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「ネガティブなフィードバック」は実在する?

先日、Agendさんにてマネジメントの実践に焦点を当てたインタビューを掲載いただきました。その中で、「相手にネガティブなフィードバックをどうやって伝えるのか」という話に触れたので、今日はその部分を少しだけ掘り下げてみたいと思います。

(フジイさん)
こういう相手にとって耳の痛い内容、ネガティブフィードバックを前向きに伝えるのって、とても難しいことなのに、あらたまさんはそれがすごく上手なんだと思います。

(あらたま)
理想論から入りますが、私はネガティブフィードバックって存在しないと思ってるんですよ。
良い話も悪い話も含めてフィードバックじゃないですか。

https://agend.jp/media/aratama/

前提の部分を補足しておくと、主にマネージャー・メンバー間で行われる1on1のようなコミュニケーションの中では、時にはネガティブな(相手にとっては耳が痛いような)内容を伝えないといけない場面もあります。ただし内容が内容だけに「相手を傷つけたくない」「どう伝えたら納得してくれるだろう」など考慮事項が多く、なかなかシュッと伝えられない……という「あるある」なお悩みがついて回るもの。「伝える側」がマネージャー・メンバーどちらの立場でも実践できるような捉え方・伝え方について、考えてみたいと思います。

誰目線の「ネガティブ」?

ネガティブなフィードバックについて語られるとき、それが意識的であるかどうかにかかわらず、伝え手から見た「ネガティブ」が下敷きになることが多いように感じます。例えば以下のような感情です:

  • 自分が嫌な気持ちになるので

  • 相手の気分を害し、人格を否定している気がするので

  • 相手が自分を嫌いになってしまったら嫌なので

とはいえ「実際に伝えてみたら意外ととっても感謝された」「伝えられず半年が経ってしまい、余計こじれてしまった」という話も聞きます。逆に、自分としてはポジティブな内容を相手に伝えたつもりなのに、相手の顔がどんどん曇っていく……なんてこともありますよね。もちろん伝え方の工夫は必要ですが、逆に言えばそれ以外は実際に伝えてみるまでそれがポジ・ネガどちらに転ぶかは分からない、とも捉えられるのではないでしょうか。であるならば、伝えることの手前で悩んでしまうのは、ちょっともったいないような気がします。

フィードバックを振り返りの機会と捉える

伝え手・受け手を「同じ目標を追いかける仲間」としたとき、フィードバックすべき内容というのは主に「目標達成を阻害する要因となるような行動」になるかと思います。

いっときの遠慮で指摘が遅れ、一緒に追いかけていた目標が達成されなかった……という結末ではあまりにも悲しい。目標を追いかける熱量が同一であれば、相手としても「早く言ってくれ!」と思うのではないでしょうか。

振り返りのサイクルは短ければ短いほどたくさんの学びを得、軌道修正しながら歩を進めることができます。フィードバックも一種の振り返りを促すツールと思えば、「ただ嫌なことを言う」感覚よりは積極的に伝えられるようになるはずです。

伝え方の工夫:事実と見解・感情を分ける

言わずもがなではありますが、フィードバックは相手の人格や性格に対して行うのではなく、行動に対して行うもの。そして実は、「ズバッと指摘しなければならない」ということもありません。大事なのは、「相手の行動」と「それによって起きたこと」の共通認識を持つこと。それが「良し」なのか「悪し」なのかは、判断基準を共有できて初めて考えることができるように思います。例えば……

  • 期待を満たすような行動が見られない・期待を下回る行動をしている

    • その期待は本当に正しく共有できていたか?

    • 相手は、期待とのギャップを埋める行動のイメージが湧いているか?

  • 自分が・他のメンバーが不快に感じる行動が見られた

    • それによって何が影響を受けるのか?

    • 今または将来、何を毀損する可能性があるのか?

MMoT(The Management Moment of Truth)には、まずは現実を正しく見ること(この場合の「正しく見る」とは、お互いに認識の相違がない状態を目指して対話すること)が第一歩とあります。コミュニケーションとは曖昧な状態をそのままに進めることもできてしまうので、なんとなく「伝わっている気になっている」こともしばしば。この認識を丁寧に揃える作業だけで、物事が前に進み出すということもざらにあります。

コミュニケーションを通して伝え方を調整する

同じ内容でも、具体例を出したほうが伝わりやすい人、アナロジー(例え話)のほうが伝わりやすい人、答えを渡さずに問いだけ渡したほうが自分ごと化してくれやすい人、相手によって適した伝え方は様々です。まずは自分の思うまま伝えてみて、受け取られ方によって次の出し方を変える、そういう細かな伝え方のアップデートと、その過程で育まれる信頼関係こそが、相手に「この人は攻撃したくて言っているのではなく、共通の目標を一緒に達成するために言ってくれているんだな」と思ってもらう材料のひとつになるのだと私は思います。

ちなみに、私はこういうスタイルを好むというだけで、「自分はこの伝え方しかできません!でも共通の目標のために精一杯やっているので、誤解しないでほしい!」というスタンスで、むしろ相手に合わせてもらうようなコミュニケーションスタイルのマネージャーも多くいます。どちらであれ、お互いのスタンスを理解し、尊重するための対話が必要という点には変わりありません。

フィードバックのフィードバックをもらう

フィードバックとは、自分から相手(またはその逆)に一方向で流して終わり、ではありません。先の「伝え方を調整する」の例に見られるように、俎上に載せた後の工程まで含めた一連のコミュニケーション、つまりループ状のものを「フィードバック」と呼ぶのだと思います。そのループを作るためには、相手に伝えたことがどのように受け取られたかだけでなく、相手の受け取り方を見て自分がどのような感情を抱き、どのような反応を返すのか、まで含めて観察してみましょう。もし一連の流れと予想とでズレがあった場合、それはなぜなのか?にも目を向けてみると、隠されていた本当の課題に気づけたり、お互いの次のアクションに繋がる材料が見つかったりするかもしれません。

また、コミュニケーションもフィードバックも双方向のものであるとお互いに理解できれば、マネージャーからメンバーへだけでなく、メンバーからマネージャーの積極的なフィードバックも得やすくなり、より速く・たくさん成長できるチームになるはずです。

とはいえ、受け手の受け止め方も大事

ここまで伝え方の工夫を色々と書いてきましたが、ちょうど同僚の石黒さんによるステキなnoteが上がっていたのでご紹介です。私もこんな具合で、受け手にも機会を最大化できるような工夫を期待したいし、自分自身も受け手としてこうありたいと願い日々行動しています。ぜひこちらも参考にされてみてください!

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