仮説思考が大切な本質的理由
戦略コンサルタントのアップルです。
このnoteでも仮説思考についてはいくつか記事を書いてきました。戦略コンサルティングの仕事において、またビジネス全般において、仮説思考が大切ということはいまや「定説」となっています。
定説になったが故、ふと「仮説思考ってなぜ重要なんだっけ?」と立ち止まって考える人はあまり多くない気がします。
アップルは戦略コンサルティングの仕事の中で日々仮説思考を重ねてきました。その実体験から、仮説思考が有効であることは間違いないのですが、「なぜ仮説思考が重要なのか?」について誰かに説明しようとすると、「うっ」と言葉に窮する感じが長らくありました。
ですが最近、仮説思考が重要である本質はたぶんこういうことだろうなということについて自分なりに腹落ちする説明が見つかりました。そこで今回は「なぜ仮説思考が重要なのか」という点についてのアップルの理解をご紹介したいと思います。
結論
結論を先に書くと次のとおりです。
仮説思考が大事なのは、答えに効率的にたどりつけるからである。なぜ答えに効率的にたどりつけるかと言えば、仮説が外れたことによってさまざまな思考が働き始めるからである。
この中で特に重要なのは「仮説が外れたことによってさまざまな思考が働き始める」という点です。
この心を解説しましょう。
仮説というのは「答えはおそらくこうだろう」という見立てです。これを常時持っているのが仮説思考が働いている状態です。対してこの見立てをもっていない状態が、仮説思考が働いていない状態です。
言い換えると「アンテナが立っている状態」が仮説思考が働いている状態です。「答えは右だな」と仮説しているときは、右側にアンテナを立てているようなものです。また「答えは上だな」と仮説しているときは、上側にアンテナを立てているようなものです。方向はさておきいずれかの方向にアンテナを立てている状態が仮説思考を働かせている状態ということです。
そのアンテナを立てている方向が正しいとは限りません。あくまで仮説なので、外れることも往々にしてあります。むしろ外れることの方が多いでしょう。
そんな半ばあてずっぽうの仮説をなぜ立てる必要があるのかと言えば、アンテナを立てたことによってそれが外れたことにビビッドに気づき、その気づきから様々な思考が走り始めるからです。
「答えは右だ」とアンテナを立てた上で、右方面を調査し、答えが右側になかったとしましょう。このようなときはまず「ああ、答えは右側ではなかったんだな」ということを明確に認知します。そして次に「右じゃないなら左かもしれない」「いや一層のこと上かもしれないな」「そもそも、なぜ答えは右じゃなかったんだろうか?」といった思考が働き始めます。このように、仮説を外したことで様々な角度からの思考が働き始める点に、仮説思考が大切である本質があります。
対比として、仮説思考がない状態も想像してみましょう。仮説思考がないということは、答えがどちらの方向にあるのか全く見当がついていない状態です。真っ暗闇の中、あるいは霧の中をさまよっているような状態と言えるでしょう。方向感がないのでなんとなく左側に行ってみたり、今度は右側に行ってみたり、後ろに戻ってみたり、・・・と彷徨い、そうこうするうちに方向感覚がなくなって自分が今どこにいるのかもわからなくなってしまいます。「こっちにXXXがあるはずだ」という見立てがないため、何かしらのアクションを起点に思考が走り始めることがありません。
こうした状況をイメージすると、あてずっぽうでも何らかの仮説を立ててそれに基づいて行動・思考することがいかに重要であるかをご理解頂けるのではないかと思います。
仮説思考がある状態:あてずっぽうでもある方角にアンテナを立て、そっちに向かって調査、行動する状態
仮説思考がない状態:やみくもに闇の中・霧の中をさまよう状態
改めて仮説思考がなぜ大切かをまとめると、以下の通りです。
仮説思考は、仮説が外れたことによってさまざまな思考が働き始めるから大切である。仮説が合っているかどうかは二の次であり、仮説をもつこと自体に意味がある。
仮説思考が弱い人はなぜ弱いのか?
とまあこのように説明されると仮説思考が大事な理由はなんとなく腹落ちすると思いますが、実際に仮説思考ができる人はかなり少ないです。コンサルティングファームにおいても、仮説思考を基本動作として常時できる人はむしろ少数派という感覚を持っています。特にコンサルティング歴が浅い人は、基本的に仮説思考ができません。
では、仮説思考が大事と頭ではわかりつつも、なぜ実際にはできないのか?これはつまるところ「マインドの問題」だとアップルは見ています。
どういうマインドだから仮説思考ができないのか?
大きく2つあるとアップルは考えています。
1.スピーディーに答えを出す意識が低い
先述のとおり、仮説思考は答えに効率的にたどり着くための手段です。効率的にというのは、言い換えると「早く」です。仮説思考は答えに早くたどり着くためのものとも言えます。
ある問題や論点を解くのにじっくり1ヶ月の時間が与えられるなら、仮説思考は必要ないかもしれません。しかしビジネスの世界はスピード勝負。現実的にはそんな悠長なことをやってられません。悠長に解くと1ヶ月かかる問題を、1週間、場合によっては3日間で解かないといけないときがあります。こういうときに仮説思考が不可欠となってくるわけです。
逆の言い方をすると「巡行速度で解くと1ヶ月かかる問題を1週間で解かなければならないという切迫感やコミットメントが、否が応でも仮説思考を引き出す」ということです。この問題をスピーディーに解かなければならないという意識をもってさえいれば、誰かから指示されなくてもおのずと仮説思考を使うでしょう。
つまり仮説思考ができない、仮説思考のやり方がわからないというのは「甘え」です。そういう人には、テクニック論ではなく、「そもそもスピーディーに答えを出そうと思ってる?本気度が足りないんじゃないの?」というマインドを突き刺すような問いを投げかけるのが有効です。
2.スタンスをとる勇気がない
これも先述しましたが、仮説は往々にして外れるものです。極端に言えばあてずっぽうです。
あてずっぽうだからこそ、そのあてずっぽうを言う勇気がない人が意外とたくさんいます。受験勉強や試験勉強のやりすぎで答えを間違えることに対する過度な恐怖感がしみついているせいかもしれません。
そういう人に対しては、「仮説は8割方外れるもんだから、そういう前提で主張すればいいんだよ」と言ってあげることが有効でしょう。
今回はここまでです。
仮説思考をもつことの有効性、逆に言うと仮説思考をもたないことの危うさについて、理解が深まったとすれば幸いです。
今回の記事では「仮説は往々にして外れるものである」「半ばあてずっぽうのものである」という論調でお話ししました。それが仮説思考の本質ではあるのですが、最初立てた初期仮説の精度(=答えへの近さ)が高いに越したことはありません。
では、仮説の精度、仮説の質を上げるためには、何が必要なのか?
これについては、また別の記事で改めてお話ししたいと思います。
最後までご覧いただきありがとうございました!
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