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堀口珈琲研究所セミナーに行ってきた(後編)

前回は、「堀口珈琲研究所セミナーの概要」や「スペシャリティコーヒー」の基本的な要素を語りました。
今回はいよいよ、
こおひいの評価と言語化について進んでいきたいと思います!

前回記事はこちら


5.テイスティングの方法

喫するこおひいの品質が良いのか悪いのか——?
点てるあなたの抽出は適しているのか——?
或いは、焙煎具合は豆の個性を活かしているのか——?

を客観的に評価していくためには、やはり基準音、つまりはテイスティングのスキルが必要。
というわけで、ボクが教わったテイスティングの方法を紹介します。

HORIGUCHI COFFEEチャンネル より

ステップ1:豆を挽く
文字通り豆を挽き、粉の香り(フレグランス)を確かめます。
挽き目は中挽き、ちなみに焙煎度合いは中煎りで統一されていました。

ステップ2:注湯
お湯を注ぎます。蒸気とともに立ち上がる香り(アロマ)の変化を確かめます。

ステップ3:攪拌
スプーンを静かに沈ませ、表面を軽く掻きます。表層部だけでなく奥底に潜む香りの複雑さが感じられます。

ステップ4:口にする
シュッと吸い込むように味蕾を通過させ、香り(フレーバー)を確かめます。コクや酸味、クリーンさなど、僕は口にするたびにテーマを決めながらテイスティングしました。

✏️補足「複雑さは心地よさ」
コーヒーの香り成分はなんと800種以上にもなるとか。この複雑さ(言葉にし難さ)が心地よさに繋がるらしい。香りの世界は深く、リラックス効果や集中効果、はたまた記憶にも結びついているとか。

ちなみに、香りの呼称にもいくつか種類があり、
・フレグランス:豆を挽いた時の香り
・アロマ・・・お湯を注いだ時の香り(香水の世界では天然香料を指すらしい)
・フレバー・・・コーヒーを口に含んだ時に鼻に抜けていく香り
といった感じ。

フレーバーホイールを用いた、「ベリー系」「シトラスっぽい」「ジャスミンを感じる…」などの喩えは、わかりやすい一方で、記号に抱くイメージが曖昧(コーヒーフレーバーは、本来アメリカの特定の製品に準拠している)だったりして、結局ベリーって何なん?ってなことにもなり得る。


6.評価方法

前述の方法でテイスティングしながら、評価をしていきます。
セミナーでは以下で紹介する「①官能評価」のシートを用いてコメントを行いました。

①官能評価
以下の5項目について10点満点で評価を下していきます。

  • Aroma(香り)

  • Acidity(酸味)

  • Body(コク・脂質)

  • Clean(キレイさ、濁りの有無)

  • Sweetness(甘味)

これらの指標から、こおひいにどんな特性があるか?あるいは欠点がないか?などを観測していきます。

ポイントはあくまで主観的な評価であるということ。

感想や理由を共有し、講師のフィードバックなどを受けることで、豆ごとの感じるべき特徴や、テイスティングにおける表現などを学んでいきます。

感じたのは「トライ・アンド・エラー」が大切だということ。
一見心地よく感じる甘味や、記憶に残る酸の風味などが、実は豆の欠点によるものということもありそう、
塩辛い料理が必ずしも上等でないことを知るためには、丁寧に出汁をとった料理を知り、その良さを脳内で処理できる必要があります。

打席に立ち、観測を続けることで自分の中の抽斗が増え、
さながらヘーゲルの螺旋のように1次元高いところから、相対的な評価を下せるようになる。
こおひいの道は果てしない。

②ケミカルデータ
こちらはテイスティングとは別に堀口さんが実施しているもの。専用の測定器を用いて、こおひいの構成要素を科学的に分析します。

例えば、
酸味であればphや酸の種類。
コクであれば脂質量など。

詳しくはこちらの本を見ると良いかもしれません。

堀口さんのスタンスは、官能評価と数値データの相関性から
美味しさ(文系)の理由を、成分(理系)で解き明かし、裏付けようというもの。
特定の指標をもとにトライアンドエラーを重ねる。極めて理系的な真理追求です。

