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ドヤ顔で魚と水温とカネを語れるようになる記事(魚と水温 フランクver.)
水温という魚と生きようとするやつに漏れなく絶対につきまとうやつ。
全国の魚系おじさんが口々に言う。水温だけは必ず見とけ、水温変わったから魚いなくなったんだ、水温高いといっぱい食うんだ、水温で成長コントロールしてんだ…これだけ言われたら水温がすごく大事なものだってことは、嫌でもわかるサルでもわかる、「魚の飼育は水温が9割」「けっきょく、すいおん」なんて啓発本が出てもおかしくないかも。
でも全国の魚系おじは知っているのだろうか…
水温がどうしてそんなに大事なのか、魚にとって水温って何なのか?簡単そうなのに、ドヤっと答えられるかというと実はそうでもなかったりする。一度調べなおしてスラスラ話せるようになりたい。
そりゃ魚が変温動物だからよ
なんで大事かって…
そりゃ魚は変温動物だから。
まわりが冷たくなると体温が下がるし、まわりが熱くなると体温が上がるのよ。まわりに流されるサイマジョと違って生き物としての体質だから自分で体温を選んで決めるってことはそもそもできない。
わざわざそんな体質で生きてきたのには意味があるわけで、体温を保てないぶんその裏にはメリットがある。オモテが自分で体温調節できないならばウラから見れば…?
自分で体温調節するエネルギーがほとんど要らないってこと。
一説によると体重あたりのエネルギー消費は我々人間の5~10分の1まで節約できるらしい。自分が食べる量をイメージしてエサあげて、えっこれで満腹なの?…あれっ、まだお腹減ってない?…と、思うのはこれが理由。必要なエネルギーが少ない分、食べなければならないエサの量も少ない。
食べる量が少なくてエコだね。
「自分も少ない量で満足できれば困らないのに~」と思ったり。
そして変温動物には、もっとも得意とする温度の"範囲"、適水温がある。そこでは魚が元気にすくすく育っていける。ただしこれにも裏面があり、高いエネルギー効率の代償に、特定の温度範囲の中でしか正常に体が機能しないという弱点がある。
得意な環境でしか輝けないのさ。
冷たすぎる水温では、代謝が遅くなって生きるのに必要な身体活動をするエネルギーすら生み出せなくなり、死んでしまう。熱すぎる水温では、逆に代謝が過剰になってエネルギー消費も必要以上に。体内にあるリソースが枯渇して死んでしまう。適水温の範囲内でも水温が急に変化すると身体機能が正常に働かなくって死んでしまう。魚種や環境にもよるが、3~5度以上の変化が急におこるとリスクが高い。
適水温外だとスペランカーばりに弱いのだ。
魚にとって自分の得意な水温環境にいることは文字通りの死活問題。
いや待て、適水温って結局何度なのか?
