”文学少女”シリーズ/野村美月
ときたま思う、
自分の生きる養分は、
食べ物からでなく、物語から吸収してるんじゃないかな?
絵本もノンフィクションもSFも漫画も問わないけれど、
私には物語が必要だ。
朝起きて仕事してご飯食べて仕事してご飯作って食べてお風呂に入って寝る間にたくさんの物語を食べないと、あれ?何してたんだっけ?って気持ちになる。
物語は不思議だ。
料理本や自己啓発本、研究書のように
なにかに役立つ情報が載っているわけではない。
それでも、物語を読むと、
その人の人生をその人の目で生きると、
もう少し自分の人生を生きる事ができる、ように思う。
私の「思い出」には、
本当に本をむしゃむしゃ食べる先輩がいる。
天野遠子。正真正銘の文学少女。
その遠子先輩を見つめる目、井上心葉。
彼らのラブコメディサスペンスミステリー小説、かな?
遠子先輩も心葉君も”普通”じゃない。
唯一普通なのはななせちゃんくらい。
たまにすこしふしぎなSFもあるものだから、
全部がわかったわけではないけれど、
まだ刊行当時学生だった私は遠子先輩に憧れ、
ななせちゃんに共感し、心葉君を応援し、千愛ちゃんと絶望した。
そして、遠子先輩に「物語」の美味しい食べ方を教わった。
どの物語がどんな味がするのか、
あの名作にはどんなエピソードが隠れているのか、
そんな楽しみ方も遠子先輩が教えてくれたし、
大切な人の大切に仕方や、視点を変えると同一人物が全く違う人に、全く違う物事にとらえられることも心葉君と一緒に学んだ。
本を食べちゃうくらい愛してる今の私は、
この本から生まれたといっても多少過言はあるけれど、間違いではない。
あと竹岡さんのイラストが抜群にかわいい。
当時ラノベな扱いと、
ラノベ的なイラストが恥ずかしくて、
本棚の後ろに置いていたし、いつもブックカバーをして持ち歩いていた。
でも、こんなに「物語」と自分との距離を近くにさせてくれる、
素敵で愛しい本はいまだに私はこの”文学少女”をおいて他を知らない。
もっともっとたくさんの人が、
たくさんの若い子も、名作を読まずに年を重ねてしまった大人も、
この本に出合えたらいいのにな。
シリーズ完結迄必死に追いかけていたけれど、
光源氏シリーズに移行したあたりから作者を追いかけていなかったので
続編が出ていたことを知らなかった。
今度実家へ帰ったときには、
あの頃集めたこの本を探して持ち帰ろう、
彼らの続きの物語も読んでみたいな。
そして、いつか私も主食が本になればいいのにな、と思う。
(ちなみにkindleはどうなっちゃうんだろう、なんて)
https://kimirano.jp/special/cp/bungakusyojyo15th/