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課題を押さえるものが強い時代
コンサルティングファーム(業界)とは、つまるところ企業の課題解決を支援する業態・業界です。
経営環境が複雑化する中で、様々な経営課題が噴出し、社内だけでは解決が難しくなってきました。そのため、課題解決のアウトソーシング先として、コンサルティング業界が台頭してきたのです。
今後についてはさまざまな予測がありますが、経営環境の複雑化が一層進むことや、質・量ともに事業会社の人手不足が深刻化することを考えると、今後もコンサルティング業界は底堅く、緩やかに成長していくと見込まれています。
コンサルティングファームがなぜ強く、そして総じて利益を上げているかといえば、企業の「課題」に焦点を当てる立場にいるからです。
法人向けのサービスにはさまざまなものがありますが、どれも何らかの課題を解決する手段です。コンサル以外の業態は、何らかのプロダクトやサービスを提供することで、
「解決手段としてのプロダクト → (プロダクトの裏側にある)課題」
という流れになります。これは「プロダクトアウト」のアプローチです。
一方、コンサルティングファームは課題解決そのものがサービスなので、
「課題 → (あるべき論での)課題解決策の提示 → 最適なプロダクトの選定」
という順番になります。これを「プロブレムイン」と呼ぶことができます。
企業の課題が安定している場合(外部環境の変化がさほど激しくなく、鉄板の課題が変動しない場合)は、コンサル以外の法人向けサービスのプロダクトアウトのアプローチでも、ある程度課題を解決できます。
しかし、繰り返しになりますが、現在は経営環境が複雑化しています(いわゆるVUCA)。経営環境が日々変化する中で、新しい経営課題が次々と生まれ、消えていくことが繰り返されています。
このような状況では、プロダクトが固定されていると、課題に対応しきれません。一方で、コンサルティングファームの「課題を押さえる」という立ち位置は、ますます強くなっていくのです。
こうした状況に対して、プロダクトをもつ事業会社はどう対応しようとしているかと言えば、「コンサルティング機能の具備」です。実際に、最近では、B2B事業を展開する大手企業やスタートアップが、コンサルティングサービスや部門の立ち上げを積極的に進めています。
大手企業の例としては、電通が象徴的です。電通は近年、イグニッションポイントやドリームインキュベータといったコンサルティングファームを買収・資本提携する一方で、社内のコンサルティング機能の強化を進めています。広告代理店から、アクセンチュアのような総合コンサルティングファームへの転換を目指しています。
また、スタートアップでは、法人向けにSaaSのプロダクトを展開する企業や、AIスタートアップがコンサルティング機能の強化を図っています。すでに一定の売上を上げているプロダクトでも、さらなる拡販や市場適合性(PMF)を目指すために、コンサルティング機能を強化して、顧客の課題を深く理解し、課題に基づいてプロダクトを提案する必要があると考えていると思われます。
実際、
「大手企業の〇〇社による新設コンサルティング子会社の幹部募集」
「〇〇社(スタートアップ)のコンサルティング部門責任者(執行役員)の募集」
といった求人が、転職サイトで数多く見られます(アップルのところにもスカウトがしばしば来ます)。
これらの動きは、「課題を押さえる立場にいるものが強い」ということに、大手企業やスタートアップが気付き始めた結果といえるでしょう。
個人の視点でも、今後どんなビジネスに関わるとしても、「課題を押さえる」立場に近いほど強いです。そのため、コンサルティングファームで一定年数経験を積むことは、引き続きキャリアの有望な選択肢であると考えられます。