それを教えてくれという話だ。
結論…魚による。環境による。成長段階による。生息場所による。
そりゃそうだろう、じゃあ具体的にどう調べると確かな情報が出てくるのか。
正確な情報をさがすならば、その魚について研究された論文が情報源になる。Elicit: The AI Research Assistantという論文検索サイトを使ってみよう。英語限定だが知りたいことを質問すればその答えになる論文を見つけてくれる。ザックリした要約もオマケでついてくる。
シンプルに適水温を聞くとすれば、『「魚の名前」の適水温は何度?』
➡"What is the ideal water temperature for [name of the fish]?" 。
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おおよそ13-15度が適水温という回答が出てくる。それがどんな研究で示されたのか?何度まで生存できそうか?といったことも併せて示してくれる。
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ただし、AIが見つけてきた情報だから、より厳密・正確な情報として取り入れるには情報源の論文を読んでおくことは外さない方がよい。話が違うんだが!?とElicitに文句を言っても丁寧にAI検索の弱点についての研究を返してくれるだけだろう。
自分が扱う魚、責任は自分に。
熱いと魚は息できない
「酸素」は実のところ水温と関係がある。
私と小鳥と魚と、みんなおなじで、
酸素無しではみんな生きられない。
この酸素が水に溶ける量は、水温によって変化する。水が熱くなればなるほど、溶ける酸素は減っていく。魚はエラで水から酸素を取り入れるから、そもそも溶けている酸素量が少ないと窒息して死んでしまう。
たとえ適水温の範囲内であっても、陸上養殖みたいに魚を密に飼育する場合や、水槽内の微生物が増えた場合には、水に溶けている酸素の量が足りなくならないか注意しなければならない。
水温を見ないと稼げない
魚にとって水温とは?を見てきたけれども、ここまで水温が大事とされるのは結局育てるヒトにとっても影響が大きいからだ。ご存知のとおりヒトという生き物は"収益"がからむと途端に関心を高める志向性をもっている。
魚のエネルギー消費や成長が水温に影響されるということは、その特性を利用することで出荷時期をコントロールしたり魚の産卵時期をコントロールすることが可能ということだ。
水温を上げて魚の代謝を活発にしてやれば、食欲を増進して、より速く魚を大きく育てる逆ライザップになる。ある程度魚が大きくなったら逆に水温を低く保つことで性成熟を防ぐということも行われている。魚は性成熟すると卵や精子をつくるため多くのエネルギーを割くようになるから、魚肉の質が落ちるといわれている。完全養殖や種苗生産をする場合には、水温を高めることで意図的に魚に卵を産ませようとする方法もある。
魚は結果にコミットしないが、人間は結果にコミットしなければ稼げない。
それに、魚を商品として売るには市場の流通量や需要を予測しながら価値の高まるタイミングで出荷したい。成長に影響する水温をコントロールすることはそれを狙って調整していることにつながっているのだ。
生き物を商品とするにはどうやっても不確実性がつきまとう。陸上養殖だって自然界よりもコントロールが聞くだけで、不確実性の塊みたいなもの。魚自身の特性を研究し、それを利用することで安定感や効率を高めてきた歴史があるということを忘れてはいけない。先人たちに敬礼。
水温を見すぎても稼げない
しかし、水温維持には金がかかる。
陸上養殖や水槽飼育の場合、水温ヒーターとかクーラーを設置したり、遮熱性の高いもので水槽を覆ったりといった設備面で工夫する。外気温が寒ければ寒いほど、温かい水温に維持するための電気代がかかる。逆も然り。魚を死なせてしまうのは間違いなく避けたいが、収益を上げるために成長を早めようとした結果、電気代の支出が膨れ上がって赤字…とはしたくない。
予想される電気代(円)
=ヒーター消費電力(W)×稼働時間(h)×地域の電気単価(\/kWh)÷1000
このコストを課題としている事業者は数知れず。これからの研究のタネである。
まとめ
結局水温ってなんで魚にとって大事なんだろうか?
① 適水温かどうかが死活問題だから
② 酸素は熱いと溶けにくく、窒息を起こすから
③ 水温管理で稼ぎをコントロールできるから
④ 水温管理にかかるコストも考えないとだから
改めて振り返るとどこかで聞いたことのある話ばかりだが基礎ってそういうものだ。何度も聞いたことがあるはずなのに自分でパッと説明しなおせるかというとそんなこともない。
この記事の"内容"は以前投稿したものと実は同じ。でも新鮮に呼んでもらうことを繰り返さないとヒトは覚えられないもので、文体を変えてみたのである。
これからもぜひリピートして読んで自分のものにしてもらえればと思う。決してアクセス数を稼ぎたいという意図はない、水温ドヤ顔説明おじさんが増えればいいなと思っているだけで。
魚とそれを育てるヒトにとって、
水温が果たす役割はきっとこんなものじゃない。
有識者の方、教えてください。
あれ、水温ってなんで大事なんですか?
↓
*キレイにまとめてある方もあります