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“これって変なの?”ASD本人もビックリする自分ルールの正体
「なんで自分はこんなにこだわってるんだろう…?」
「他の人は気にしないみたいだけど、私だけ、このルールを守らないと落ち着かない…」
――もしそう感じたことがあるなら、それはASD(自閉スペクトラム症)特性による“自分ルール”かもしれません。ASDの人は独自のこだわりやマイルールを持つことが多く、しかもそれを守れないと大きな不安を覚えることがあるんですよね。今回は、自分でも「え、こんなことで!?」と驚いてしまうような“自分ルール”の正体や、その付き合い方についてお話しします。
1. ASDの「自分ルール」って何?
(1) 一種の“安定剤”としてのルール
ASDの特性には、同じパターンやルーティンを好むという傾向があります。毎回同じ手順を踏む、いつも同じ場所に物を置く、特定の順番で行動しないと落ち着かない――など。それが外から見ると「そんなに厳密にしなくても……」と思われがちなルールです。
例:食事は絶対に白いお皿で食べたい
例:カバンの中身は必ず決まった順に並べないと気が済まない
例:通勤経路を一度決めたら絶対に変えない
(2) ASD脳が混乱を避けるための仕組み
ASDの人にとって、予測不能な変化や想定外の出来事が大きなストレスになる場合が多い。そこで“自分ルール”があると、行動や環境が安定し、余計な不安や混乱を回避できるんです。
「このルールを守っていれば、失敗や不安が起きにくいはず」と無意識に思っている。
2. 「これって変なの?」と自分でも思うワケ
(1) 周りとの温度差
自分では「これを守らないと落ち着かない」と思っているのに、周りは「え、別にそこまでやらなくても問題ないでしょ?」となりがち。
友人や家族から「そんなこと気にするの?」と言われると、“自分だけ変なのかな”と感じる。
ASD本人も客観的に見て「こんなこだわり必要?」と疑問を持つことがある。
(2) 失敗や不安を回避するために強化された結果
それでもマイルールを捨てられないのは、過去に一度でもルールを破って混乱や失敗を経験したことが大きい場合があります。たとえば「カバンをいつもと違う順番で片づけたら必要な書類を忘れた」とか、そんな体験から「やっぱりルールを守らないとまずい」とさらに強化されるんです。
3. ASD特有の自分ルールをどう活かす?どう緩める?
(1) すべて否定する必要はない
まず大前提、“自分ルール”自体は必ずしも悪いことではない。それがうまく機能していれば、ASDの人の生活や仕事を安定させる大きな助けになる。
例:決まった手順で朝支度をすると準備のミスが減り、遅刻しなくなる
例:何時に寝て、何時に起きるか厳密に決めることで十分な睡眠を確保
(2) 問題は「厳しすぎるルール」で自分を追い詰めるとき
一方で、自分ルールが過剰になると、急な変化や柔軟対応が必要な場面で大きな苦痛を伴う。
急用が入ってルールを破らざるを得ない→パニックや強い不安
他人との関係で衝突→「なんであの人こんなに頑固なの?」と思われてしまう
対処のヒント
ルールの中でも「絶対守りたい必須ライン」と「守れなくてもなんとかなるセーフライン」を分けておく。
すべてを厳格にやるのではなく、優先度をつける。
4. 自分ルールを外に伝えるときのコツ
(1) “Iメッセージ”で説明する
「○○じゃないと無理なんです!」と言うと、相手に「強制されている」と思われるかも。だから**“Iメッセージ”**で「私の場合、これをしないと混乱しやすくて困るんです」と、自分の困り感として説明するのがポイント。
例:「この順番でやらないと、頭が真っ白になってミスが出ちゃうんです」
例:「こだわりなんですが、こうすると心が落ち着いてパフォーマンスが良いんです」
(2) 合理的メリットを伝える
もし仕事関係なら、「こうしたほうが結果的に効率が上がる」「ミスが減る」など、相手にとってのメリットを一緒に示すと受け入れられやすい場合もある。
5. 自分ルールが辛くなったら…緩めるテクニック
(1) “部分的に変えてみる”実験
一気にルールを崩すのは怖いけど、**“一部だけ変えてみる”**ならまだ挑戦しやすい。
例:カバンの中身を並べる順番を少しだけ変えてみる。
例:いつもと違う皿を使う食事を週1回だけやってみる。
どうなるか観察
「意外とそれでも大丈夫だった!」と気づければ、“自分ルール”が絶対じゃないと思える。もし混乱が起きそうならすぐに元のルールに戻してOK。小さな実験が恐怖を軽減します。
(2) “変えられた”成功体験を記録する
ASDのこだわりを緩めるには、“変更しても大丈夫だった”という安心の記憶があると強い。
何かいつもと違う行動をしたとき、上手くいったらそれをノートに書き留める。
「このルールを変えたけど、特にトラブルなし。意外と平気だった」と客観的に記しておくと、次回“もう少し変化に挑戦してもいいかも”と少し楽になる。
6. 周りの理解が得られないとき
(1) 説明しても「変わってるね」と言われる場合
残念ながら、すべての人がASD特性を理解してくれるわけではない。そんなときは自分を責めず、相手を恨まず、距離を取りましょう。
相手が協力的じゃないなら、すべてを分かってもらうのは無理かもしれない。
無理に合わせてルールを捨てると、自分が苦しくなるだけ。
(2) “助けてくれる人”を探す
一方で、「こういう事情でマイルールがあるんだよね」と打ち明けたら「全然いいよ、協力するよ」と言ってくれる人もいるはず。身近に理解者が一人いるだけでも随分と生きやすくなる。
職場なら信頼できる上司や同僚
プライベートなら家族やパートナー、友人など
7. まとめ:“自分ルール”は変じゃない、ただ自分を守るための仕組み
ASDの特性で生まれる“自分ルール”は、外部から見れば「なんでそんなに厳密に?」と思われがち。でも、本人にとっては不安や混乱を防ぐための大事な仕組みなんですよね。
問題は、「そのルールが生活を助けているか、それとも本人を苦しめているか」ということ。
もし苦しいなら、小さく実験しながら緩めてみる、あるいは周りに理解を求める方法を模索するといい。
すべてを捨てる必要はなく、優先度をつけて「これだけは守る」「これくらいなら変えてみよう」と使い分けてもいい。
「これって変なの…?」と感じても、あなたのこだわりがあなたを安定させているなら、それは大切なこと。周囲の理解を得られるよう工夫しつつ、必要なら一部をアレンジして自分が生きやすい形に調整していく――ASDならではの柔軟なサバイバル術です。周りが分からなくても、自分にはちゃんと理由がある。そこを大切に、無理なくやっていきましょう。