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娘は『ちいちゃんのかげおくり』を棒読みしました

メディアパルさんの企画【教科書で出会った物語】に参加します。すぐに娘の教科書音読の宿題を思い出したからです。娘が読んでいたのは、『ちいちゃんのかげおくり』でした。

私は子どものころに、この絵本を読んで感想文を書きました。書くことが好きになったきっかけのひとつだとおもいます。

それが、教科書に採用されているなんて、知りませんでした。娘が毎日音読してくれました。

幼い女の子が、戦争で空へいってしまった家族のもとにかえる物語です。悲しくて静かな気持ちで、戦争をしてはいけないとあらためて感じます。

小学生の娘の声が聞かせる『ちいちゃんのかげおくり』は淡白でした。彼女は、死という現象を拒否していたとおもいます。高校生になった今やっと、少し向き合うことになったからです。

「お母ちゃん、お母ちゃん」

小学生の娘の声で、毎日音読されました。ちいちゃんが叫ぶ場面も、娘は地の文と同じように淡々と読みます。内容との差が白と黒のようにくっきりと離れて、残酷でした。

教科書が進み、音読の宿題が別の話になったその夜、私の寝付きは早く、ぐっすり眠りました。翌朝あまりに体調が良くなっていて、その頃の頭痛と疲労の原因が『ちいちゃんのかげおくり』だったことに気付きました。やれやれ。

自分の体質にはうんざりですが、体調を崩すとわかっていれば、対策は打てます。娘の7つ下の息子が『ちいちゃんのかげおくり』音読を始めたときは、台所で食洗機と換気扇とIHをかけて洗い物しながら挑みました。息子が読み終わった様子をみて「OK」と声をかけました。

娘は自分の心を守るように、目をそらして『ちいちゃんのかげおくり』を音読しました。息子はストレートに「これかわいそうでやだよ。早く終わって欲しい」と言いました。それぞれの心をそれぞれに動かす力強い物語だとおもいます。

自分が子どものころに絵本で出会い、自分の子らの教科書で再会した『ちいちゃんのかげおくり』。ずっと、心に残る物語です。


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