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あやまりたいはなし
アスペルガーは時として、ナチュラルに非人間的な行動をとる。
私がまだ、発達障害だと気づかなかった20代のときのはなし。
それは後の「バレッタ事件」となるエピソード。
私は20代のとき、会社員をしていた。
同僚の三浦さんは正義感の強い、人情のある熱い女の人だった。
三浦さんは私の誕生日に、プレゼントをくれた。
私は「三浦さんありがとう。今あけてもいい?」と言い、三浦さんはうなづいた。
小さな包みを開けたら、中には髪をとめる「バレッタ」が入っていた。
先にお詫びを言っておく。
三浦さん、30年前のあのときは本当に申し訳ありませんでした。
これも保身のために先に言っておくけれど、そのバレッタは私のお気に入りになり何年も大切に使いました。(たぶん保身になってない)
私は、やらかした。しかもナチュラルに。
そのバレッタのデザインは今でもよく覚えている。
シルバーの素材に、パールがほどこされていた。
ここから先がほんとにひどい。
「あー、かわいいバレッタだぁ!・・・このパールがなかったらもっとかわいいね」
と、私は言いながら
三浦さんの目の前で、ペンチでパールをパチンパチンと切り取っていった。
パールのバレッタは、シルバーのシンプルなバレッタになった。
アスペルガーには共感性がない、という特性がある。
それをしたら相手がどう思うどう感じるか、想像できない。
私はパールを切り落とし、とても満足だった。
なんなら、こんなによいデザインになったから毎日お気に入りで使えるね、よかったよかったと本気で胸をなでおろしていた。
そのときの三浦さんの顔を覚えている。
口が半開きで、眼はうつろ、言葉にならない「…あ~…」って感じの顔。
ただ黙って私の愚行を見ていた彼女の顔は、当たり前だが笑ってはいなかった。
今では、わかる。
それがどれだけ人でなしか。
そのエピソードを思い出すたび、私は自分を呪う。
その半年後、私は同僚の鈴木さんにも、やらかした。
それは後の「どうせ泊まるならペンションそっちよりこっちの方がいいよね事件」となる。
このエピソードもひどすぎて、もう手が震えて、筆がすすまない。
だからもう書かない。
鈴木さん、あのときは本当に申し訳ありませんでした。
なにが怖いかって、発達障害が自分の特性に気づいてないってこと。
『アスペルガー症候群はコミュニケーション能力や社会性に障害があり、対人関係が苦手という特徴があります。』
ってよくあるアスペルガーの解説だけど
終始こんな感じだから人間関係がうまくいくわけがないし
なにより無自覚に人にイヤなおもいをさせてしまう。
世間では、多様性、みんなちがってみんないい的に、こちら側に歩み寄ってくれているけれど
なんだかそれって、当事者の私は申し訳なく感じる。
無自覚ってやったもん勝ち。
それってまったくフェアじゃない。
発達障害当事者は自分の特性をしっかり認識し、世間さまがこちら側に歩み寄ってくれているからこそ、
当事者もできるかぎり自覚的に世間さまに寄せていくことが多様性の共存だと思う。