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「『中抜き』ってもう限界なんじゃないか」と思った話

こんにちは。国民民主党が躍進を続けていますね。

あまり選挙や思想の話はするつもりがないのですが、これから先を生きる世代や、働き続ける世代の国民が、少しでも優遇される世界になっていってほしいと思う今日この頃です。

ところで今日は、アルバイトをしていた頃に体感したことをふと思い出したので、書き綴っておこうと思います。

バイトで知った社会の複雑さを綴ります。
要は中抜きの話です。

追記: ごめんなさい。調べ直したら、正確なビジネス用語の「中抜き」と、今回私が言う「中抜き」は意味が異なるようでした。

私の言う「中抜き」は、仲介業者がマージンを取ることです。ビジネス用語では業者を省き直接売買することを「中抜き」と言うようです。


「中抜き」観測の瞬間

コロナウイルスが世界を恐怖で席巻していた頃、私は学生で、オンライン授業の合間に、コロナ関連の書類検閲のアルバイトに参加しました。

業務内容は以下です。

コロナ禍で集客に大ダメージを受けた飲食店がある。飲食店は感染症予防対策を行っていることをお客様に示し、集客を取り戻したい。役所等は飲食店の経済回復のため、立ち入り検査等を行い、問題がなければステッカーを配布する。

その第1段階として、インターネット上で申請のあったレストランについて、あらかじめ撮って添付してもらった写真などを目視し、マニュアルと照らし合わせながら、感染対策に問題はないか事前審査を行う、というものでした。

この仕事は、時給が結構良くて、当時50人くらいが参加していました。

アルバイトの初日に、作業場所である会社Aの会議室に集まりました。
その時、依頼主の役所と、作業場所である会社Aの間接的な関係性について、ふと疑問に思いました。

確か募集要項では、「役所の審査業務」と書いていたけれど、私達は直接市役所等に雇われた訳ではありません。

「仕事の打ち合わせに行ってみたら、求人にあった名前の企業ではなく、契約先は名前を聞いたこともない下請け会社だった」というパターンは、派遣会社等で働いたことがある方はよく経験しているようですが、当時の私にとっては初めてのことだったので驚きでした。

が、特に業務内容自体は不安になるようなこともありませんでした。業務の概要を教わり、審査マニュアルについても丁寧な説明を受けました。

本当はそこまで説明してくれる会社の方が少ないと思うのですが、雇用主を知ることで緊張感を高める目的もあってか、部長(か課長か忘れましたが)は、ついでに「私達が今誰に雇われているか」を教えてくれました。

内容を要約するとこんな感じでした。

(政府が役所等に通達→)
役所: 業務量過多のため旅行会社に外注
→旅行会社: 業務量過多のため、コスト削減のため会社Aに外注
→会社A: 業務過多のため、コスト削減のため派遣会社等に依頼
→派遣会社: アルバイトを募集

「要は、あなた方は役所に雇われているということですので、責任感を持って取り組んでくださいね」とその時言われたのですが、正直ピンときませんでした。私達の取り組んだ仕事が「役所がしました」という体になるだけで、別にそれが何なのでしょうか。

むしろ私が気になったのは、中抜きの方でした。
本来役所がするはずの仕事に、一体、どれだけの企業が介在しているのでしょうか。

勿論、「役所は仕事過多なんて言わずに残業しろ」なんて言っているわけではありません。外注しないと業務が回らない、は確かに役所や企業の視点で見れば、致し方ないと思うのです。しかも今回、私達の時給も割と良かったので、中抜きの闇の深さを無視すれば、正直全然長期でやりたいくらい良い待遇のバイトでした。

けれども、上の関係性を見る限り、旅行会社はほとんど何もせずに仕事の仲介だけして報酬を得ているわけですよね。ぼろ儲けじゃないですか?ほとんど何もしていないのに。実際業務にあたるのは企業Aと私達アルバイトなのに。旅行会社のその報酬は何のためにあるのでしょうか。紹介料?