堀口珈琲研究所では、官能評価を5つの項目に簡易化し、それぞれをケミカルデータで裏づけています。5項目50点満点で評価し、SCA方式と相関性がとれるよう設計しています。umamiとbitternessは分析途上で今後評価項目に加えていく予定です。
aroma:800種の香りがあります
acidityはpH、総酸量、有機酸の組成で評価しますbodyは脂質量で評価します
cleanは欠点豆の混入、酸価(脂質の劣化)で評価します
sweetnessはショ糖量で評価しますこれらの指標で多くのコーヒーが評価でき、ナチュラルの豆については発酵の有無で評価していきます。

堀口珈琲研究所セミナー 受講申込サイト より


7.語り得ぬものを語る〜共通言語の獲得に向けて

まとめとして、僕がテイスティングセミナーに参加した理由を考えてみました。

それは、一言にすると

「共通言語の獲得」

表現したい、カタチを与えたいけれども、ソレを成就されてしまっては困ってしまう何か……その曖昧さがこおひいの最大の魅力でもある。
一方で、大好きなコーヒーをできる限り大切に飲みたい。
記憶に遺したい。
そして、自分だけのナニカをできる限りその純度を損なわずに共有できたら……

前述のとおり、コーヒーの構成要素はとても複雑です。
然し乍ら、いや、それ故に、その複雑さを記憶に残す試みは価値をもたらすかもしれない。
届かなくても続けることで、
自分にはどんな言葉が必要なのか……?
そういうことが少しは見えてくるかもしれない。

というわけで、
今後の「こおひいのおと」は以下の点を改め、模索していきます!

その1:豆の情報(生産地・精製方法など)をこれまで以上に充実させる
その2:備忘録として、できる限りテイスティングコメントを残していく
その3:こおひい由来の文章(インスピレーション)を添える

そして、タイトルは
「もし僕らの言葉が“こおひい”であったなら」で再スタートします!


最後に2つの文章を紹介して終わりにします。

飯「言葉に置き換えるのは難しいですよね。出来ればいいんですけど、言葉に。それと、あまり他の食べ物に例えたくないっていう意地があって笑。」
古「ああ、フルーツとかに?」
飯「そうです。それ、分かるんですけど、珈琲なんだし、珈琲に使う味の表現だけ、で、捉え切れる言葉があると良いんですけど、どうしてもなんか、抽象的になっちゃいますね。」
古「抽象的というのは、夕暮れの海岸線を歩いている感じの味みたいな?」
飯「そうです笑。」
古「私もそうですね。そっちの方が分かりやすいんじゃないかなぁと思って。」
飯「どんどん詩的になっちゃうと言うか」

僕の大好きな珈琲屋のnoteより


お客さんとこちら側、二つの言語の違いを瑣末なことにしてしまって、自分たちの言語へと吸収する感覚っていうのは、それに関わった個人、お客さんたちをスポイルしてしまうんだよ。(P79〜80)

しかし、いまわれわれには時間がない。文脈は解体され、長文は読解されることなく、シンプルな言説ばかりが支持され、論争を諦めた末に安易な共感や全肯定で話が終わってしまう。誰にとっての、という前提のない数値やコピーを鵜呑みにし、考えることをやめにしてしまう。最もリベラルな表現であるはずの「美味しい」でさえも、権威や資本が押し付けてくる基準や、きわめて疑似科学的な数値に惑わされ、他人の言葉に甘んじてしまう。わかりやすく答えがあるものほど支持され、わかりにくく答えのないものの価値は語られない。(P94〜95)

(『珈琲の建設』オオヤミノル (著)  堀氏によるあとがき)


集合と離散
伝達と創造
シンプルに奥深く
(四月一)


これまで飲んだこおひい⏬
☕️こおひいのおと〜珈琲を飲んで浮かんだ散文🖋

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