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「ストレスチェック」には意味がないのか?

「ストレスチェック」の義務化が話題となっています。
現在は努力義務とされている従業員50未満の事業所でもストレスチェックの実施が義務づけられるそうです。



「ストレスチェック」には意味がない?


「ストレスチェック」と言えば、受けても意味がない、高ストレスでも何の対策もされない、ストレスチェックを受けることがストレスと散々な言われようです。
高ストレスにチェックが入ると産業医面談の希望の有無を聞かれますが、私が言うのも何なんですが、今まで受けたことがありません。
形骸化していますよね。

特に病院の勤務医なんて、労働者としての立場がものすごく弱いので、いくらストレスが高くても、適度に休息をとるようにと言われておしまいです。
それが実際の労働環境の是正につながるとか、配慮されるとかそんなことは全くないわけですね。

じゃあ、やっぱり「ストレスチェック」には意味がないんじゃないの?という話になってしまいますよね。

まあそれはその通りです。
現状あんまり意味があるとは言えない。


ただ、方法自体にはもう少しやりようはあると思うんですが、ストレスが健康に悪い、というのは確かにその通りなんですね。
では何が問題かというと、企業側も労働者側も考え方をお互いにアップデートできていないのが問題だと思うんですね。
このお互いにというのがポイントだと思います。

企業側の問題点

例えば、企業側からすると「ストレスチェック」を実施して何か意味があるのか、という話になりますね。
企業はもちろん利益を追求する場であって、社員の健康を守ることは二の次であるということは言うまでもありません。
これを言うと反感を買いそうですが、本音と建て前を使い分けているだけであって、当然ですがどんな企業でも利益にならないことはする意味がないと思っていると思いますよ。

高度経済成長期はよかったんです。
栄養ドリンクを飲ませて社員に残業させまくって、働けなくなったら首を切って新しい社員を雇えばよかった。
でも今はそうじゃない。

それは人権意識が上がったというのもそうなんですが、単純に労働者の価値が上がったということ。
それはもちろん労働人口の減少ということでもありますし、あとは働ける上限の年齢が上がってきているということも挙げられます。
定年延長の流れが高まっている以上、健康に問題を抱えながらそれでも働かざるを得ない人間の方が多くなってきている、というのが実情だと思います。
そんなにずっと働き続けなければならない社会というのはどうなんだという気もしますが、日本がそういう社会を選択したんだからしょうがないですよね。

健康経営とプレゼンティーズムについて



つまり「健康経営」なんてのが最近になっていろいろ言われていますが、実情としては「健康に働き続けよう」というよりも「健康じゃなくなっても働き続けられるようにしよう」といった方が近いのではないかと思います。

で、それとストレスチェックと何の関係が?と思うかもしれませんが、産業医大の研究でこんな論文がありまして、端的にいうと「ストレスチェックを用いた高ストレス労働者と医療費、プレゼンティーズムの関係について」述べたものになります。

プレゼンティーズムとは「健康状態が理由で生産性が落ちている状態」を指します。
これを放置するとアブセンティーズム:「会社を欠勤している状態」に至ります。
つまりストレスチェックにて高ストレスに分類される労働者は将来的にプレゼンティーズムのリスクになり、生産性の低下につながる=企業にとっても不利益となる、と言っているわけですね。

今の社会は病気になったからといって企業側が簡単に解雇できるような社会ではありませんので、やはり企業側も労働者のストレスを軽減させるように努めることが、ひいては企業の業績アップにつながりますよということですね
(まぁこの論理自体は、健康経営コンサルタントのセールストークとして使い古されている感はありますが、、)

労働者側の問題点


次に労働者側にも問題はあるよね、という話をします。
これも勘違いしやすいポイントですが、義務化されるのはあくまでストレスチェックの実施であって、その結果高ストレスと判断された労働者が面接を行うかどうかは労働者の意向を受けて、となります。
ストレスチェックはあくまで、気づきを与えるものであってその結果をどう解釈してどう判断するか考える余地があります(こういう玉虫色の内容だからこそ形骸化しやすいとも言えます)。

ただやっぱり、世の中の労働者は自分の健康の状態に興味なさすぎなんじゃないの?とは思います。
「どうせ会社は何もしてくれない」ではなくて、あなたが動かないといけないのです。
自分が高ストレスの状態にあることが自覚できたならば、そのストレスを軽減するためにはどうすればいいのか、生産性が落ちているのならば生産性を高めるために何ができるのか、やはりある程度は自分で判断しなければならないと思います。

もちろん企業側は、上司は、あなたが高ストレス状態を放置した結果プレゼンティーズムに至る可能性が高いのであれば、積極的に面談を勧めたり、相談に乗ったりとしようとする努力は必要でしょう。
しかし、それはあくまで企業のため、会社のためにすぎません。
結局健康を害して困るのはあなた自身ですので、そこはやはり自覚的に動く必要があると思いますよ。

まとめ

  • 「ストレスチェック」の実施が全事業所で義務化されるが、課題は多い

  • 高ストレスはプレゼンティーズムの原因となるため企業側の生産性向上のためにも積極的に介入する必要がある

  • 「ストレスチェック」の結果を受けて労働者自身も積極的に高ストレス状態を改善しようとする努力をする必要がある

私自身の考えとしては、現行制度に課題は多いと思いますが、「ストレスチェック」の制度自体は悪くないんじゃないかと思っています。
やっぱりストレスって気づかないうちに蓄積しているものなので、大事なのはそれをあえて言語化することだと思います。
ただ、ストレスが溜まっているから、業務量を減らしてくれとか、勤務時間を減らしてくれとか、嫌な上司を変えてくれとか、待遇を上げてくれとか、それはまた別の話ですからね。

それに、人事労務に影響するからストレスチェックに本音を書くな、なんて人もいるみたいですが、そもそもストレスチェックの内容が人事や評価に影響するなんてことはありませんし、もしそんなことがあるんだとしたらその会社はそもそもやばい会社なので辞めた方がいいですよ。

ということで、それではまた。

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