと変わった。

ああああああああああああああああああああああああああああ。

私以外のメンバーがどうなったのか。
私自身がこれからどうなるのか。

理解はしたくない。

恐怖が他の感情をすべて押しつぶし、
喉からは悲鳴だけが出続ける。

そんな私の目に最後に映ったのは、
巨大な鎌を振りかぶる彼の姿だった。

……その後、取材班の姿を見たものは誰もいない。

この物語はフィクションです。
実在の人物・団体とは一切の関係がありません。

本日のメニュー:
『農業ドキュメンタリーのテレビ取材風』
 ~サイコパスホラーを添えて~

思いついてしまったのだから仕方がない。
次回からは、普通にプレイ記録を更新予定です。

今回はこの辺で。

画像の出典:
「Elin」ゲーム内スクリーンショットより

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あらびど
読んでくださって、ありがとうございました! 貴方に ”良き時間” が提供できていれば幸いです。