I'm not gonna miss you taking stabs at me
子供達が小学生時代に使った、日本語の教科書がわんさか出てきた。二人とも大学生なので、もういい加減捨てようと思う。
日本では教科書が毎年配布される。新しくて、皆それぞれ自分の名前を書く。教科書に線を引いたり、メモをとることが当たり前だ。しかし私の住むドイツでは違う。言うなれば「使い古し」で、新しいものが配布されることはない。教科書はあくまで学校の所有物なので、図書館の本のように表紙の裏に大きな名前リストが貼ってあり、そこに名前を記入する。本が汚されたり壊れたら一発ですぐに犯人が分かる。親が呼ばれ、本の代金を賠償する。
私には当初これに偏見しかなくて、少し心配した。
「古いものだと、学ぶ意欲が下がるのではないか」。
幸いな事に子供たちの成績はとても良かった。毎日楽しく学校に通っていたし、何より1クラス20人ぐらいの少人数。教師たちも皆素晴らしかった。教師の質や環境など、モチベーションに関わるファクターはいろいろと組み合わさっている。たかが教科書ぐらいで気をもむ私が「持ち物重視」の古くさい昭和人間なんだと恥ずかしかった。
海外に住む邦人が日本領事館にお願いすると、毎年新しいものが配布される。かかるのは郵便代金のみ。よくよく考えると、海外まで日本の教科書を届けるなんてすごい事だ。たぶんここまでしてくれるのは日本だけ。海外に出ると日本のすごさを常に感じる。
だけど、今ある物を大事にするドイツもいいなって思うようになった。こんな大変な時代だからかもしれない。それとも自分が歳を取り、少しずつ寛容になったせいもある。
日本語の教科書と公文式のおかげで、うちの子二人とも何とか日本語がしゃべれている。書くことは苦手だし、特に漢字は小学校3年生レベルと推測。それでも私の母や日本人の友達と会話したり、電話するには困らない。教科書達よ、ありがとう。
その無料配布の教科書の上に書かれた、つたないひらがなで書かれた名前。自分の子供が書いた文字って可愛いな。棄てがたいな。その時々の記憶が甦ってきて、またペラペラと最初の一頁目から覗き込んでしまう。
日本の教科書はいつでも右閉じだ。もうそれだけで、何だか嬉しい。ドイツの本は全て左閉じなんだもん。やっぱり私は日本人。日本の教科書は特別で、違和感がなくっていい。
やっぱり捨てないで、二人に直接返すことにしよう。
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