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コンサルタントのてっとり早い育成方法
人材育成というのはどの組織においても重要な課題です。部下をもつ管理職やマネージャーの人たちは、日々、どうやってうまく人材を育成するか悩み、試行錯誤していることでしょう。
コンサルティングファームにおいても、人材育成はとても大事です。未経験のポテンシャル人材をどうやっていち早くいっぱしのコンサルタントへと育てていくか。この育成の速度によってコンサルティングのサービスとしての質が決まってくるからです。
アップルもこれまでに数多くのメンバーを指導、育成してきました。放っておいてもすくすく育つ人もいれば、何をやらせてもなかなか育たない人もおり、千差万別、なかなか思い通りにいかないこともあります。長年の経験を経てもなお、いまだに育成は難しいと感じます。
したがってアップルも、「これをやれば必ず人が育つ」という万能のメソッドは持ち合わせていません。しかし、経験則として、「これをやると育つ確率が高い」と感じている手法があります。
それは、「客前に思い切って出す」という手法です。
え、それって人材育成なの?と思われるかもしれません。少し詳しく説明していきましょう。
一般に、コンサルティングファームのジュニアメンバーは、PM(マネージャー)の下で調査分析を行います。クライアントと直接対峙するのはマネジャーで、その下のメンバーはマネジャーの「傘の下」で業務を行います。この一般的なやり方を崩して、思い切ってマネジャー未満のジュニアメンバーを客前に出してしまうのがてっとり早い育成方法としてあるというお話です。
アップルはこの手法をこれまでにしばしば試してきていますが、多くの人材が非連続に成長することを確認しています。
「客前に思い切って出す」育成法がなぜ有効かといえば、理由は大きく3つあります。
①プレッシャーがあるから
マネジャーの傘の下ではなく、自ら客前に立つということは、当然ながらプレッシャーがあります。厳しいお客さんであれば、こちらからのアウトプットに対していちゃもんをつけたり、調査・分析に対してもディマンディングな要求を突き付けてくるでしょう。それらをうまくさばきながら、時には交わしながら、プロジェクトを前進させなければなりません。そうしたヒリヒリしたプレッシャーを受けることが、おのずとスキルやマインドを成長させる効果があります。
②自分自身で対処しなければならないから
例えば、客先に一人で常駐する場合、現場で対処すべきことは自分で判断し対処しなければなりません。都度、現場にいない上司のマネジャーに相談するような時間はありません。客前に立つということは、ある程度自分がマンデートをもらって、機敏に対処することが求められます。都度上司の指示・判断を仰ぐのではなく、自身で判断・対処する中で、判断力や対応力が磨かれていきます。
③プレゼンの機会が増えるから
客前に立つと、自らプレゼンする機会が増えます。これまではマネジャーがプレゼンする資料を作るという裏方だったのが、自分で資料を作り、そして自分でプレゼンをするという立ち位置に変わります。「資料をただ作るだけ」なのと、「資料を作って自らプレゼンする」のとでは大きなギャップがあります。後者では、自分でプレゼンしないといけないので、
「このスライドの構成でプレゼンがしやすいか?」
「このスライドで伝えたいメッセージは何か?」
「このストーリーラインで話しやすいか?相手に伝わりやすいか?」
ということに自然と意識が向きます。それによって、個々のスライドがクリスタライズされてわかりやすくなったり、ストーリーラインがわかりやすくなったりなど、ストーリ構築力/スライドライティング力が磨かれます。
アップルもよく、プロジェクトメンバーに対し「こういう資料を作って、〇日にクライアントに説明してくれ」と依頼することがあります。ポイントは、「こういう資料を作ってくれ(俺がしゃべるから)」ではないということです。資料作成だけでなくプレゼンもセットで依頼する。これによって、当事者の資料作成に身が入り、結果としてクオリティが高い資料が出来上がります(かつ上司の立場からは、プレゼンの準備の手間も省けます)。
以上が「客前育成法」の骨子です。
この話をすると、多くの人は、
「未熟なジュニアを客前に出すのは、リスクがあるのではないか?」
「場合によっては、プロジェクト炎上の引き金になるのではないか?」
と懸念するのではないかと思います。
この懸念に対するアップルの見解は2点です。
・クライアント(の上層部)との信頼ができていれば、ジュニアメンバーが客前で多少のおいたをしても、ほとんど問題にならない。
・上記のようなストレッチ効果があるため、案外、客前に放り込まれた本人が頑張ってそれなりの(時には想定をはるかに超える)パフォーマンスを出すので、リスクが顕在化することは少ない。
リスクはゼロではありませんが、十分に取れるリスクだし、リスクをはるかに上回る育成効果が見込める。客前に放り出すのは、手取り足取り教えるのに比べると手間がかからない(場を提供するだけなので)。これらの理由によって、「客前育成法」はとても有効な育成方法だとアップルは考えています。
「可愛い子には旅をさせよ」
「獅子は我が子を千尋の谷に落とす」
といった諺があるように、コンサルタントの育成についても、つべこべ指導するより、思い切って客前に出してしまうのがてっとり早いということですね。
近年、事業会社でも、社外出向や副業を通じて人材育成を強化・加速しようとする動きがあります。これも「思い切って外や現場に出してしまえ」という発想なので、本稿で論じた「客前育成法」に近いものと言えるでしょう。
育成で悩んでいる管理職やマネジャーの方は、ぜひ参考にしてみてください。
今回はここまでです。
最後まで御覧いただきありがとうございました!