見出し画像

ワラ人形に五寸釘! カルト映画「愛の陽炎」は黒澤明監督のためのアイデアだった!

映画評論家の春日太一氏が第55回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した「鬼の筆 戦後最大の脚本家・橋本忍の栄光と挫折」(文藝春秋社)を読み終える。「七人の侍」「砂の器」「八甲田山」などの脚本を手掛けた橋本忍氏(1918〜2018年)の創作の秘密を、本人へのインタビューを中心に紐解いていく。1週間かけてじっくり読んだ。本人が高齢のせいか証言に眉唾なところがあり、当時の製作スタッフに裏取りをするなど著者の苦労が手に取るように分かる。それでも興味津々なエピソードが満載で、脚本執筆の心得などは脚本を書くためのHow to本よりよっぽど勉強になる。

日本映画ファンなら読むべし!

後半になると日本映画史上最大の駄作とも言われカルト映画化しているあの「幻の湖」(1982年。橋本氏が脚本・監督)について容赦なく話を聞いている。筆者はいろいろな原因がある中で、「砂の器」や「八甲田山」が大ヒットしたので〝慢心〟があったと指摘している。また、1986年の「愛の陽炎」(三村晴彦監督)についてもページを割いているのが嬉しい。当時アイドルとして絶好調だった伊藤麻衣子(現・いとうまい子)主演で、自分をもてあそんだ男(萩原流行)に復讐するため、丑三つ時に頭にローソク、白装束姿で呪いのワラ人形に五寸釘を打ち付ける。この映画も今やカルト化し、円盤化されず未見だった私はフィルムセンターでの上映に駆けつけてやっと見ることができた(https://www.facebook.com/share/p/15AkKQ13q4/)。もともと黒澤明監督に打診があった海外のホラー・オムニバス映画(実現せず)の題材として橋本氏が提案したものだったというのに驚いた(時代設定は平安時代から現代へと変更されている)。

筆者は主なき仕事場で創作ノートなど貴重な資料を発掘していることから、本書で触れられなかった他の黒澤作品のほか「日本沈没」や「イエロードッグ」などについての続編に期待したい(それと「愛の陽炎」をだれか円盤化してくれ〜!)。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?