グラレコするときに気をつけたい認識の齟齬の話
グラフィックレコーディング(以下グラレコ)実践において、認識の齟齬の要素を理解しておくことは重要だ。
グラレコの教科書も書いている清水淳子さんは「多種多様なメンバーが集まるプロジェクトの現場では、認識の齟齬から衝突も生まれやすいという特徴がある。筆者はこのような現場を解決するための手段として、議論を可視化するグラフィックレコーディング を実践している。」と論文の中で述べている。
認識の齟齬のある場でグラレコが役立つとあるが、グラレコを行う人として絶対に話し手と齟齬のある表現をしてしまうことを考慮して描くことが大切なのではないか。また書いたものは話しての責任と取られてしまうこともあるため、話し手と書いたものについてよくすり合わせ、この状態でインターネット上で公開されても問題ないかよく確認することが必要だと考えている。この2点に関して、本記事では考えていきたい。
齟齬が生まれることを考慮する
まずは例題を。
「最近は外国人の観光客も増えていて〜」と聞いたらどんな外国人をグラレコするか。
想像できましたか?
想像したものは、以下の中にあるでしょうか。
①金髪で目が青く、肌が白い男性
②肌も髪も黒い女性
③チャイナ服を着て、丸メガネをかけた肌の白い男性
私がブレスト的に考えるとする。外国人=アメリカ人=白人のイメージがかなり強く刷り込まれている。
これは文化的、学んできた歴史背景的に生まれているイメージである。
白人といっても髪の色が金色とも限らないし、目が青いとも限らないが、私は①を書くだろうなと思う。これが、認識の齟齬で、観光客という観点からは、中国人が最も日本に来ているだろうし、最近ではアジア圏からの観光客も多いので②の外国人の方が①より多く来ているかもしれない。他にも、外国人を表す要素はたくさんある中で、グラレコをする時には①だけを正解だと思ってはいけない。
話し手が、③や他の外国人を想定していなかったか確認する必要がある。
例題をもう一つ
「神を信じている人々がいて〜」という発言があったとき
①ヒンドゥー教のシヴァ神のような神を描くか
②ギリシャ神話の神アポロンのような神
③七福神のような神か
神と言っても多様で、またセンシティブな話題である。宗教によってはイスラム教のように偶像崇拝を禁止しているものもあるため、描くことが不正解になるケースもある。
「最近の小学生は〜」と聞いたら
①赤ランドセルでピンクの服を着た女の子
②黒のランドセル、髪の短い、水色の服の男の子
この2人を想像して書くだろう。
③
④
女性らしさ、男性らしさを押し付けるような発言をしたくないと思っている話し手なら、③や④の表現をしたいとおもっているかもしれない。その思いを書き手が、ジェンダーステレオタイプに押し込めた表現にして阻害している可能性もある。男女の表現が必要ない時には、子どもらしい顔つきの表現とランドセルだけで子供を表現できるのではないか、と考えを広げることで齟齬に気がつくことができる。
このケースは、家事をする大人と言われた時に女性のみを描いたり、仕事をする人と聞いたときに男性らしい人ばかりを描いたりしてしまうケースとにた問題だ。
このように自分の書いたものだけを正解と思い込み、ネット上に上げる行為はとても危険であるとわかる。
グラレコをSNSやネットに上げる前に必ずやっておきたいことがある
登壇者や参加者などの話し手に、内容確認を行う
必ず修正を行う
SNSやネット上にアップしていいかどうかを確認する
当たり前のことかもしれない。仮にこのステップを踏まず、自分が書いたものを勝手に乗せて、話し手の話が誤解されてしまい、炎上してしまった日には大変だ。あくまでも発言の責任がグラフィックレコーダーではなく、話し手になってしまうリスクを十分理解してグラレコをし、チェックをもらい、利用することが重要である。
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