獣医ミクロ経済:動物の飼育頭数からみる獣医師の今後
キーポイント
・犬の飼育頭数は、新型コロナウイルス感染症から増加傾向
・ひと世帯当たりの動物病院代は2005年から右肩上がり
・2016年頃から肉用牛や肉用鶏は飼育頭数が増加している
はじめに
近年、小動物の数は減少傾向にあると言われ、家畜も減少しているという風潮があります。これは獣医師の需要が減っていることになるため、今後、獣医師を目指す学生さん達には懸念される事態かと思います。しかし、政府の統計調査を調べてみると、ここ数年は盛り返してきている様子があります。今回は「犬の飼育頭数」「ひと世帯当たりの動物病院代」「産業動物飼育頭数」から、獣医師の今後について考えていきます。
なお、ここで紹介するグラフなどは政府統計調査などから筆者が作成しました。
犬の飼育頭数の推移
上の図は日本の犬の飼育頭数の推移です。日本の犬の全頭が狂犬病登録しているわけではなく、ペットフード協会が調べている飼育頭数の方が正確かもしれません。実線が飼育総数ですが、減少傾向が続いています。一方で点線の新規に飼育した犬の数は2018年あたりから盛り返しています。コロナ渦ではインドアブームでペットを飼う人が増えたということがありますが、明けた2022年頃もその傾向が続いている様子です。人口は減っていますので、このまま新規で犬を飼う人たちが増えていけば、人口当たりの飼育頭数は増えていくかもしれません。
動物病院代の推移
日本の犬の総飼育頭数は減っていますが、医療費はどうなっているでしょうか。2005年からの統計を見てみると、ひと世帯当たりの消費総支出はどんどん減っているのに対して、動物病院代は右肩上がりです。時代と共に伴侶動物が”番犬”ではなく”家族”になるにしたがい、動物にかける医療水準や費用が増加していると考えられます。動物が少なくなっているにもかかわらず動物病院代が上昇していることは獣医師に対する需要が高まっていると考えられないでしょうか。
産業動物の飼育頭数推移
産業動物の飼育頭数も2005年から2015年頃まではどんどん下がっていました。しかし、その後2016年頃から底打ちし、特に肉用牛やブロイラーではわかりやすく増加傾向にあります。農家さんの戸数は減っており、逆に大規模農場が増えることでこのような傾向があるのかもしれません。このデータからも獣医師の需要は今後高まる可能性があります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。20年のスパンでみると悲観的な状況ではありますが、ここ数年は状況が盛り返しているようです。獣医師の仕事は、小動物でも産業動物でも飼い主さんや農家さんのサポートとなります。その需要を獣医師がコントロールすることは難しいです。日本経済が良くなることで獣医師の需要も回復していくのではないかと思います。個人的には明るい未来を信じたいと思います。
これから獣医師を志す学生さん達や獣医学生さんは今後の進路などで参考にしてみてください。