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Vol.7 残るは借金のみ!?~シビアに計算した結果をリアルに公開!~

 絵本出版賞で「優秀賞」を受賞。「出版化推薦書」をもらい、副賞として1万円+出版化支援とのことだったのに、蓋を開けてみたら車1台買えるような見積り金額を提示してきた、という時点で、そもそもお話しにならないのですが、乗りかかった船、ということで、細かく検証してみました。
 
①著者の収支は?
 以下の表は、提示された見積りについて、まとめたものです。本の販売価格は1冊1,500円。書店への卸価格は通常7割ほどで、本の制作実費は、印刷部数にもよりますが、概ね3割程度。「本を作るにあたっては、印刷費だけでなく編集や宣伝費用ものってくるんです」とやたら強調していたので、その他諸経費を1割として、とりあえず、製作にかかる実費を定価の4割(600円)、出版社の実利益を定価の3割(450円)、として計算しました。つまり、出版社は書店に定価の7がけでおろしても、3割は儲けになる、という計算です。
 著者は初版の引き取り分を全部売ったとしても、60万~100万程度の赤字になります。増版になった場合の印税は8%、すなわち1冊あたり120円ですから、赤字分を回収するためには、追加で5000~9000冊売らないとなりません!!

※みらいパブリッシング②は著者500部引き取り。それ以外はすべて200部引き取り。以下、同。

②出版社の収支は?
 一方、以下は出版社の収支。1冊も売れなくても黒字です。売れれば更に利益は増えます。つまり、出版社は「本を作っただけで儲かっている」状態な訳です。
 「著者の方で販売計画を立てて交渉してもらえれば、もう少し割引きできるかも」という話をされていましたが、著者は初版印税0円ですから、著者がどんなに一生懸命、売る努力をしたって、売れた利益は出版社にしか落ちません。著者に赤字を負わせた上に、自分達をもっと儲けさせろ!と言っている訳です。そしたらその分は値引きするぞ、と。なんとも馬鹿にした話ですね(笑)。

③そもそもの価格設定がおかしくないか?
 見積りでは1冊1,300~1,500円と書かれていましたが、カラーページの多い絵本で発行部数もそんなに多くないのに、A5版40P、1,300円はどう考えても安すぎる。ということで、上記の収支もとりあえず1冊1,500円で出しました。
 でも、実際の制作コストは1冊1,500円で収まらないのではないかと思っています。というのも、著者が支払う金額を単純に印刷部数で割って1冊あたりの単価を出すと、以下の表のようにみらいパブリッシングで出す場合以外は、1冊2,000円オーバーと、実売価格以上の値段になってくるからです。
作った時点で既に赤字の本なんてありえませんよね。
 もし、仮に著者が出版社に支払う金額で、引き取り部数分(200~500部)を自費出版したとしたら、1冊あたりの単価は3,000円~6,000円!というとんでもない金額になります。つまり、自分で引き取り部数分を自費出版した方が絶対的に安上りということです!

 ここで見えてくるのは、
・この出版社は、実際の本の価格に収まらない部分の金額も著者の負担として上乗せして、どうあっても自分たちは損をしないラインの見積りを出している。
みらいパブリッシングで出せば、初版でたくさん刷ることができ、実際の本の制作単価もより安くなるので、出版社の実入りが更に大きくなる(印税の支払いもないため、売れた利益も全部出版社のもの!)。だから、やたらとみらいパブリッシングからの出版を押してくる
ということ。
 
 結局のところ、著者の利益なんて、そもそも考えてくれてないってことです。有料の「えほんのがっこう」の宣伝メールがしょっちゅう来たりするところからも、結局は素人をターゲットにしているんだなということは感じていましたが、こうして数字で検証してみると、かなり、えげつない(笑)。
 売れるかわからない本を出すリスク 、というのもわかりますが、にしても、「まずは赤字で出せ」というのはね…。

 「うちは海外の出版社からのオファーも多く、海外での出版を果たされた方もいる」、「2作目からは作家さん扱い」、「既に2作目、3作目を出された方もいる」といった、明るい未来を匂わせる言葉をちらつかせていましたが、結局のところ、増版するかしないかも、2冊目出すか出さないかも、権限をもっているのはあちらですからね。
 
 大体、1冊も売れなくても利益になるなら、熱を入れて宣伝なんかするとは思えない。だって、実際問題、編集・宣伝広告費は「やればやるほど出ていく」訳で、逆にやらない方が利益率は上がる訳ですからね。
 恐らく、大賞受賞作とかに関しては、製作費も全部出版社が持つので力を入れて宣伝もするんでしょうけど、他の作品に関しては、「どれだけ著者が払ってくれるか」や「どれだけ著者が自分で売ってくれるか」にかかっているんじゃないかなー、と
 
 で、ちょっと調べてみたら、やっぱり、「絵本出版賞から誕生した作品」という新聞一覧広告の中に「受賞していない作品」もさりげなく混ざっていることがわかりました。ネットでその作品について調べてみたところ、その作はモモンガプレスからの出版で、費用に関しては1,045,000円と書かれていたので、まあ、受賞作に関しては少しは割り引いているのかな、とは思いましたが、いずれにしても赤字見積りですからね……。
 ついでにもうちょっと調べてみたところ、「受賞はしませんでしたが『推薦作』ということで連絡もらいました」というブログ記事も見かけましたので、金さえ払える人なら、いくらでも本にしてくれる会社なのでしょう。つまるところ、「ほとんどの作品は実質的に自費出版」の作品、ということが、確認できた次第です。


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