栞の華…【詩】
古い本に隠れていた想い出
きれいに二つ折りになったメモは
懐かしい初恋の詩の走り書き
想い出す初恋の詩の栞…
想いを寄せたあの人に借りた小説に
気持ちを伝える言葉を栞に書いて
小説に挟み先輩に返したその日の夜
ドキドキしながら
あの人が気付いてくれるのを待っていた…
あの人の目に触れることなく
暫くは、ひっそりと開花を待つ栞の華
栞の華は開くことなく
あの人の目に触れることなく隠れたまま
不意に想い届いた秋の夕暮れ
私から求めた初めてのキスは
夕陽が染めた橙色のあの人の部屋で
仄かな柿の味がした…
愛の言葉を書いた栞の華は
暫くしてあの人に見つかり
春の華と共に咲き乱れ
夏の暑さに木陰で揺れながら
秋の紅葉に色付き私は頬を染めた
二人の温もりで冬を過ごして
六年もの間咲き続けた栞の華…
春爛漫のはずの季節に
不意に萎れた栞の華…
あの人は春の蝶のように
別の華へと飛んでいった…
古い本に隠れていた想い出の
栞代わりの初恋の詩…
再び古い本に挟み想い出を閉じ込めた…
ほろ苦い想い出をしまいながら
私は今の幸せを噛み締めた…