「ああ、これが噂の『中抜き』というやつだ」と、その時私は思いました。人生初の中抜き観測の瞬間です。ちょっと興味深くさえ思いました。


遠すぎる依頼主との距離

初日の研修ですが、マニュアルの審査項目は50くらいあったので、業務内容やマニュアルの説明を聞くだけで1日が終わりました。

が、次の日もまだPC操作について研修の続きを行うとのことで、説明を聞く私達以上に、説明役の人が疲れているような気がしました。

業務開始から一週間ほど経った頃、滞りなく業務を進めていたのですが、また疑問というか、異議を申し立てたい瞬間が訪れました。

急に部長?課長?から、「市役所から指示があったため、マニュアルの内容を修正します」と言われたのです。その内容は、現場で作業をしている私達にとっては首を傾げるような指示でした。

例えば(バレるとあれなので少しフェイクを入れますが)、「アルコールスプレーの容器に『%』と『店名』を明記していない店は、全て申請を却下する」というものです。

その理論で行くと、体感で、申請してくれた飲食店の9割以上は却下になります。

これまで私達は、アルコールスプレーは市販の種類が多すぎることもあり、旧マニュアルにあった通り「なるべく緩い基準で」審査をしていたのですが、中抜きのその先にいる、審査内容の実情を何も知らない役所から、それまでと180度異なる指示を出されたわけです。何故その指示が急にされたのかもよく分かりませんでした。

飲食店の応募件数は確か全部で15000件くらいはあったので、今からどれだけ審査しても、トータル1500件程度しか審査は通せない。9割以上のお店は再申請、再審査の二度手間になります。

また、「結局却下になるのを分かっていて、あと49項目チェックしても無駄じゃん」なんて思いながら、変わらず全項目、目視してチェックを入れないといけません。

「役所から急に言われて、こちらも従うしかないのでその方針でお願いします」と言われ、まあ私達もトップダウン方式で(中には反論していた人もいたのですが)、その日は指示通りに業務を進めました。

が、次の日。また業務の風向きが変わりました。

役所から「審査合格率が少な過ぎる」と言われたとのことで、前日のアルコールスプレーの指示は無かったことになりました。二転三転です。

飲食店の審査が通りやすくなって良かったですが、前日多分に却下された飲食店のデータ修正は、1件ずつ全て会社Aの社員さんが寝ずに行った、とのことでした。可哀想に。私達アルバイトは定時で帰りますが。

私個人単位で考えると、ただ時給の良かった仕事の思い出なのですが、同時に社会の複雑さや非効率性を垣間見た瞬間でした。


中抜き社会のデメリット

こういうことを目の当たりにすると、「中抜きって、お金は余分に発生するのに、指示や現場のコミュニケーションが間接的になる分粗雑になって、現状、結局依頼した側にとっても下請け側にとっても、デメリットの方が上回っているのではないか」と思えてしまうのです。

自分達のキャパシティ以上の仕事を抱えた時、そのしわ寄せは、外注先(下請けの下請け)が受ける。

外注や中抜きについて、私の体験したことはあくまで社会の縮図で、実際は多くの企業で同じことが起きているのではないかと思います。

実際今勤めている塾も、もっと言えば他の個別塾や家庭教師チェーンなんかもマージン制度がありますし。(マージンについては、過去の記事もどうぞ。)


そういえばコロナ禍の療養先についても、中抜きで話題になったニュースがありましたね。


現時点でもデメリットの目立つ「中抜き」という利益獲得形態ですが、そもそも外注、仲介、派遣など名の付くものはすべて同義に思えます。そもそもの歴史が深すぎる。

一度それで業務が問題なく完了し、報酬を得てしまえば、次回もその方式で進んでいき、その業態で中抜きが常態化していく。それに目を付けた企業がライバルとして仲介などの中抜き産業に参入し、どんどん依頼料や報酬がよく分からない企業に分配されていく。

一度それが始まったら、きっとどこかが破綻するまでそのまま回っていくしかないんですよね。

当然その企業に勤めている人は、その企業を守りたい。そして破綻するのは零細企業や中小企業、収入の少ない人達からでしょう。

それを解決するほどの経済のアイデアは私には無いので、この経済の循環をただ内側から眺めるだけにはなってしまいますが、このままこれがエスカレートするとどうなるのだろう、と憂慮してしまいます。

いつか中抜き規制法とか、下請けを守る法律なんかができて、一番働いている労働者が搾取されずに、彼らにたくさん利益が回るような社会になったら良いですね。

とはいえ何もできないので、今日も憂いては空に願うだけです。来年の七夕に書こうかな。壮大過ぎる願い。多分書かない。とりあえずお金が欲しい。


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