憧憬
本を指でなぞってみる。机に伏せてみる。
窓から吹いてくる風に押されて靡くカーテン。
廊下から聞こえる足音で、
そっと机の中にしまった本。
知って欲しくなくて付けたブックカバー。
知りたかった外して欲しかった、ブックカバー。
誰にでもするけど本当は少し気持ちが違うこと。
そう思えばそう見えてくること。
たまたま同じものを選んでしまうところ。
夏休み初日にすれ違ってしまうこと。
音も立てず消えてしまいたいのは
追いかけてきてくれる気がしてしまうから。
目を逸らしてしまうのは
知られる勇気がまだ足りないから。
会える気がして行ったところにいないところ。
わたしが訪ねた日にいないところ。
1人でどこかに行ってしまうところ。
いつも同じ場所にいるのに
たまに何も言わずに先に進んでしまうところ。
憧れて、真似したのに、真似したこと
を批判された時に庇ってくれるところ。
本当は仲良くなりたいのに、
隅っこにいるわたしの手を取ってくれるところ。
わたしに変身の鍵をくれるところ。
あなたから見たときに、
わたしが遠くにいるように見えるところ。
いつか隅っこにいたわたしが、
陽の下を歩いているように見えているところ。
わたしからみたあなたが、
真っ直ぐ進みたい道を歩んでいるように見える。
日陰も日向も平等に手を繋いであげられる。
そんなふうにみえるところ。
きっとあなたが進む道が正解で、
明るい未来が待っていると確信できるところ。
わたしの目の前は霧ばかりで、
薄暗くて何も見えないところ。
絶対にわたしが最初なのに。
もう来てくれなそうなところが憎い。
わたしのところになんて来ないで、
好きなことをして世界一幸せになってほしい。
恋人を作るなら絶対にあなたを悲しませない人と付き合ってほしい。
でもあなたが選んだ人と結ばれて欲しい。
きっと幸せそうな顔を見たら安心して、
悲しくなってしまうから、
もう会うことがなくなってほしい。
でも道ですれ違ったら誰かと笑っていて欲しい。
そんな誰かにしたい人がいるのなら、
わたしが他の人を全部消し去ってもいいくらい。
もしもあなたを守るものが、
あなたの幸せを壊そうとするのなら、
何としても変えてあげたい。
わたしは死神と手を繋いで向かいたい。
あなたは天使に迎えに来てもらえばいい。
わたしは悪魔になればいい。
あなたは好きな方になればいい。
でも天使が似合うと思う。
髪は長い方が好き。ロングヘアが好き。
でも切りたいのなら切って欲しい。
眼鏡はかけてた方が好き。
見てる景色が気になるから。
でもあなたはコンタクトが好き。
それならそのメガネを貸してほしい。
いつか「幸せだーーーー!!!」「死にたくないーーーー!!!」「死ぬのが怖いーーーー!!」って叫びたくなって欲しい。
その時わたしは地球の裏側で、「最悪!!!!」「死んでやる!!!!!」「最高だ!!!!!」って叫びたい。
できれば20歳を過ぎてからは、
お葬式まで会いたくない。
でも元気にしてるかは知りたい。
顔を合わせずに道端ですれ違いたい。
幸せならそれでいい。でもその時わたしは不幸になりたい。
なんて、本気で想ってたらこんな気持ちになっていたかもしれない。
そんな"if"を簡単に想像出来るところが怖い。
世界でいちばん尊敬しているし、
多分きっとずっと等身大の憧れで、
それなのに1番遠くにいる人だと思う。
どうせ年に数回会わなくちゃいけないなら、
変なことを気にせずに、話しかけてほしい。
きっと世界線が違えば、
何度目かのループでは、
2人で映画見て、美術館行って、本を読みに行って別行動して、行きたいところも見たい映画も違うのにあなたの行きたいところを聞いたら全部気になってきちゃうんだと思う。
そんな距離感に、
背中合わせでいられる関係に
なっていそうな気がしてたまらない。
あなたにわかる?
この間に流れる空気は短くなったり長くなったり
不規則に動いていること。
あなたが何を考えているのか、わたしには想像もつかないようなこと考えていると思っているのに
何となくわかる気がしてしまうこと。
高校二年生。まだこのループでは離れたまま。
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